61.王女との強制デート?のようです part2
その後。
「ふぅ……腹いっぱいだぜ! どうだレオナルド! あの店の料理なかなかイケただろ?」
「あっ……はい、そうですね……」
僕は……胃袋の神秘を見た気がした。
何故なら、彼女が朝一に僕を城から強引で連れ出した後に向かった、この“ステーキ店”にて自分の常識が容易く崩されたから。
(……時には常識を捨てるのも大事なんだね)
「? なんだよレオナルド。朝飯食ったのに元気無さそうじゃねぇか? やっぱり私みたいに遠慮せずに食いたいだけ肉を食えば良かったのに!」
「どうかご勘弁くださいませ……」
結局のところ。
彼女が朝飯だと言って注文したパンケーキをそのまま肉にしたような最強の胃袋破壊メニュー。
【ジャイアントステーキ10段盛り~究極の満腹死を添えて~】の注文数は16セットにおよび、肉の枚数に換算すればなんと驚愕の【160】枚!。
さらにカロリー換算なら、成人男性の“10日分を軽く超える量”を“たった一食”で済ませるとかいう規格外の胃袋を見せられたんだから……自分のこれまでの常識を崩したくもなるよね!
「その……マティルダさん?」
「うん? どうしたレオナルド?」
しかも途中から口直しをしたいとほざきだしたと思えば、ポテト、ソーセージ、終いにはハンバーガーまで追加するという、最早“カロリーの魔人”でも召喚するのかって疑いたくなるほど、
「お腹とか大丈夫? 痛くない? 赤ワインも浴びるように飲んで、脂っこいメニューばっかだった気がするけど、本当にお腹下してないよね?」
「プッ……アハハハハ! なんだそんな事か、大丈夫に決まってんだろ! こう見えてもスタイルと消化の速度には自信があるからな。あんだけ食っても全然太らねぇし、むしろあれ位ガッツリ肉を食わないと生きた心地がしねぇんだよ! 城での食事なんて着飾っただけの“おやつ”みたいなもんでロクに腹の足しにならねぇしな!」
「……全世界で肥満に悩む女性に、君の持つ細胞を分けてあげたいよ。皆、絶対血眼になって大金を出すと思う。食べても太らない細胞って……」
「ハハハハハ! でも……今はやっぱりあの量が私の限界だな! 今回は調子が良くて自己ベストを塗り替えれたけど、流石に次は厳しいかもな」
「あはは……流石にそうだよね。あんな分厚いステーキ肉を160枚なんて食べたらそりゃ――」
「流石にアレ以上は“肉の味に飽きてしまうから”な。まだ今のところ体感的に【腹六分目】くらいだけど、今回はあくまで適量にした感じだぜ!」
「うそぉっん!?」
うっそだあ!? あれが適量だって!?
あんな特攻隊みたいな大量の肉達が!?
いやいやいや……いやいやいやいやいや!?
おかしい、おかしい! 絶対おかしいって!
だってボリューム的に“約20,000キロカロリー”超えですよ!? 人によってはそのまま破裂しかねないまでの量を一食で食べたんだよ!?
(物理的に考えて絶対におかしい。あり得ない……そうこんな非常識がまかり通るのは、せいぜい絵本とかの創作物の登場人物に決まってる!)
だからこそ冷静に考えてそんな馬鹿げた事がある筈ないし、きっと強い女性としての見栄を張ってるだけに決まってる! そう違いないっ!
「おっ、レオナルド! アレ見ろよ! あの露店のアイスクリーム旨そうだ! 丁度甘い物も食べたかったんだよな。私バニラにするから、お前は何が良い? チョコか? ストロベリーか?」
僕の気のせいか何か聞こえた気がする。
うーん……でも、多分聞き違いだろう。
無邪気な子供みたいに凄い力で袖を引っ張って、マティルダは僕にアイスの味をどれにするか尋ねてきてる気がするけど……絶対気のせいだよね!
でも……まあ一応確認がてら尋ね返そうか。
「あのぅ……まだ食う気なんですか?」
「おう、勿論だぜ! まだまだ私の胃袋はこれからだからな! で……味はどうする? あとサイズは? 二段か? 三段か? それとも、乗せられるだけ乗せる無限段にするか? ちなみに私はもちろんいつもの無限段だけどな! どうする!」
あっ……ダメだこれ、幻聴じゃないや。
まごう事無き彼女の口から出た言葉だ。
ってか“無限段サイズ”って何!?
「す……ストロベリー……一段で」
「オッケー! ストロベリー無限段な!」
「お願い! 注文ちゃんと聞いて!?」
だから、もう人体の常識とか知るかバーカ!
ここは世の中には物差しでは決して測りきれない、人の想像を遥かに上回る非常識が存在したんだという事で議論を決着させよう……だから!
「じゃあ、決定な! おーい、おばさぁん!」
「待って!? 頼むから落ち着いて話をしようよ!? まだ間に合うから! 今更君の体がどうなろうと知ったこっちゃないけど、せめて僕の分は! 僕のアイスだけは普通サイズで――」
「ヘッヘッヘ、もう遅いぜ! 私のこの眼は完全に無限段アイスをロックオンしちまった! 今の私を止めたかったら力尽くで止めてみろっ! 特別にうっかりおっぱいを触るとかのラッキースケベならば笑って許してやるからさっ!」
「んな事出来るかぁぁぁぁぁぁ! クソッ! こうなったら君よりも先に自分の注文してやる!」
そう僕は必死になって、キラキラと目を輝かせて人の分まで勝手にアイスを積み立てに行こうとする暴君の出鼻を即座に挫くべく、
「うおぉぉぉぉぉぉぉ! 僕の胃袋は僕の手で守ってやる! こんな【肉盛姫】の思惑通りにさせるものかぁぁぁぁぁ! くそぉぉぉぉぉぉ!」
「おいおい!? 流石に肉盛姫はねぇだろ!?」
だから僕はもうとにかく我武者羅にっ!
「うおぉぉぉぉぉ! 負けるかぁぁぁ!!」
「おおっ! 本気みたいだなレオナルド! よーし、ならば私もガチでお前の分を注文してやるぜぇぇ!」
脇目も振らずに一目散に足を動かした!
この自分の胃袋を守る為にっ!
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次話は明日投稿予定です。
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