60.王女との強制デート?のようです part1
「はいよ、お待たせ! マティルダ様! 出来たての焼きたてのホヤホヤだぜ! 食ってくれ!」
「おうっ! ありがとよ、マスター!」
……僕は絶望していた。
「むぐむぐむぐ! ガツガツ! ガツガツ!」
「………………………………」
銀のフォークとナイフを両手に、まるで親の仇でも見るかの如く眼前の【それ】を凝視していた。
そのジュージューと鉄板上に汁を出し、食欲をそそる筈の物体を……
「んくんく……ぷはぁ! やっぱり旨いな!」
「………………………………」
女王決定戦。
まず、その第一回戦である《料理の儀》の開催日は三日後だと僕はイザベラ女王に聞かされた。
「……………………」
「んぐ? おいおいレオナルド、お前全然食が進んでねぇじゃん!? そんなんじゃ、せっかくの出来たて料理が冷めてマズくなっちまうぜっ!」
その為、そこまでお前はフリーだから城の図書館で読書をするもよし、経費等は負担するから街中へ出かけて遊ぶも良し、他国に喧嘩を売らないのと、死なないと約束できるなら国外へ出て野生モンスターと戦うも良し、だと。
「いや……あの……」
だからこそ……審査員とはいえこれまでの経験から慌ただしい依頼になるかもしれないと第六感を働かせ、お城の図書館でこの異世界の文化にも触れつつまったりしようと思ってたんだけど……、
「マティルダ……その……僕、朝一から“こんなに”食えないよ。ってか胃袋的に無理!」
どうしてこうなったんだろうか……。
なんで朝一にベッドから起きた直後、まるで襲撃でもかけるかの様にマティルダが部屋に乱入。
それからそのまま猫を外に連れ出す時みたいに、彼女にいきなり首根っこを掴まれたと思えば、
《おい、レオナルド今日暇だろ! 城下町に遊びに行こうぜ、案内してやるからさ! いや、まずはそれよりも飯か! まず飯食いに行こう! ちなみに拒否権なんてもんは無いからなっ!》
と……そんな朝一から元気な怒涛の言葉ラッシュ。
過去に読んだ事がある“青い狸が主人公の小説”でこういう強引な人を【ガキ大将】とか言うらしいけど、全くその通りだったみたいだ……。
「アハハハ! なに言ってんだよ、レオナルド! こんなの余裕余裕! マジで朝飯前だろ! ああ……今は朝飯か……まあいいから食えって!」
それで……そんな拒否権など無い強引過ぎる経緯がありつつも、現在は朝食時なんだけど、
「あの、すいませんマティルダ様? 僕何か悪い事しましたっけ……これ“拷問”ですよね?」
だからまあ単刀直入に言おうか……。
今、僕の眼前には【肉】があった。
いや、別に肉が嫌いなわけじゃないんだ。
むしろ好きだし、あの噛んだ瞬間に溢れる更なる肉汁、空腹時に食べれば生の実感すら湧く程の魅力的で素敵な食材だと思うくらいだ。
……ただしっ!
「……ちなみにこの【料理名】はなんて言うの? 店に入るや否や、マスター! いつもの頼む! って注文したせいで聞きそびれたんだけど……」
「ああ、これか? そういえばメニュー名言ってなかったな。これはな……この店自慢の“最大ボリュームの肉料理”で【ジャイアントステーキ10段盛り~究極の満腹死を添えて~】だぜっ!」
「それ絶対料理に付けるメニュー名じゃないですよね!? なんで料理名に死刑宣告交じってるんですか!? どうして客を殺そうとしてるの!?」
ただし……これについては完全に別問題だ!
そう! 何故なら僕の眼前には“肉塊”!
料理名にもその狂気がありありと滲み出ているかの如く、僕が今まで見てきた肉料理のボリュームの比では無く、字面で表せば【肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉】に変換できる怪物が鎮座していたんだ!
(うーん……にしても肉ってなんだったけ?)
だからこそなのか……僕の脳は既に混乱状態。
今まで自分の食べてきた肉は、もしかしたら肉じゃなかったのかもしれないとかいう、もう意味不明な軽い錯乱まで起こす始末だったんだよ!
でも!
「ああ! たまらねぇっ! マスター! あと【2人前】追加な! 勿論私が全部食うからさ!」
「ったく……マティルダ様の胃袋には敵わねぇな! ガッハッハッハ! だが任せてくれ! そろそろウチのステーキを求めてマティルダ様が来ると予想して、事前に大量の肉を買い込んでおいたからよっ! どんどん食ってくれっ!」
だが、しかぁし! こんなのは序の口ッ!
その理由はこの状況の中で一番の絶望は彼女。
「マジかよ! それは最高な話だぜ!」
この圧倒的な肉壁を前にして絶句する僕を他所に、マティルダだけは全く違っていたんだっ!
「よおし! じゃあ今日は自己ベストの更新目指して食いまくる事にするぜ! だからマスター、ありったけの肉をジャンジャン焼いてくれよ! お代は全部母上宛てで構わねぇからな!」
その姿、まさに【暴飲暴食の権化】。
そう嬉しそうに、肉厚数㎝はあると思えるステーキを食う彼女の食べっぷりはまるで蟻地獄。
眼前に次々と並んでゆく皿から溢れんばかりの肉の山を美味しそうに頬張っては何食わぬ顔で食べ進め、時折挟むワインですら数本って……。
もう本当に唖然の一言に尽きる所だよ。
……ってか、その華奢な体の何処に入っていくの!? そのスタイルの何処に蓄えてるんですか!? 体の構造的に明らかに不可能だよね!?
それに、僕が唸ってる内にもうかれこれステーキ肉【50枚】は食べてんだけど、それにさらにおかわりってマジでどんな胃袋してんですか!?
「むぐむぐ……そういやマスター?」
「うん、どうしたんだい? マティルダ様」
「私の自己ベストってステーキ何枚だっけ?」
「えっとね……確かこの前は“12セット”だったから合計【120枚】だな。ホント、おかげさまで肉の在庫も無駄にする事無く大儲けだよ!」
「アハハハッ! 今日も任せてくれ! 今回は特に久し振りの外食だ! 滅茶苦茶食べてマスターの懐を火傷するくらいまであっためてやる! 目指せ! ジャイアントステーキ150枚だっ!」
あっ……ごめん、もう付いて行けそうにないや。
多分これはツッコんだらもう負けの類だから、まあ……とりあえずこの一時だけで確実なのは、
「あの、マティルダさん……」
「ムグムグ……どうしたレオナルド? お前まだ一枚しか食べてねぇじゃないか!? ったく……しょうがない、今回は大サービスでこのマティルダ王女直々ア―ンして食べさせてやろうか?」
「いや……その……僕今日は胃の調子が悪いみたいで、もうご馳走様するから残りはマティルダが食べても良いよ……ってか食べてください!」
「おおっ! 食べていいのか!」
「うん……もう暫くステーキは見たくないから」
ステーキという単語とメニュー名に軽い心的障害を植え付けられたという事実だけだ……。
「むぐむぐ……ああ、マスター!」
「ほいほい! どうした?」
「追加で【フライドポテト】と【極太ソーセージ】も頼むわ! 少し口の味を変えるからさ!」
「まいど! すぐに揚げるから待ってな!」
「おう! 頼んだぜ!」
「……へっ?」
えっ!? ちょっと待って!?
なにどさくさに紛れてサイドメニュー!?
貴方様の胃袋は異空間か何かなんですか!?
マジでこの大食い王女様、いつか爆発しそうで凄く怖いんですけどっ!?
ここまで読んでくださりありがとうございますm(_ _)m
ギャグ要素を強くするために一人称要素も入れてみる事にしました(無謀)
それでひとまず現在完成している分だけ投稿しましたので、次話についてはまた少し書き溜めした後に投稿していく予定ですので是非ともよろしくです( ;∀;)
では最後によろしければブクマや評価、感想をお願い致します( ;∀;)
執筆のモチベに直結するほか、ユーザ様の声はものすごく励みになりますので……あとすんごい喜びます(´・ω・`)




