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57/105

56.かなり刺激的だったようです(☆)



(…………まいったな)



 唐突だがレオナルドは()()()()()()


 さらに記憶、意識は未だ曖昧なせいかどうして自分の体が椅子に固定されているのかさえも分かっていない。


(えっと、確かエミリアが知り合いの子と”女子会旅行”に出かけたから、僕はのんびり一人で店番してたら……いきなり魔方陣に吸い込まれたんだったっけ? それで目を覚ましたらこれか。もし夢なら早く覚めて欲しいんだけど……)


 しかし。そんな手足を縛られ意味不明の一言で片付く現状でも、レオナルドは【幾つかの点】だけ理解が及ぶ範囲があった。


 それは――


(にしても……ここはどこだ?)


 まず一点目は己の居場所。


 少なくとも趣味的に地味な家具が並べている自分の店では無く、赤を基調とした格調高くどれも値が張りそうな豪華な家具が周囲に並んでおり、



(どこかのお城……かな?)



 レオナルドは景色の様子から今までの冒険で何度か城という建物を見て回った経緯もあってか、王族の部屋とかではないかと推測。



(とりあえず牢屋に放り込まれてないって事は……尋問かな? でも僕何したっけ?)



 そういうワケでレオナルドはとりあえず自分が連れられた場所は、見覚えの無い城のどこかである事は直感的に把握した。


 一応、何の罪で手足を拘束される羽目になったのか見当すら付かなかったが……それでも目を覚ました彼が僅かに気付けた情報は以上の事柄だった。



 しかし……彼の疑問の解決はまだ序の口だった。


 なぜならもう一つだけ大きな問題。

 それもどちらかと言えば【本題】になる大事な点があったのだから――



「マティルダお姉様、その……“どれ”がよろしいでしょうか。わたくしは()()()()()に慣れていなくて……どれが殿方向けなのか――」



「メアリー、お前は相変わらず気弱だな。そんな地味な色のやつ着けてどうすんだよ! もっと派手な柄のやつをだな……っていうかどうして私が答えてやらなくてはならないんだ! 今は本番じゃないといえ()()()()()()なんだぞ! それくらいは自分で決めろ!」



「あらあら、マティルダ姉様ったら厳しい言葉ですこと。でもそうよ、メアリー。今は如何に【あの殿方】を魅了出来るか。それが決め手なの。だから私達に聞かず自分が一番魅力的だと思ったモノを着用しなさいな。分かった?」



(ん? 女性の声? それに……()()?)



 次にレオナルドが気付いたのは会話をする声だった。


 人数としては恐らく三名であり、いずれも若い女性の声で部屋の中に唯一ポツンと立てられている衝立ついたてを隔てる向こう側から聞こえてくる。



「とりあえず事情を聞こうか。あのぉ――」



 そこでレオナルドは同室にいると思しき女性達へ現状を少しでも教えてもらおうと声をあげ、彼女達を呼ぼうとした…………。



「よし、二人も準備は出来たみたいだな!」



 まさにその束の間!!


「マティルダお姉様……正直わたくしは絶対に“これ”は間違っているのと思うのですが……」


「まあまあ、メアリー。今は集中しなさい。私も間違っている気はしますけど、マティルダ姉様と言い争ってもロクな事にはならないですから」


「……分かりましたわ。ヴィクトリアお姉様」



 なんと衝立に身を隠していた女性達はレオナルドの尋ねる声を掻き消すようにして、



「よし! じゃあお披露目だぜ!」

「はいはい、分かりましたわ。お姉様」

「し……仕方ありませんっ!」



(あれ、まさか聞こえてな――)



 そう三名の女性が何かを決意した声を場に響かせたかと思えば、ついに衝立の影より現れた……のだが!?



「……なっ!? 君達は一体なにをっ!?」



 瞬間レオナルドは思わず目を疑った。


 しかしそれも無理のない話。

 なぜなら今レオナルドの前へと姿を現した女性達の姿はというと――



「あら? お姉様。異世界の殿方が既にお目覚めになっていますわ。どういたしましょう?」


「へっ、別に構う事はねぇだろ! 母上の話だとコイツが噂の【異世界審査員】なんだろ。だったら()()()()()()()()()()()()()だ!」



 何とも刺激的と言うか……その姿は女性に関して奥手で初心なレオナルドにとって刺激が強すぎる、あるいは純粋にはっきりとセクシーや()()()と表現すればいいのか、



「なんで、君達()()姿()なのっ!?」



 そう、レオナルドの今まさに発した通り、どうしたことか全員下着姿という男性の度肝を抜くような状態での登場し、いずれも自身の魅力的な肢体を見せつけるように、



挿絵(By みてみん)



「あらあら、見てくださいなお姉様。この殿方は私達の姿を見て顔を真っ赤にしていますわ! うふふ……とてもお可愛い男性ですこと♪ それに調教し甲斐がありそうで少し興奮してきますわ♪」



「アハハハハ! やはり召喚条件に()()()()()()()()()()を加えただけの事はあるな! ……にしても二人共やっぱり私の妹だな! こうして改めて見ると良いおっぱいしてんじゃねぇか!」



「もう……マティルダ姉様ったら、殿方の前ではしたないんですから。でも否定はしませんわ。美しさを極めるのは王族として当然ですもの」



「ブツブツ……優しそうな男性ですから大丈夫……優しそうな男性ですから大丈夫……優しそうな男性ですから肌を見せても大丈夫……ブツブツ」


 それぞれが赤い下着姿、黒い下着姿、水色の下着姿の女性という幼い少年であれば間違いなく忘れがたく、一生の思い出として確実に刻まれるであろう美少女達の露わな姿を前に、



「どうでもいいから早く服を着てぇぇぇぇ!」



 初心なレオナルドは顔を真っ赤にしながら、喉が張り裂けんばかりの声量でポーズを決め込んでいく三人へ衣服の着用を懇願したのだった――




 ―― ―― ―― ―― ―― ――



「こんの……エロ馬鹿娘どもがっ! こんな昼間っから寒そうな半裸姿で何をやっていたのだ!」



 ……本当に後すんでのところであった。


 あと少しで拘束されたレオナルドに三人の美女達の魔手が次第に迫っていた中、


「くそっ、別に殴らなくてもいいだろ……母上」

「そうですわ。わざわざグーで殴るなんて――」

「お母様、私はその……お姉様方にそそのかされて仕方なく……ですからここまでせずとも――」


「ええい、やかましいっ! これも愛の拳だと思え! どいつもこいつも下着姿で異世界からの来客を襲おうとしおって! 座って反省してろ!」



「「「はい……分かりました」」」



 今こうして怒声をあげるイザベラ女王が慌てた様子で部屋に飛び込んで来るや否や、下着姿だった()()()へ容赦なく制裁の鉄拳を振るい黙らせたのだった。



「いやはや、すまなかったな……レオナルド殿。まさか我が娘達が召喚して気を失っていた其方を“勘違い”して襲おうとするなどとは……完全に私の監督不行き届きだった。申し訳ない」



 そして娘達から反省の声を絞り出させた後、イザベラ女王は銀冠を乗せた頭をレオナルドへと下げた。


 対してレオナルドは先程、下着姿で自分に襲いかかって来た【長女マティルダ】【次女ヴィクトリア】【三女メアリー】の母親である女王へと、


「いえいえ……色々手遅れになる前に助けてもらえて助かりました。だから頭を上げてください」



 頭をあげるように告げると続けて、



「でも、なんでこんな事を。それに――」



 今では装いを新たに下着では無くキチンとしたドレスを身に纏い、各々の席に座って反省する三名へ視線をズラしながらレオナルドは改めて尋ねた。



「さっき彼女達が僕に言っていた【異世界審査員】って言うのはどういう事なんでしょうか?」



 純粋な疑問をイザベラ女王へ向ける。


 すると女王は彼の質問にこう返答した。



「ああ……その事なんだが、この国にも色々と込み入った事情があってな。まあ簡単な話で言えば、其方には我が国の儀式【女王決定戦の審査員】を務めて欲しくてな、強引ではあったが()()()()()()()()()というワケなのだ」



 被害者のレオナルドから許しの言葉を得てもなお、イザベラ女王は娘達の暴走について自責の念が残っているのか。手で額を抑えつつも彼へと事情を事細かに答えていった。



「女王……決定戦? 召喚?」



「それについては、とりあえず順を追って話していこう。それで最後まで聞いてもしも断るならそれも良い、引き止めはせん。だがもしも我々を助けてくれるのであれば、協力をお願いしたいのだが……其方は聞いてくれるか?」



「……分かりました。聞かせてください」



「うむ。では失礼して……あと()()()もよく聞くんだぞ! 一回しか言わないからな! ちゃんと()()()()()()()()を聞いて理解しておけ! 特にマティルダ! 途中で居眠りなんかしたら地下牢で逆さ吊りのお仕置きだからな!」



「へぇへぇ……分かりましたよ、母上」

「了解しましたわ。説明をお願いします」

「分かりました、イザベラお母様」



「…………よし、では話そうか」


「はい、お願いします」



 と……イマイチ掴めない事情がありつつも、レオナルドは困っている人を助けたい善意で異世界から迎えられるという【審査員】について、そして――



「まずはこの国の簡単な歴史から――」



 世代交代の際に執り行われるという儀式。


 その“女王決定戦の歴史”を語るイザベラ女王の話に耳を傾ける事にするのだった。


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