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3.最初の客は異世界の×××だったようです


 非常に良い立地であった。


「あっ、エミリア。そこにはエクスポーションを置くからその万能薬の入った箱は、そこの魚の絵が書いてあるキャビネットに飾っておいて」

「分かった……このオリハルメタルは?」


「えっと……それは、貴重な鉱石だから……そうだね……さっきの倉庫部屋に置いた無限ボックスに入れといて。あまり傷つけないようにね」

「了解……ちゃんと片付ける」


 天の箱舟解散より一週間。

 人里から少しばかり離れた空気の澄んだ場所。

 その中でも、見晴らしの良い自然豊かな丘の上にレオナルドは念願のよろず屋を構えていた。


「それで後は……この薬草関係とかは何処に置こうかな……あっちの棚は強化用のアイテム飾っているし。こっちは魔道書で埋まっているしなあ」


 と言っても、【建築は出来る】とはいえ。

 流石に店を一から建てたという訳では無く。

 レオナルドが天の箱舟にいた際に知り合った商売人の夫婦が引退し、もう使わなくなった店を彼がそのまま買い取ると言う形で入手したのだ。


「ちょっと欲張り過ぎたかな。商品の種類増やしたの間違いだったみたいだ。でも何でも取り揃える【よろず屋】って決めてたし……それに」


 そのおかげで一部の家具であったり、会計するカウンターもそのまま。

 別に後から追加の棚を買い揃えたりするなど無駄な手間も少なく、内装をそのまま再利用して陳列しきれなかったアイテムを店頭に並べていくのであった。


「でも、あんな広告・・出しちゃったからな。まあ、とりあえず置けるだけ置いて、誰も買わない様だったら無限ボックスの中に放り込もうか」


 そうして、満を持して迎えた今日。

 店の譲渡や商品の陳列などでそれなりに時間を取られてしまい、慌ただしい日々だったが、


「レオナルド……準備終わった」

「ご苦労様。僕の方も一段落ついた所だ」

「後は……お客さん……待つだけ?」


「ああ、そうさ。広告のチラシをあっちこっちに沢山ばら撒いたからね。もし助けが必要な人がいたら来てくれるだろうさ。だから待っとこう」

「分かった……言う通りにする」


 何とか店内の準備を終えた後。

 新店主であるレオナルドは、相棒のエミリアにそう労いの言葉をかけつつ、夜なべして自作し、今日の為に用意した広告紙チラシに目をやる。


【貴方の欲しいアイテム、ココで見つかります。貴方の願い、叶えてみせます。何かお困り事ありましたら、まずはふらりと僕の店でご相談を。《レオナルドのよろず屋》※マップはこちら→】


 そんな、何処か胡散臭い。

 今どき詐欺師でも使わない宣伝メッセージと地図が載せられたチラシをあちこちに届けるべく、彼は以前に捕獲していた鳥モンスターを利用。


【ハイパーペリカン】という賢い鳥モンスターに広告紙を散布させて、非常に大雑把ではあるが宣伝も一応行い、後はのんびり客を待つだけだった。


(ふわああぁぁぁ……さてと……)


 ……と、ここまで真面目に店を整理していき、準備こそキッチリと整えたレオナルドだったが。


(ま……いくら何でも開店早々ここに来るお客さんなんていないよね……)


 良い立地とはいえ、それはあくまで景観の話。

 それ程距離は離れていないとはいえ、都市の中心部などでは無い以上客の入りは期待できない。


(まあ、お店を買い取っても充分にお金は残っているし気楽にまったりやっていこう。そんなスローライフこそ僕に相応しい第二の人生だ!)


 けれども、それこそが今彼が望む生活。

 読書をしたりのんびりしたりする生活の片手間で、困った人を助ける為にアイテムを売ったり。

 或いは悩みごと、お困り事があれば解決する。


 そんな感謝されつつ、まったり生きる。

 この落ち着いた生活こそが彼の望み。

 解散後に選んだ第二の生き方だったのである。


「もうそろそろだ……鍵も既に開けてるし。座って待つ事にするか。エミリアも休憩していて」

「うん……分かった」

「よし。それじゃあそろそろ開店だね」


 そうして彼は準備万端の状態で、店主が座るカウンターに腰を下ろし、のんびりと待機していた。

 さらに部屋に飾ってある時計の針も、


「もう……数秒で十時……誰か来るかな」

「ハハハ、そこまで神経質にならなくても大丈夫だよ。すぐに誰も来たりしないからさ」


 指す時間的にはそろそろ、開店時間。

 朝の10時を指そうと、チクタクと動く。

 ……そんな時だった。



 ズドオオオオオンッッッッ!!!!!!!


「「!?」」



 レオナルドが愛読書に手を伸ばす最中。

 その手が丁度本に触れた瞬間の事だった。


 なんと……彼の【店の扉】が、


 ビュンッ!!!!


「……へっ!?」


 そんな空を切る音と同時に!

 音をあげて吹き飛んできたのだ!

 そして同時にレオナルドの頬を勢いよく吹っ飛んできた扉が頬を掠め、通過していったと思えばドンッ! と音をあげ背後の壁に直撃した……。


「……………………何が起こったの?」

「……凄い扉……開店直後にお店の中に飛んでくるなんて……私もビックリ……驚いた……」

「そんな狂った扉あったら堪んないよ! えっ!? なになに!? 嵐でも来た!?」


 と、そんないきなりふっ飛んできた扉に対して。

 余りに冷静に目をやる相棒にレオナルドは思わず、そんなツッコミと共に明らかな動揺の声をあげながら、吹き抜けになった玄関へと目をやり、


(と……とにかく…姿を見ないと始まらない……)


 その犯人を確認しようとした。

 すると……。


「すまぬ……いつもの威圧する癖でやってしまった。まあ……とりあえず我輩は此度チラシの内容を見て、相談をしたいと思い参上した者だ!」

「うんんっ!?」


 開店早々、店の扉を蹴破ってくるという。

 マナー知らずとかいう次元の問題を超越する客に対してコイツにはドアを開けるという習慣すら無いのかと、彼は疑いの目を向けたくなりつつも。


「だ……誰?」


 それこそ……言いたい事こそ山の様にあるが。

 そこはグッと堪え抑えつつも、まずレオナルドは相手の姿を確認する事に集中したのだった。


「うむ……名乗ってやろう。偉大な我輩の名を」


 そうすると……レオナルドのよろず屋開店直後とほぼ同時。

 そんな類を見ない派手で乱暴な来店方法にて、吹き抜けた玄関より入店してきたレオナルドのよろず屋の記念すべき最初の客はというと……。


「この我輩こそ! こことは別次元・・・の世界を治める《闇の大魔王ルシフェル》である! よろず屋のレオナルドとやら。どうか一つ頼むぞ!」


「大魔王だって……レオナルド……良かったね」

「いきなり変な奴が来たああああぁぁぁ!!」


 なんと……異世界の大魔王なのであった!


次話、明日の27日の15時にて更新。

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