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2.レオナルド君は物件探しに行くようです

 

 これはレオナルドの愛読書の一文だった。


【ユニークスキルとは、《未知なる可能性》だ!】


 ……と、大きくこう記載されており後の説明文は以下の通りであった。


【それは通常のスキルとは形式が全く異なり、一人一人によって《形を変える》とも言われる程であり、未だ解析しきれぬ複雑な能力である。


 覚醒のタイミングは成長レベルアップ直後ではあるが、これは一般的な成長限界と知られている《LV99》に到達しても発現しない場合も多く、全冒険者が発現出来る訳では無いので開花できない場合も無論存在する。


 しかし、これを開花した際の見返りは凄まじく。

 これは私の友人のユニークスキルではあるがその強さの一例を紹介しようと思う。


 大剣豪……斬撃技に強力な攻撃補正が入り、相手の防御力を貫通する剣撃を放つ事が出来る。


 大魔導士……魔法技の不利な相性が消滅し、常に一定以上の威力が望める属性無視の究極系。

 例えば、《火属性の敵》に《火の魔法》を撃っても吸収されずダメージ。

 また《水属性相手に対しての火属性魔法》も同様である。


 と、他にも色々種類はあるのだが……。

 ひとまずこう言った具合となる。


 よって、これを開花させるかで活躍幅がぐっと広がるほか、冒険者の格付けにも使える性質に当たる。

 その為、冒険者は如何に自身を磨く事により、どれ程早く《この可能性》を引き出せるかが常に付き纏う課題であり鍵となる事だろう……】


 ~ガリヴァ―書房刊『博識王ガリヴァ―の冒険者研究』の89の項【ユニークスキル】より引用~





 リーダー、クロムの解散発言の夜より一日。

 その日は清々しい程の青空と太陽が眩しい、まさに冒険するにはうってつけの天候だった。


「ふんふん♪ ふんふん♪」


 そうしてそんな中、青年レオナルドは気楽そうに鼻歌交じりで出立の準備。


「えっと……他には」


 金銭は勿論の事、衣服、収集したアイテムなどの所持品の全てを自作した無限に物が入る《不思議な袋》へと次々に仕舞っていく。


「そうだ、博識王ガリヴァ―さんの執筆本はと……うん、一冊残らず全部袋に仕舞ったね」


 そして、一段落ついた後に最後の確認。

 お気に入りの愛読書であり、今までも様々な知識を得るのに役立ててきたその書物の全てをちゃんと袋の中に片付けたかどうかを確認していた。



「レオナルド……いる?」


「うん? 誰?」


 すると、そんな最中。

 まだ日の光が眩しい朝一というのに、レオナルドの部屋の扉はそんな自分を訪ねる声と共に音をあげて開かれた。


「こんな朝早くに一体――」

「良かった……まだ行ってなかった……」


 そしてそんな彼の発言を切るようにして。

 部屋に入って来たのはエミリアという天の箱舟最年少の少女だった。

 非戦闘時のパーティーでは主に会計の任を預かっており、戦いの前線においてはヒーラーといういわゆる回復役を担当していた大人しい性格の子であった。


「エミリアか、どうかしたの?」


「……うん……少し聞きたい事があって……」


 その透き通る様に繊細で美しい銀の髪は勿論。

 顔に至っても非常に可愛らしく、パーティー内では姉御肌だったムーンとは違い、皆の妹的な立ち位置で守られて可愛がられていたのだった。


「これから……どう……するの? クロムの話だと……まだ行き先が決まってないって……」


「あ、ああ……その事かい?」


 加えて大人しめの性格が顕著に出る言葉遣い。

 控えめで、相手に物怖じするかの如く一句一句ごとに一拍置く独特な話し方で、


「……でも……荷物纏めているって事は……もう何処か行く所を……当てでも見つけたの?」


 彼女は彼にそう尋ね、行き先を聞いた。

 対してレオナルドは出立の用意が完了し、全部詰め込んだ不思議な袋をその傍に置くと。


「うん。実は今までの知識と、ユニークスキルを生かして【よろず屋】でも開こうかなって。だから、今からその物件探しに行こうと思ってさ」


 そうレオナルドはエミリアに向けて行き先……というよりかは目的を答えた。



「……ユニークスキル? あれ……レオナルドって……結局、開花していなかった筈じゃ?」



「前まではね。でも《Lv.99》に到達した事で覚醒したっぽいんだ。まだ使用してないけど、どうやら【万能オールマイティー】って奴を開花させたみたいで。何かの役に立てようと――」

「……私の知らないレオナルドの情報……黒子ほくろの数、位置まで全部知っている私が知らない情報なんて……自分が許せない……」



「……今変な言葉が聞こえた気がしたんだけど」


「気にしないで……私だけの秘密だから」


 ……と返答後のレオナルドは恐怖に似た寒気。

 エミリアが自分へと放つ、何やら得体の知れない気配に苛まれる結果となりつつも、


「とにかく……私が来たのはね……」


 前話こそ長くなりはしたが、ここでようやく彼女はレオナルドに向けて、


「解散したけど……貴方のサポートが出来ればと思って……貴方が出て行ってしまう前に……先に伝えておかなきゃと思って……ここに来たの」


 そう彼女は告げた。

 彼と一緒に第二の人生を楽しみたいと。


 すると、この言葉は彼にとっては予想外の言葉だったのか返事はほんの一言だけ。



「えっ……いいの?」



 そう溢して確認をした。



「うん、それに……元々、私は貴方に付いて行こうと思ってたから…………ダメ……かな?」


「いやいや、凄い嬉しいよ! 正直、お店を一人で切り盛りするのが不安でさ! 丁度誰かと一緒にやっていきたいなあって思ってたんだ!」


「そう……なの?」


「うん、それに会計をしていたエミリアなら【信頼できるし】、来てくれるなら大助かりだよ!」


「分かった……じゃあ付いて行く」


 すると……パーティー解散の時に表に出さなかったが、心細さを感じていた彼からすれば歓迎。

 そのエミリアの提案は素直に喜べる話であり、二つ返事で彼は付き添いを承諾したのだった。



「それじゃあ話も纏まった事だし。荷物持ってひとまず本部から出ようか」


「分かった……(良かった……これで私は……レオナルドと一緒……それに【信頼してくれてる】って言ってくれた……嬉しい……フフフ)」


 と、そうして荷物整理が完了した後。

 エミリアからしても喜ばしい返事が聞けた所で、彼女は僅かに頬を赤らめつつレオナルドの横に寄り添って幸せそうに付いて行くのだった。


「? どうしたの、エミリア、顔が赤いけど」


「……何でも無い……気にしないで」


「もしかして……熱とか? ダメだよ、体調管理はしっかりしな――いでででででっ!? 止めて、エミリア、頬っぺたを引っ張らないでおくれ!」


「…………馬鹿」


 まあ……彼女の頬が赤い理由に関しては……【こんな調子】のレオナルドが真実に到達する事は現在の所、万に一つも感じられる要素が無く、傍から見れば気の毒そうな彼女ではあったが……。


 一先ずこうしてレオナルドは望みの一つであった自分のお店である【よろず屋】を開店すべく。

 主もいなくなり、荷物も全て回収されて見事にすっからかんになった自室を後にした。


 大切な仲間の女の子と共に……。


 ―― ―― ―― ―― ――


「うーん、良い天気! 絶好の物件探し日和だ! じゃあエミリア早速行こうか!」


「うん……【私達の共同生活】の始まり……」


「……なんか言い方が大袈裟な気がするんだけど」


「大丈夫……単なる意気込み……気にしたら負け」



 そうして二人は外へと出て行った。

 これまでに親の顔以上に見てきたであろう本部。

 冒険より帰還する度に途方もない回数は眺めてきたであろう、その天の箱舟の本部だった豪邸から離れていき、


「お店の場所……決めてるの?」

「一応ね。ほら、僕達が以前に助けた仲良しの夫婦が営んでた古風なお店があっただろ?」


 レオナルドはこれからの【相棒】となってくれた少女エミリアと共に、温かい空気流れる青空の下を歩いていく事にしたのだった。


「……あの……色々と設備がある店?」

「そうそう。その夫婦がもう引退するから、店を売却する予定って言っててさ。色んな品を用意するなら、最適かなって思ったんだ」


 荷物を詰めた不思議な袋を持ってお店に出来そうな物件探しへと出かけていったのだった。


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