28.巣立つ時のようです
へいわがいちばん
「――――――から! いい加減に――」
「――――にしろ――其方の――など」
おっと……そうであった。
こちらの物語の展開を忘れていた。
エルザ姫とフレア王子が運命の出会い。
もといお互いに食事を通じて理解を深め合う中。
この馬鹿二人の事がすっかり抜けていた。
「だ・か・ら! なんど言わせれば分かるんだ! 貴様が我ら炎国の申し出を受け入れれば! 貴様らの国には攻撃をしないと言っておるのだっ!」
「ふん……唾を飛ばすな唾を。全くどいつもこいつも炎の国の民というのは暑苦しく話せないと死ぬのか? 耳に響くし煩わしくて仕方ない。分かったら静かに話すのだ」
その娘、息子たちが仲良くしていた一方でこっち側は互いの事など思わず性懲りも無くひたすら自国の利益のみに集中していた。
(もうまだ終わらないのかしら? 正直どっちでもよくなってきたわ。それよりも秘書の私をいちいちこんな無駄口叩く会議の為に駆り出されちゃ話にならないわよ)
(本当に会議の度にこの二人を見てるがまるで子供の口喧嘩じゃ。見苦しいにも程がある)
そう最早付き人にすら愛想を尽かされつつある二人。
炎国ヒートランドの統治者、イフリス皇帝。
氷国グレースランドの統治者、コルドル大王。
彼らはこんな収集がつかない口喧嘩の為に時間、経費に至るまでを無駄遣いしていたのだ。
それもたかが鉱山の権利一つくらいで……。
「くそっ、分かった。やってやろうじゃないか! そんなに貴様が意固地になるのなら望み通りに決着を付けてやろうじゃねぇか!」
「よかろう……ではこちらも冷凍ミサイルをそちらへしこたま打ち込んで我が領土に変えてやろうでは無いか。いいのだな、其方が言い出した事だぞ?」
「ふん! 好きにしやがれ!」
(んもう! 何処も王様ってバカばっかりね! もうどうなっても私は知らないんだから!)
(コルドル様、流石に失望しましたぞ。確かに強さを見せる事は必要ですが……これは……)
お互いに馬鹿馬鹿しい程お高くとまる二人。
そう傲慢と欲に満ちたプライドを振りかざし、そんな統治者らしからぬ感情に流され危うい発言をし全員から哀れな視線を向けられる……。
「じゃあ早速戦争開始だ、ゴルルァ!」
「良かろう……我に二言無し!」
そんな緊迫した空気の中!!
「無駄な会議はそこまでですわよ!」
「これ以上争うのはやめるんだ!」
バンッ! と。
「うんんっ!?」
「だ、誰だ!?」
音をあげてその大きな両扉を勢いよく。
力任せに会議室の扉を開いたのは……そう。
「やあ、父さん。相変わらずみたいだね」
「フ、フレア!? 何故お前がこの会議室に!?」
「お父様、お久しゅうございます」
「エ、エルザ!? ど、どうして……外は危険だから城から出すなと兵士全員に言った筈……」
初めて己が抱いた強固な意思でより殻を割り外へ出てきた子供だった。
そしてそのまま驚愕する親へ向けて、
「とりあえず言いたい事は色々あるのですが――」
「このまま民の命を軽々しく弄ぶような――」
「こんな不毛な会議を続けるのでしたら――」
「子供にも考えがあるんだ!」
「「か……考え!?」」
「「もしも……そうしないのなら」」
まるで見違えるように凛々しくなった二人はその強い意志を瞳に宿し、慄くバカ親に向けつてこの会議の場を諫めるべく、王子と姫は仲良く手を取り合い……こう告げた。
「僕達は――」
「私達は――」
((ごっ、ごくり……一体))
「「この国を捨てて駆け落ちします!」」
「ええええええええええええええ!?」
「何だとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
すると、飛び跳ねるかの如くイフリス、コルドル共に席を立たざるを得ずに流石にこればかりには度肝を抜かれたというか、この衝撃発言に関しては黙っていられなかった。
その理由は無論、発言者である子の言葉。
両者とも大切な子供であり跡継ぎである筈の二人がそうはっきりと言い放った事。
「おいおい、おいおいおいおいおい。フ、フレア? どうしたんだ一体? かかか駆け落ちだって。そんな三流ドラマみたいな展開……そんなのお父さん許しませんからね!」
「ふん! もう父さんの事なんて知らないよ!」
「うぐっ、そんな事言うなって! 何が欲しい? オモチャか、オモチャ欲しいのか? 良いぞ好きなの買ってやる。だからそんな事――」
「僕もうそんな年頃じゃないんだけどっ!?」
「エ、エルザ……どうしたというのだ。どうして部屋を抜け出して……いやもうそこは問題では無いな。あのフレア王子と……えっとなんて言ったか……そうだ。駆け落ちするだと!? そんな横暴……我輩が……このパパが許さないんだからな! すぐ考え直すんだ、エルザ!」
「ごめんなさい、お父様。もう私は貴方に縛られるだけの人生は飽きたんですの。これから愛する彼と共に幸せな人生を歩む事に致します……」
「ま……待つのだ! 自由、そうか自由になりたいんだな! 分かった良かろう! これからはパパがお前のボディーガードとして一緒にいてやろう! どうだ! それで問題あるまい!」
「どう足掻いても問題だらけですわ……」
キツく勢いのある物言いでのイフリス皇帝、もしくは冷静な物言いだったコルドル大王。
そんな両者と共に強さ溢れていた王者の風格が今ではこのザマ。
風格が地どころか奈落にまで暴落する中で成長した子供の躾けもロクに出来ず、それどころか反発までされてしまうという悲しい始末を迎えていた。
「どどど、どうすればいい!? なあコルドル! 本気で怒った子供を鎮めるにはどうすれば!?」
「知らぬ! こちらも愛娘で手を焼いているのだ。自分の子供の事くらい自分で考えるのだ!」
((ホントは冗談なのに……凄く効いてる))
だが……そんな親達の動揺とは裏腹に自分達も責任ある立場と自覚している以上、国を捨てるというのは出まかせとはいえ、予想以上に慌てふためく彼らに向けて子供は、
「それでしたら――」
「今、自分達が何をすべきか――」
「よぉく分かっておりますわよね?」
「「……は、はい。仲良くします」」
((えっ!? 会議終わり!?))
……と、まさかの結末。
(でも、まさか王子様が出てこられるなんて)
(エルザ姫……またメイドのエミルに無茶言って、城を抜け出してきたのですな……まったく)
統治者の子供によりこの会議は見事終幕。
そのまま子の厳しい監視の元で平和的な交渉へと繋がっていくのだった……そして。
―― ―― ―― ―― ―― ――
全ては丸く収まった。
『そうして……今では国境の鉱山は両国の物とした他、両国民達も親交を深める様に隣国へ移住できるようになりました。本当にレオナルド様、エミリア様のご協力のおかげで世界に平和を取り戻す事が出来ました。ありがとうございます!』
些細な文通という交友から始まり、それがきっかけで馬鹿な親馬鹿達の口論による戦争勃発を回避し、結果的に見事フレアとエルザは自分達の世界の護ったのだった。
「だってさ。どうやら上手くいったみたいだよ」
「時には目先の欲に捉われる大人より……純粋な子供の方が物事をよく見ているの……」
「はははははは! 身も蓋も無い事言うねエミリアは。でもあながち間違っていないのが、なんて言うか悲しい所なんだよね……ほんと」
さらにレオナルドが更なる安寧の為にと【万能―創生】の力で生み出し二人に送った贈り物。簡易的に両者の大きな弱点である熱さ・寒さの概念を緩和できるという【中和のロザリオ】をプレゼントしたおかげの甲斐あってか、今では炎・氷の両国に大繁盛。
「さあ……出来たの……レオナルドはシチュー……私は取れたてフルーツの……シャーベット……」
「おお、待ってました! 丁度パンと一緒に食べたかったんだよね。それじゃ、いただきまーす」
「私も……いただきます」
特に今まで多くの民が体質上食した事の無かった【温かい料理】【冷たい料理】が両国ともに行き渡っただけでなく、そこから国民達の交友も始まったと良い事尽くめとなった。
「あふあふあふ! あちちち! うーん! 熱いけどやっぱり出来たてが一番美味しいね!」
「むむ……食べ過ぎて頭痛いの。でもこれが冷たい氷料理の醍醐味……とても美味しいの」
こうして今回もレオナルド達は依頼人が望む最高の結果。
経過した日数としては短くともお姫様と王子様の【つめたくてあたたかい】密かな恋の依頼を見事ハッピーエンドで完遂するのだった。
次話、【12月25日】投稿予定。
※幕間の執筆の為、明日はお休みです。
※但し明日は約2000字の【短編】を投稿予定です。
短編も同じく正午以降にて【直接投稿】致します。
一応、その……なんと言いますか……。
皆様にとってはとても【忙しいであろう】クリスマス・イブ。
そんな中で読んでくださる方は恐らく少ないと思いますが……(自虐)
それでも少し【エグい系の短編】を投稿しますね(´・ω・`)




