頑張れ、はしらちゃん!〜はじめてのぼうけん〜
いやっふぅぅぅ!!
まさかのコラボの続編だぜぇぇい!!
コラボを引き受けてくれた藤原ロングウェイ先生に、マジ感謝!!!
辺境の地ファーゼスト領の主、ルドルフ=ファーゼストの屋敷の地下深く。
そこには、神々によって封印された古の大悪魔が祀られている。
大悪魔は、人々の負の念を糧に力を取り戻さんとしており、今では分身を顕現させるまでに至っていた。
退屈な封印生活を送る大悪魔であったが、分身を顕現させる事により、その生活は一変する事になる。
何故なら、分身は神々が施した封印を抜ける事ができるため、分身を通して直接現世の情報を得られるからだ。
そして、大悪魔の力を以てすれば、異世界への壁を抜ける事も可能となる。
先日、ひょんな事から、契約者であるルドルフの意識だけが異世界へと渡ってしまい、その事を感知した大悪魔は、結ばれた縁を辿って、かの異世界へと渡る計画を立てていた。
そう、異世界に分身を遣わし、悪魔の名が示す通りに、やりたい放題するという陰謀を企んでいたのである。
「ルドルフの奴め、一人で異世界に遊びに行くなんて、ズルい!ズルいぞぉぉぉ!!」
ベッドの上で叫び声を上げる、わらわの本体。
まぁ、その気持ちは分からなくもない。
わらわの契約者であるルドルフは、異世界から意識だけ召喚され、あまつさえ無事に戻って来るという、とんでもない偶然を引き当てたのだ。
一体どれだけの偶然を重ねれば可能なのか、運命を司るわらわであっても、想像もつかない次元の出来事である。
「なんじゃ、あの世界は?とっても楽しそうではないか!?ルドルフの奴も、現地人と楽しそうに笑っておったし…………妾も一緒に遊びたいのじゃ!!」
全く、わらわ達を放ったらかして、一人で異世界を満喫するなんて、なんて酷い契約者じゃろうか。
けしからん!全く以てけしからんのじゃ!!
「はしらちゃん、座標は分かっておるな?」
「うむ『https://ncode.syosetu.com/n3165cd/』座標はバッチリ把握しているのじゃ!」
しか〜し、大悪魔たるわらわ達に不可能はなぁ〜い!!
因果を司るわらわ達の手に掛かれば、一度結ばれた縁を辿る事など、お茶の子さいさいであ~る。
伊達に異世界を覗きまくってはおらんのじゃ!
「では繋げるぞ?…………そいやぁ〜〜!!」
大悪魔としての権能をフル稼働させ、結ばれた縁を手繰り寄せて世界と世界を重ね合わせてゆく。
そして、そこに次元の裂け目を作れば、異世界への入口の出来上がりである。
「では、行ってきますなのじゃ!」
本体に手を振って、わらわは次元の裂け目へと飛びこんだ。
こうして、わらわの異世界冒険譚が幕を開けるのであった。
今回の異世界は、同じ『なろう系』の世界に分類されるため、わらわは特に力の制限を受ける事無く、世界を渡る事が出来た。
悪魔としての権能も問題無く振るう事が出来るし、本体との繋がりも健在のため、いざとなれば本体からの支援を受ける事も可能である。
次元の裂け目を何事もなく渡ったわらわは、ついに異世界の地に足を踏み入れた。
降り立ったそこは誰かの家の中であり、生活の痕跡は見られるものの、人がいる気配は感じられない。
どうやら、皆が出払っているタイミングに訪れたようじゃ。
ふむ、ルドルフとの縁を辿ってきたのじゃから、ヒイロとか言う小僧達の家のはずじゃが、誰もおらんのか…………
せっかく異世界にまで遊びに来たというのに、これでは皆と遊ぶ事が出来ないではないか。
しかし、遊び相手が不在であればしょうがない、仕方が無いので、一人で異世界を冒険するとしよう。
さて、何から手を付けたものか……
異世界に来たのじゃから、やりたい事は数多くある。
ラノベもたくさん読んで、予習はバッチリ。
準備万端である。
ふむ、まず手始めにアレじゃな…………
「『THE家探し』じゃ!」
異世界の代表的『あーる・ぴー・じー』でも、民家の中を虱潰しにするのは定番中の定番。
ツボやタンスは勿論、机から本棚に至るまで、しっかりと探索してやるのじゃ!
さてと、そうは言うても家の中は思っていた以上に広く、三人で住むには多過ぎるぐらいの部屋数がある。
一部屋ずつ漁っていたのでは、日が暮れてしまい、家主が帰って来てしまう。
そうなる前に、効率良く見て回る必要があった。
「そんな時は〜、困った時の悪魔頼み!」
ふっふっふっ、運命と因果を司る悪魔の権能を使えば、ちょちょいのちょい。
家人との縁が強そうな場所を探っていけば、自ずと重要な物に辿り着けるという寸法じゃ。
「さあ、レアアイテムが、わらわを待っているのじゃ!」
…………ふむふむ、まずはあの部屋からじゃな。
人と物とを繋ぐ縁を可視化させ、いくつかある中から一つを選んで、辿った先にある部屋へと向かう。
その部屋には二人分の縁が結ばれていたため、手始めにこの部屋から探索する事にしたのだ。
辿った縁は、ヒイロとか言う小僧の物と、その姉であるムラサキの物。
恐らく二人は、一つの部屋を共有して使っているのじゃろう。
にしても、こんなに沢山部屋があるのに、何で二人で一つの部屋を使っているのじゃ?
年頃の姉弟であれば、一つの部屋で過ごすとなると、色々と不都合もあると思うのじゃが……
「まぁ、いっか♪」
人それぞれ事情はあるのじゃろうが、わらわには関係ない事じゃ。
わらわは、他人のプライベートを漁る事ができれば、満足じゃからな。
うっしっしっ、プライベートを荒らされ、恥ずかしい秘密を知られた二人は、一体どんな反応をするかのぉ?
今から、楽しみじゃな〜。
「さてさて、ではでは〜」
わらわは部屋の扉に手を掛け、勢い良く開けると、部屋の中へと足を踏み入れた。
――その瞬間、何者かからの視線を感じ、わらわは室内をぐるりと見回した。
じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー じーー
部屋の中には何十という人形が飾られており、その無機質な瞳から、おぞましいほどの視線が向けられる。
わらわは急いで部屋から逃げ出し、扉を閉めて不気味な視線を遮った。
「なんじゃアレは?なんじゃアレは!?なんじゃアレはっ!?」
聞いてないのじゃ、あんなトラップがあるなんて聞いてないのじゃ!!
あの姉弟、一見普通の人間にしか見えなかったけど、頭がおかしいのか?サイコなのか?
いや、良く良く考えれば、あのルドルフと意気投合するような人物が、まともな神経の持ち主である訳がない。
わらわは異世界にやって来た事を、ちょっとだけ後悔した。
「……いや、大悪魔たるわらわが、人間ごときのトラップに負けてなるものか!?たかが人形の視線に負けたとあっては、大悪魔の沽券に関わるのじゃ!」
わらわは勇気を奮って、もう一度部屋の扉に手を掛け、今度は少しだけ開けて中を覗く。
相変わらず、何十もの人形が飾られており、異様な雰囲気を醸し出している。
…………しかし、良く見てみれば、それらは男女の組み合わせで出来ており、どれもこれもイチャイチャラブラブしているように見える。
別段、恐怖を覚えるような人形では無かった事にホッとし、もう一度部屋の中へと足を踏み入れた。
「ふ、ふん、びっくりさせおって。わらわを驚かせた罰じゃ、飛び切り恥ずかしいアイテムを発掘して、羞恥心で悶えさせてくれるのじゃ!」
わらわは、何十体ものイチャつく人形を一睨みし、お返しとばかりに、家探しを始める。
「まずは姉の方からじゃ!」
女性の私物となれば、下着を始め、人前に出したら恥ずかしいアイテムが盛り沢山である。
わらわは姉の方の縁を辿ってタンスを開けていき、遂にそれを発掘する事に成功した。
「くはははは、これじゃこれじゃ!わらわが求めていたのは、こういったアイテムなのじゃぁぁ!!」
わらわはタンスの中から、ムラサキの物と思われる下着を取り出して握り締める。
ねんがんのくろいブラジャーをてにいれたぞ!
うは〜、楽しくなってきた!
これぞ、異世界転移の醍醐味じゃな!!
…………それにしてもエロい。
こんなにエッチな下着を持っているなんてけしからん!
そして、この圧倒的なボリューム感。
でかぁぁぁぁいっ、説明不要!!
たわわに実る二つの果実を、背徳的な黒色のベールで覆い隠して、一体誰に迫るつもりなのじゃろうか。
……まぁ良い、ムラサキがこの下着を誰に見せるつもりか知らないが、今はわらわの手の中じゃ。
くっくっく、こんなエロエロな下着を持っている事が保護者や弟にバレたら、恥ずかしくて顔を合わせられまい。
それにしても可哀想なのは、弟の方じゃな。
美人な姉が、同じ部屋で着替えをしようものなら、気が気ではなかろう。
おまけに、あんな破壊力抜群の下着を身に着けていれば、いくら姉とはいえムラムラしてもおかしくはないじゃろうに。
年頃の男を相手に、酷い事をするのぉ。
……さて、ブラジャーを発見したはいいものの、それだけではインパクトに欠けるのぉ。
わらわはブラジャーを懐に仕舞い、次の獲物を探す事にした。
再び縁を可視化させ、一際太い縁が結ばれているタンスに手を掛ける。
しめしめ、これほど太い縁であれば、持ち主の思い入れも相当なものに違いない。
もしそれが無くなってしまえば、ムラサキの奴はどれ程のショックを受けるじゃろうか。
わらわはタンスの扉を開け放ち、更なるレアアイテムを探すべく手を伸ばす。
そして――
――わらわはスクール水着を手に入れた。
「……のじゃ?」
あれ?変じゃな、わらわの目がおかしくなったか?
ゴシゴシ。
目をこすって、再び手にしたそれを見直す。
――わらわは、スクール水着を手に入れた。
「……間違いない……よな?なんでこんな物が?」
何度見直しても、それはスクール水着にしか見えず、太めの縁がきっちりと結ばれている。
「……ん?」
しかし、良く見れば太めの縁はスクール水着だけではなく、他の衣類にも繋がっているではないか。
「一体このタンスには何が入っているのじゃ?」
そう思い、わらわはタンスの中に顔を突っ込んで、中を確かめてみる事にした。
・メイド服
・チャイナドレス
・ナース服
・巫女装束
・修道衣
・ビジネススーツ
・猫耳
・ウサ耳&尻尾
・着物
・大き目のワイシャツ
・ガーターベルト
・スケスケのネグリジェ
・セーラー服
・ラバースーツ
・学ラン
・軍服
・体操服……etc
「――よし、見なかった事にしよう!」
うむ、何だかよく分からないが、わらわにはまだ早い気がするのじゃ。
分身体は、本体と違って色々と制限がかけられておるから、きっとこれ以上は踏み込んではいけない世界なのじゃ。
うむ、わらわは『KENZEN』じゃから、『R-15』や『R-18』なんぞもってのほかなのじゃ。
わらわはスクール水着をそっと元の位置に戻し、タンスの扉を閉めた。
分身体としての制限に触れるのであれば仕方がない、姉の方はブラジャーだけで良しとし、今度は弟の方の探索を始めるとしようか。
さて、男の部屋を漁るのであれば、探す物など一つしかない。
……そう、年頃の男子の必需品、エロ本である!!
「クックック、本人は巧妙に隠しているつもりかもしれぬが、エロ本を隠す場所なんぞ、だいたい決まっておるのじゃ」
そうと決まれば、早速行動じゃ!
わらわは部屋を見回し、隠し場所に当たりを付けてお宝探しを開始する。
まずはベッドの下…………には無いか、さすがに定番過ぎじゃったな。
次は机の中…………うん、なんじゃこの箱は?
中に入っているのは…………ただの石??
「ただの石に、何でこんなに愛情の念が込められているのじゃ?」
机の中で、箱に入れて大切に仕舞われていた、ただの石。
権能を使ってその来歴を調べてみるも、本当に何の変哲もない、そこら辺で拾ってきただけの、ただの石であった。
なのに、この石には極太の縁が結ばれており、相当大切にされている事が窺える。
それも、丁寧に汚れを落としたり、布で磨いてみたり、時には頬ずりまでして、ヒイロはこの石を大切に保管しているのである。
…………ぶっちゃけ、キモい。
まぁヒイロが、ちょっとアレな人格をしていた事は、この際横に置いておこう。
今はエロ本を探し出し、奴の趣味や性癖を暴露する事に注力するべきなのじゃ!
わらわは、気持ち悪いぐらいに愛された『ただの石』を元の位置に戻し、お宝探しを再開する事にした。
ベッドの下には、何も無かった。
机の中には、変な物しか無かった。
……となれば、残す隠し場所はあそこしかない。
「本棚じゃな」
わらわは、部屋の隅に備えられた本棚の前に立ち、本のタイトルを一つ一つ確認していく。
『水魔法・初級編』
『薬草・毒草大辞典』
『棍棒最強伝説』
……成る程、意外と勉強家のようであり、多方面の分野の本が納められている。
「しか〜し、わらわの目は誤魔化せないのじゃ!」
わらわは再び縁を可視化させ、本棚の中から、一つだけ太い縁が結ばれている書籍を取り出した。
『トポリス王国の歴史』
ふむ、何の変哲もないタイトルの書籍である。
しかし、わらわの目にはしっかりと太い縁が見えており、この本がただの書籍ではない事が判明している。
であれば、この書籍には何か秘密があるに違いない。
「…………カモフラージュか、小賢しい真似じゃの」
本当に男という生き物は馬鹿じゃな、どいつもこいつも同じように隠し事をしおる。
浮気然り、借金然り、……そしてエロ本然り。
別の本のカバーを取り付けるなんぞ、また古典的な方法を取ったものじゃ。
……さてさて、わざわざカモフラージュしてまで隠す性癖がどれ程の物か、拝ませてもらうとしようかのぉ!
「いざ、ご開帳じゃ!!」
わらわは、偽装用のカバーを勢い良く取り払い、隠されていた真のタイトルを確認する。
『丸秘!俺の考えた最強魔法ノート』
…………あ、えっと、その……そっち系の本じゃったか。
ちょっと申し訳ない気分になりつつも、タイトルに興味を引かれ、表紙を捲ってみると、そこにはヒイロのオリジナルの呪文と効果が、イラスト付きで載っていた。
無論、全部手書きである。
『インフィニティ・アーネスト・スーパーノヴァ』
【効果】
リア充爆発しろ!
(但し、自分も爆発するので注意)
『クリスタル・ダーク・ブリザード・オブ・セプテンバー』
【効果】
古代伝説の暗黒魔竜の力を借りて、弟が姉と結婚できないことを知った夜、人生で初めてのタバコを吸う。
『グリード・ラブ・インフェルノ』
【効果】
地獄の業火に抱かれて消えろ!
『ハン・ヴァー・グ』
【効果】
挽肉とみじん切りにした野菜にパン粉を混ぜ、塩を加えて肉の粘性を出し、卵を繋ぎとしてフライパンで加熱して焼き固める。
目玉焼きを上に乗せるのが、俺のジャスティス!
『アブソリュート・プロミス・メイデン』
【効果】
それは、約束された絶対の世界。
何者であっても侵す事はできず、絶対零度の彼方に想いを運び、祈りとともに世界を改変してゆく。
其は神と交わされた絶対の約束。
其は乙女を守り抜くための絶対の誓い。
ここに絶対の真理を説こう、世界がそれを否定するなら、俺が世界を否定しよう――
…………うん、なんかその、すまんかった。
この本を読んでしまった事を心の中で謝罪し、わらわはそっと本を閉じた。
「……ま、まぁ男の子なら、誰もが一度は通る道じゃからな。しょうがないのじゃ」
心が生暖かくなるのを感じながら、この本の処遇を考える。
「…………うむ、わらわは寛大じゃから、この本の内容を暴露するなどという、非道な真似はしないのじゃ!」
そして、ヒイロがあまりにも不憫であったため、わらわは隠されていた本の内容を、忘れてあげる事にした。
いくら悪魔といえども、大悪魔ともなれば、行われる悪事には『美学』が存在する。
人の黒歴史をほじくり返して、直接それを突き付け「ねぇ、どんな気持ち?ねぇ、どんな気持ち?」などと言うのは、三流の悪魔のする事である。
わらわのような大悪魔が行う悪事は、もっとスマートでエレガントでなければならない。
そのため、わらわは今回の件を見なかった事にし、この黒歴史ノートはきちんと片付けてあげる事にした――
――机の上に。
これが大悪魔の『美学』である。
……本?何の事じゃ?
わらわ、忘れちゃったから、分かんな〜い♪
さてさて、この部屋で出来そうな事は、もう無さそうじゃな。
わらわはそう考え、部屋を後にして、意気揚々と次の部屋へと場所を移す。
次は、どこの部屋を探索したものか…………
わらわは大悪魔の本能に従い、欲望の赴くままに足を進め、その部屋を訪れた。
やってきた場所は、キッチン。
料理の途中だったのか、いくつか材料や器具が机の上に置かれている。
そして、わらわはその中からとある器具を発見し、目が釘付けになった。
「あ、あの棒はまさか…………あれは『あの棒』ではないか!?」
――説明しよう。
『あの棒』とは、ある物を絡めるために、ぐるぐるの溝が彫られた球形の突起が付いた棒の事である。
そして、『あの棒』がここにあるという事は、つまり、アレが存在するという事。
わらわは辺りを見渡し、とうとうアレがたっぷり入ったツボを発見した。
「は〜ちみ〜つ、た〜べた〜いな〜〜♪」
想像してみるのじゃ!
『あの棒』をハチミツの中に入れ、それを引き上げるその瞬間を。
粘度の高い黄金色の蜜が糸を引き、それを『あの棒』がくるくると回転しながら巻き取ってゆく。
ハチミツは表面張力に従い、『あの棒』を中心に球体を形成し、その様子は、まるで『あの棒』を閉じ込めた琥珀のよう。
そして、宝石さながらの甘味を口元に運び…………
「むはーー!想像するだけで、たまらんのじゃぁぁ!!」
本来はハチミツを巻き取るだけの『あの棒』に、直接むしゃぶりつくという背徳感。
……うむ、実に悪魔らしい!
そして、一度口を付けた『あの棒』を、そのままハチミツに突っ込んで、再びむしゃぶりつくという暴挙。
……うむ、実に悪魔らしい!!
「おほーーっ!!ハチミツが、わらわを待っているのじゃーー!!!!」
わらわは、机の上にある『あの棒』を乱暴に手に取ると、ハチミツのツボの中に入れて掬い上げる。
すると重力に従い、黄金色の蜜が糸を引いて垂れていくではないか。
それをくるくると巻き上げ、わらわは手元にハチミツの塊を作り上げた。
「いっただっきま〜す!!」
そして琥珀色の宝石を口に入れ、幸せを堪能しようとするその寸前――
――ガチャリ
家の玄関から、扉が開く音が聞こえてきた。
今回も、藤原ロングウェイ先生の方で、【続・あくおれ!~悪魔?と弟の楽しい異世界生活~】という、対となる話が展開されているので、こちらも併せてお楽しみ下さい(*´∀`*)
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