緊急会議
2205時 東京永田町 首相官邸4階 大会議室
今夜の永田町はいつもとは違い、全体的にピリピリとした空気が蔓延していた。
東京都永田町、この政府中枢機能の殆どが存在する場所で、横に首都高速都心環状線を望む立地にあるのが首相官邸(総理大臣官邸)である。この、地上五階、地下一階の鉄筋コンクリート構造の建物は、四周にガラスが張られ、屋上の平たい屋根の上にはヘリポートが完備されている。
そんな、この首相官邸であるが、この建物は総理大臣と、各省庁のまとめ役である内閣官房の執務室としての機能を有し、また、有事の際には地下の危機管理センターにおいて、国家の危機に際して、総理大臣自らが閣僚の陣頭指揮を取っていくための設備も存在している。
そのような、政府の中枢を担う重要施設である、首相官邸の4階にある大会議室では、伊豆半島南部で起こっている一連の問題に関して、官邸対策室の設置、緊参チームの招集、事態対処専門委員会の開催に引き続き、総理大臣を議長として、「伊豆半島南部における一連の事案に関する関係閣僚緊急協議」が行われようとしていた。
会議室内は、外側のガラス壁にはカーテンが掛けられ、反対側の壁は肌色に近いトチの木色となっており、その前には椅子が並べられ、中央には白いテーブルクロスがかかったテーブルが配置されている。その周りにも中央のテーブルと同様に、白い布のかかった長机が配置されていた。また、長方形の会議室の手前の壁には大型モニターが設置されていたが、電源が落とされているようだった。
会議に集まった、防衛省や警察庁、外務省などの長達は、内閣情報集約センターからもたらされた最新資料や会議資料を、各々ぱらぱらと捲っていた。その他にも各省の局長クラスが端の席に控えており、各分野の専門的知見をいつでも大臣に提供できるように、資料を読み込んでいる最中だった。
しかし、その中でも異彩を放っていたのは、会議室の一番端に座っていた、深緑の制服に身を包み、座りながら不動の姿勢を崩さない武官と、黒縁のメガネを掛けて、静かに資料に目を通しているスーツ姿の若い女性であった。ここに集まっている官僚たちも彼らが何者なのか知らない様子であった。
防衛大臣の佐伯匡弘は、腕時計を確認し間もなく会議が始まることを予期した。22時丁度その時、若い秘書官が会議室のドアを開け、総理が来ることを告げる。それから数秒後、大内義輝総理大臣が入室した。
室内の全員が起立し、総理を見て姿勢を正す。
「もう全員集まってる?」
「はい、すでに関係閣僚は集まっております」
内閣官房長官である清水が報告する。それと同時に総理が中央テーブルの議長席に座ると、閣僚たちも全員着席した。
大内総理は40代半ばだが、艶のある黒い髪はまだ多く残っており、顔も若々しいことから、実年齢以上に若く見えた。彼は野党時代から一風変わった雰囲気を持っていた。どこか飄々としているというか何と言うか。
総理は早速本題に入った。
「最初に「彼ら」を発見したのは防衛省だっけ?」
清水の方を見ながら大内は質問した。清水はすぐに答える。
「はい、21時前に御前崎のレーダーサイトで捉えたのが最初の報告であります。現在までに、民間人が「彼ら」の協力下にあると思われる「害獣」から攻撃を受け、F15Jが空対空ミサイルにより民間人の正当防衛を行いました」
清水がこれまでの状況を少し早めの口調で伝える。そして、清水は一拍おき報告を続けた。
「また、最新情報によりますと南伊豆町近海に多数の不明船舶、飛行生物及びその乗員が確認されており、飛行生物とその乗員につきましては、我が方の航空機に対して攻撃を行って来たため、正当防衛射撃を実施しました」
室内が多少ざわつく、いくら報告書で事前に読んでいたとは言え、閣僚たちの何人かは、この日本で武器が使用されたことが信じられなかったようだ。
そのような雰囲気を感じ、大内総理は閣僚に告げる。
「もう起きちゃった事はしょうがないでしょう。防衛省からの報告にあった通り、こうしなきゃ自衛官の命が危なかったんだもの」
比較的保守的な性格として知られる、経財産業大臣の長井政道が総理に訴える。
「で……ですが、総理! 戦後からこれまで守り続けてきた歴史をここで変えてしまうのですか?」
大内は表情を変えることなく、長井に返答する。
「長井さん。歴史は常に変化していくものだよ。変化を恐れていたら先には一歩も進めない」
長井はまた何か言いかけたようだが、これ以上は不毛であることを悟り、無理やり自らを納得させたようだった。
「で、警察と海保も動いてるんだって? 今どんな状況?」
まず初めに、安田徹、国家公安委員長が、資料を手に取りながら報告を始める。
「はい、現在、地元警察署、消防の人員で住民の避難を行っております。また、不審船の人員の上陸を阻止し、住民の避難時間を確保するため、下田警察署、静岡県警銃器対策部隊の人員及び航空機を現地に派遣しております」
「でも不審船の乗組員は約3000名だっけ? それだけで大丈夫?」
「……地理的にも、現行法的にも、今住民を守れるのは現地周辺の人間しかいないのです」
消防庁を管轄している総務大臣の中川啓司も静かに頷く。
大内は考える。既存の警察力を上回るであろう事態が発生している今、自衛隊を派遣し防衛させるのが最善だと思う。しかし、自衛隊の出動には法的なしがらみが多い。仮に、超法規的措置で、幾つかの会議を省略し、直ぐに防衛出動をかけたとしても、空挺部隊は別として地上部隊に関しては、一番近い駐屯地で、しかも各所轄警察の全面協力を得たとしても、現地まで到達するのに4時間前後はかかるだろう。だが、今から行動を取らなければ更に被害が拡大する恐れもある。どうする。どうすればいい?
その時、会議室に若い男が早足で入ってくる。彼はそのまま真っすぐ、国土交通大臣の後ろの席に控える消防庁長官にメモを渡した。長官はメモを確認するとすぐに、前の国土交通大臣に手渡す。
そのメモを数秒確認し、その監督下に海上保安庁を有する、国土交通大臣の谷岡祐一が報告を始める。
「報告致します。現在、海上保安庁下田海上保安部より巡視船「しきね」「いずなみ」が南伊豆近海に入ったとの報告がありました」
続けて谷岡が口を開く。
「しかし、重火器で武装しているとは言え、二隻だけで30隻を相手にするとなると、やはり火力不足が否めないかと……近隣の清水海上保安部などからも増援を向かわせておりますが、到着はまだ先と思われます」
報告を受け総理が確認する。
「つまり、現状で対処できるのは二隻だけと?」
「はい……やはり、自衛隊を出動させたほうがよろしいかと……」
ここで、外務大臣の大友達彦が反論する。
「総理! 武力行使は最後の手段です。どうか我々に彼らとの交渉の時間を頂きたい」
大内は腕を組みしばらく考える素振りを見せた。そして、防衛大臣である佐伯に問いかける。
「「彼ら」に本当に我が国に対する敵意はあるの?」
一瞬戸惑うような様子を見せ、佐伯が会議室の端の方に視線を向ける。その目線の先には、陸上自衛隊の制服に一等陸佐の階級をつけた男とスーツ姿の若い女性が座っていた。
佐伯大臣の目線を感じ取り、狭間一佐が立ち上がる。その突然の動きに、全員の視線が会議室の末席に注がれた。
狭間一佐は不動の姿勢を維持したまま口を開く。
「最初から敵意があったかは不明ですが、これまでの行動を見る限り、現在は敵意を持っていると思われます」
それを見ていた、石黒信夫環境大臣が苛立ちを露わにしながら立ち上がった。
「一体なんなんだ!君たちは!」
しかし、狭間は質問に答えようとせず、ずっと正面を見つめ続ける。
すると大内総理が、半ば諦めたような表情を一瞬見せ、狭間に命じた。
「もう秘密にしていても意味がない。狭間一佐、一時的に守秘義務を解除する。報告を続けてくれ」
すると、狭間はさっきまで横一文字にしていた口を開き、話し始める。
「我々、狭間、霧咲の両名は防衛省と文科省、経産省の合同で極秘裏に進めていた資源調査計画の責任者です」
その発言を聞き、石黒大臣は驚いた様子で、佐伯と長井、そしてテーブルの一番端に座っていた、鈴木信治文部科学大臣を見回す。
「そ、そんなこと報告書にはなかったじゃないか……」
ここで石黒は、先程の霧咲という名前に覚えを感じた。霧咲? 聞き覚えが……
見ていた大内総理は石黒に訳を話す。
「ごめんね石黒君、内容が内容だけにあまり公言出来なくてね。新たな未知のエネルギーを調査してるなんて言ったら、周辺国、まして彼の国が黙っちゃいないでしょ」
「資源に乏しい我が国は、誰よりも早くそのエネルギーを獲得しなきゃいけなかったわけ。だから一部の人間以外には秘密にしてたのよ」
呆気にとられている様子の大友達彦外務大臣、石黒大臣や他の出席者をよそに総理は続ける。
「ま、この計画が原因であるかどうかも詳しくはわかっていないから、取り敢えず置いといて、今は目前の問題に対処しないと。彼らに敵意があり、このまま上陸を止めないのなら、自衛隊を出動させるしかないと思うのだけど」
副総理兼内閣官房長官の清水が横から発言する。
「しかし、まずは状況を確認しないことには始まりません。自衛隊のヘリを現地に派遣してはどうでしょう?」
こうなる状況を予測し、事前に部隊に命令を出しておいた佐伯が答える。
「現在、立川から推進させた映伝機が滝ヶ原で待機中です。総理のご命令でいつでも飛べます」
「よし、大至急、ヘリを現地に派遣して!」
二つ返事で、受けた命令をすぐに、佐伯の後席の富樫隆一、統合幕僚長に伝える。命令を受け、富樫は部隊に連絡するため早足で会議室を退室していった。
総理の横にいた清水が新たな話題を出す。
「総理、緊急の記者会見はどうしましょう?」
数秒考えてから、大内は答える。
「記者会見は情報がある程度確認出来てから行おうかと思ってます。第一、今はまだ何も分かっていないし、未確認の情報で国民の不安感を煽りたくはないので。国連への報告も事情がある程度判明してからで良いでしょう」
それを聞いた清水は自分も同意見であることを伝えた。
「では、緊急の閣僚協議は以上として、これより先は安全保障会議に移行して話し合いましょう。閣僚の出席者はこのまま参加をお願いします。全員のお知恵を貸して頂きたい。そして、これからは全員で情報共有していきたいと思いますので」
そう言い終わり、総理が席を立つと同時に大会議室の全員が起立し、早足で退室していく総理を見送った。総理が退室してすぐ、また若い秘書官が入室してきた。
「閣僚応接室にお茶の用意をしてあるので、次の会議までそちらでお寛ぎ下さい」
その言葉を聞き、集まっていた各大臣は移動を始める。その中に石黒大臣を見つけた佐伯は、隠し事をしていたことを詫び、今後の予感を独り言のようにつぶやいた。
「……どうやら、今夜は霞が関の一番長い夜になりそうですね」
「ええ、今日は家内と久しぶりに食事に行く予定だったのですが、それも行けなくなりそうです……」
そう言うと、二人は、既に誰もいなくなった会議室を後にした。
――
弓ヶ浜バリケード
22時を過ぎ、闇が深まる南伊豆町、しかし、夜が更けていくのに反し、町内は消防車のサイレンや緊急車両の赤色灯が溢れ、まるでお祭りのような様相を見せていた。
夜なのに、不自然に明るく喧騒に包まれた弓ヶ浜交番の近くの道路から、赤色灯を点灯させながら、先頭に灰色のランドクルーザー、その後ろに、機動隊がよく使う、青白の人員輸送車の順で弓ヶ浜沿岸道路に車両が入ってくる。
灰色の覆面ランドクルーザーの車内は、運転席に望月、助手席には高橋が座っており、高橋は腰につけた携帯型無線機で、本部に現場に到着したことを伝えている途中であった。
「……下田125より下田本部……」
数秒経ってから、下田警察署からの返答があった。
「……下田本部より下田125どうぞ……」
車載無線機からバネ状のコードを伸ばし、マイクを口元に引き寄せる。
「下田125、弓ヶ浜PB現着……」
「下田本部、了解」
「以上、下田125」
本部との交信が終わる頃には、望月が弓ヶ浜交番前に並べられた車両の間に、車を止めていた。
遅れて、後ろの人員輸送車もスペースを見つけて、車を停止させたようだった。
高橋がそれを確認し、ヘルメットを手に持ち、車のドアを開けると、目の前に30代手前らしき警官が出迎えた。
警官は自分の前まで来ると、姿勢を正し敬礼する。
「下田警察署地域課、弓ヶ浜交番駐在官、後藤巡査です! 増援に感謝いたします!」
高橋は報告を聞き、ヘルメットを脇に抱えながら敬礼を返す。
「これまでのバリケード構築作業ご苦労様でした。到着遅れて申し訳ありません。下田警察署警備課警備係長の高橋です」
「同じく、警備係の望月です」
車のエンジンを停止させ、高橋の横で待機していた望月も敬礼して名乗った。
高橋は左に、3列の縦陣でまっすぐこちらに向かってくる船団を見ながら話す。
「目の前の不審船団の速度を見る限り、もう15分と猶予はないでしょう。これからは我々警備課がこちらの警備を仕切らせて頂きます」
高橋の車両より後方に車を止めた、残りの隊員10名が高橋の周囲に集まる。皆、高橋や望月と同じように制服に防弾ベストを身に着け、革ベルトには通常の装具に加え、ニューナンブ用の丸い革製予備弾納を複数つけ、頭部は白いヘルメットで保護していた。後藤はその姿を見て、自身の心に若干の希望が生まれるのを感じていた。
「了解しました! 高橋警部補、私は何をすれば?」
高橋が後藤の装備をまじまじと見つめる。
「後藤巡査、まず防弾衣にヘルメット、予備弾の装着をお願いします」
一通りのバリケード構築作業を終え、戻ってきた輪島と他の消防団員7名は、目の前に並ぶ、機動隊のような格好をした警官隊を見て驚く。
輪島と他の団員を見つけた高橋は、輪島に近づき、敬礼をすると、名前とこれからの行動を指示した。
「では、輪島さん達も防弾衣を身に着けてください。大楯も多めに持ってきたので足りると思うんですが……」
それを聞くと、輪島は手に持っていた消防団のヘルメットを被りながら口を開く。
「いや、お気持ちは嬉しいが大楯はいらねぇ。うちらはこれが商売道具なんでね」
と、背後のポンプ車を背中で指差しながら答える。
「チョッキだけこいつらに着せてやってくれねぇか?」
佐竹ら部下に目線をやり、高橋に言う。
「分かりました」
そう言うと、高橋は部下に指示を出し、人員輸送車の中から防弾衣と大楯、覆面ランドクルーザーから鍵の掛かった予備弾の木箱を運ばせた。
「急げ! 全て人員輸送車の前に並べろ!」
高橋は指示を出すと後藤と輪島らに向き直る。
「では、二人共、輸送車の前で装備を受領してください。受領したら急いで迎撃態勢を取ってください。あとは私が状況を見て指示を出します」
後藤と輪島らは返事をするとすぐに、他の警官らが装備を運び出している人員輸送車に急いだ。
――
南伊豆町近海 巡視船「しきね」
南伊豆町から北東方向のそう遠くない場所にある、海上保安庁下田海上保安部から、突然の管区本部運用指令センターからの緊急出動命令を受け、巡視船「しきね(PL66)」、巡視艇「いずなみ(PC107)」の2隻の船舶が現場海域に急行しているところだった。
先頭を全速力で航行しているのは、はてるま型巡視船「しきね」である。この、排水量1000トンをこす全長89メートルの巡視船は、先代のしれとこ型巡視船しきね(PL109)から改装され、ヘリテレや船テレのようなC4Iシステムなどの最新装備を身につけて、拠点機能強化型巡視船として、平成28年の10月に下田海上保安部に戻ってきたばかりである。
乗員は30名で、推進部には4基のディーゼルエンジンとウォータージェット推進器を4軸搭載し、最大速力は30ノット(56キロ)以上、後部甲板には、7m型の高速複合警備艇(RHIBまたはGB)を3艇搭載している。また、搭載兵器は、毎分2万リットルの放水量を持つ、船首についている遠隔操作型放水砲の他、射撃管制装置(FCS)とリンクした30mm単装機銃(Mk44ブッシュマスターⅡ)を搭載し、光学機器は、赤外線捜索監視装置及び遠隔監視採証装置がついており、闇夜の中でも目標を視認し、FCSによって寸分違わず正確に射撃する能力を持っている。
そんな、武装した不審船団の上陸妨害を命ぜられた、準臨戦態勢のしきねの操舵室では、藍色の作業服に紺色の救命胴衣、頭には灰色の防弾ヘルメットを装備した航海科の職員が操舵及び、水上レーダー、双眼鏡による見張りを担当し、緊張した顔つきで周辺に目を光らせていた。
船の全業務を統括する、副長蒹業務管理官の青葉和正三等海上保安監は自身も双眼鏡で、南伊豆町近海に三列縦陣で近づく船団とそれに乗船している騎士や歩兵、加えて、ローブを着て杖のような物を持った人間を捉えていた。
双眼鏡を目から外しながら青葉は、船長である竹本洋一二等海上保安監に首を向ける。
「船長、どうやら運指(管区本部運用指令センター)が言っていた事は本当のようですね。航路警戒が今日で終わって、横須賀からの帰り道で状況を聞いた時は冗談にしか聞こえませんでしたが、目の前の状況を目の当たりにしたら信じる他ありませんよ」
腕を組みながら、瞬きもせずに前方を見つめている竹本が口を開く。
「ああ、そうだな。だが、幸か不幸か、横須賀での資材積み込みが遅れたせいで、我々がこの海域に一番乗りできた。おかげで、浜でバリケードを作っている警察の援護が出来そうだ」
再び青葉は双眼鏡を覗き、今度は弓ヶ浜の方を確認する。沿岸道路に沿うような形で車両が複数置かれており、その影では十数人の大楯を持った警官隊が忙しなく動き、地元消防団はポンプ車からホースを伸ばして、近くの消火栓に繋いでいるようだった。
「彼らも、数百の敵を目前にしながら懸命にやっている。我々も使命を果たさねばなりません」
その言葉を聞き、船長が静かに頷く。確かに、今は我々しかいないのだ。横浜管区本部からの特警隊の到着は時間がかり期待できない。
その時、隣にいた水上レーダーの監視員が告げる。
「船長、間もなく帆船団の右舷に接近します!」
それを聞き竹本が指示を出す。
「汽笛を鳴らせ、L旗も揚げろ」 ※L旗(国際信号旗、停船せよの意)
その命令と共に、黄色と黒の旗が艦橋の掲揚塔に揚がり、甲高い汽笛が夜の太平洋に響き渡った――