表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/29

黄泉平坂を越えて④

 

 弓ヶ浜駐在所 裏通り


 生け垣のある僅か3メートル幅の狭い道を全力で走る面々。その先頭では、杉崎以外の突入支援1班が先行し、真ん中には消防団員と警官隊、最後尾では突入支援2班及び狙撃班、そして杉崎が殿を務める隊形で撤退していた。


 深夜の暗がりの中、数十メートルおきに設置された街灯と僅かな月明かりを頼りに、全力で走る隊員達。前方では、SRPの隊員達が銃に装備されたフラッシュライトを前や左右に指向しながら、絶えず撤収経路の警戒を行う。隊列の中間では警官隊がニューナンブを片手に走っており何時でも応戦する用意を感じ取る事が出来た。


 一方で消防団の面々は、中年以上の割合が多く普段も消防団業務とは別の仕事をしている事と日頃の運動不足が祟ったのか、逃げる事で精一杯な様子であった。


 後方では、杉崎を含めたSRPの隊員達が交代しながら、後方への警戒を継続したまま撤退を行っていた。


 もう100メートル以上は移動したのだろうか。後方に据銃しながら既に通り過ぎた右手にそびえる津波避難塔を見やり、ふと杉崎は思う。普段は、300メートルなど装備を付けた状態でも全力で走れば1分も掛からない距離だ。だが、極度の緊張状態でかつ追撃者からの撤退戦を演じるだけで、かなりの体力を奪われ、時間もこんなにも掛かるとは思わなかった。


 杉崎は、十数メートル先で街灯がチカチカと照らす、薄暗いカーブの頂点をダットサイトで覗きながら息を整える。


 その時、後方からドタバタとアスファルトを叩きつけるような音が複数響いてくる。音から察するに敵は複数、そしてかなり高速で近づいて来ている事が予想された。杉崎は直ぐに、その場で警戒を行っていた5名に迎撃態勢を取るように命じる。


「敵が来るぞ! 迎撃準備!」


「了解!」


 杉崎の号令により、井出などその場にいた5名が前方の途切れたカーブに照準を合わせた。


 徐々に足音が大きくなる。その中にバタバタとした足音以外にも、振動と共に重量感のある足音も混ざり始める。切れかけの街灯がひと際点滅を繰り返す。そして、街灯が一瞬だけ消え元に戻った時、そこには先程の赤い蜥蜴が3匹居り、アスファルトをガシガシと踏み付けながら、こちらに一直線に飛び込んでくる所だった。


 直ぐに射撃を命じる杉崎。中間姿勢のまま銃を構えた5人の正面に閃光が走る。


 近距離でフルオート射撃を行ったMP5Fからは眩い閃光が放たれ、曳光弾が暗闇を切り裂きながら、蜥蜴と騎手を貫いて行く。狙撃銃を背負った狙撃手もM3913拳銃を構えながら援護射撃を行う。


 赤い蜥蜴とその騎手達は、狭い路地の為に満足に動く事が出来ず、近距離から苛烈な銃撃を受け、悲鳴を上げながら路地に屍を晒した。


 先陣を切って襲撃して来た蜥蜴の殲滅を確認し、杉崎は直ぐに隊員達に次のポイントまで前進を命じる。


 立ち上がった隊員達は全力で船着き場方面に走る。途中の路地で、銃を構えて迎撃態勢を取る交替のグループを通過し、その少し先で再び膝を折り迎撃準備を整える。


 暫くして、前方のグループが、続けて追撃して来た緑鬼の集団及び4匹の蜥蜴と戦闘を開始する。


 あちらのグループも、狭い路地を密集して追撃して来る部隊に対して、火力と地形的優越を活かして圧倒する。敵集団が一時的に途切れ、銃声が止んだタイミングで前方のグループも移動を開始し、自分達を通過して、その少し先の船着き場入り口付近にて迎撃態勢を取った。


 続いて追撃して来た集団は騎馬隊の生き残りであった。槍を持ったまま狭い路地を駆け抜ける騎馬隊、彼我の距離がおよそ30メートルに迫ったタイミングで彼らは槍の投擲動作を見せる。しかし、槍がその手から放たれる事は無く、革鎧を鉛で撃ち抜かれた騎馬兵達は口から血を吐きながら馬上で絶命した。その後、転落し騎馬に踏み付けられる騎手、それに足を取られた騎馬は狭い通路を塞ぐように転倒した。


 杉崎はこちらの攻撃により意図せずも追撃隊の進路を塞いだ事を確認し、直ぐに隊員に移動を命ずる。前方には既に船着き場が見えている。そして、もう既に先頭集団は船着き場に到着している頃だろう。人生で一番長い300メートル走のゴールを見据えながら、杉崎はそんな事を考えていた。


 その時、左より凄まじい音が聞こえ顔を向ける。その瞬間、高速で飛来する無数の瓦礫に包まれ視界が漆黒に塗り潰された――。


 ――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ