再会
扉を抜けると、そこは岩に囲まれた洞窟の中だった。
「しまった…。ダンジョンに出てくるタイプだったか……ん?手がおかしくないか?」
手がいつもよりシワシワなうえ、黒っぽい。俺は思わず顔をペタペタと触った。ところが、どうもいつもの感じと違う。はっ、と自分の体を見下ろすと黒っぽくて極細な自分の四肢と胴体が見える。
俺は慌てて「ステータス!」と叫んだ。すると、さっき決めたステータスと大体同じだが、名前がフルネームから「カイト」に、種族の欄がランダムから下等悪魔に、レベルが0から1/10に変わっていた。スキルの欄には扉を選んだ時の三つの特典が増えている。
「うわぁ、人外転生かよ…。まぁ、ゴブリンとかじゃないだけマシだし、レベル上限があるってことは…進化もあるか?」
少しずつ落ち着きを取り戻し、あたりを見渡すと地面に腕輪と指輪が落ちていることに気づいた。
「ん?いきなりアイテムか?なんだ?」
俺は早速鑑定スキルを使ってみた。しかし、測定不能と出るだけで全くわからない。
「おいおいおい。もしかして伝説級のアイテムとかじゃねぇのか?まぁ、付けてみるか。」
幸先いいなぁと思いながら指輪を指にはめてみると脳内に何やら声が響いてきた。
(伝説の指輪だと思った?残念、蒼太さんでしたー!わっ、待って待って!僕が悪かったから地面に叩きつけようとしないでっ!)
「蒼太だと?お前もしかして浦中蒼太か?」
(へ?もしかして、海翔?海翔なの?)
「おう俺は海翔だ。そうか、お前も来てたのか。」
(ということはあの腕輪は……)
「雄岐だろうな。」
俺は腕輪を拾って腕にはめた。
(やっと拾ったか…)
「さっきの話、聞こえてたか?」
(あぁ。お前が海翔で指輪が蒼太なんだろう。)
(二人はどうやってここに来たの?)
「俺は勉強机の引き出しを開けたら白い空間に連れていかれて、ポイント割り振って、"難"って書かれた扉を開けたらここだった。」
(俺もそんな感じだ。)
(僕もそうだよ。)
「…一つ、聞きたいんだが。」
(うん。僕も一つ疑問なことがあるんだ。)
(奇遇だな。俺もだ。)
「なんでお前ら指輪と腕輪なんだよ……」
(僕が聞きたいよ!)
(恐らくだが、種族選択の時にランダムを選択したからだろうな。)
(ランダムすぎる⁈無機物も候補に入るなんて聞いてないよっ!)
「こんな状況でもツッコミを忘れないとは……お前だけ職業選択でもあったのか?」
(それ、僕が旅芸人だって言いたいの⁈)
(そんなことより、ここはどこなんだ?)
「多分ダンジョンの中だろうな。」
(人外転生の基本だよね。)
「ん?何か向こうから来るな……なんでこんなことわかるんだ?」
(恐らく俺の探知のスキルのおかげだろう。)
(なるほど。僕たちはアイテムに転生したから僕たちのスキルが装備した海翔に追加されてるんだよ。)
「なら、確認してみるか。ステータスっ!」
(…なんで叫ぶの?)
「かっこいいだろ?」
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カイト(17)
種族:下等悪魔
Lv.1/10・1・1
HP:458/458(123+92+243)
MP:91/91(24+67+0)
物理攻撃力:191(63+31+97)
物理防御力:227(57+39+131)
魔法攻撃力:165(60+105+0)
魔法防御力:244(60+82+102)
素早さ :154(63+64+27)
スキル
剣術Lv.5
盾術Lv.5
体術Lv.5
火魔法Lv.3
水魔法Lv.3
風魔法Lv.3
土魔法Lv.3
光魔法Lv.3
闇魔法Lv.3
付与魔法Lv.3
無限倉庫Lv.4
鑑定Lv.4
探知Lv.3
鉄壁Lv.2
見切りLv.2
直感Lv.1
状態異常耐性Lv.5
取得経験値八倍
取得SP八倍
上昇ステータス八倍
SP(120)
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(僕のステータスが真ん中だね。)
(俺は右だな。)
「で、俺は左ってわけか。」
(扉のところで貰ったスキルはまとめられているな。)
「SPは被ったスキルのところが還元されてる感じだな。」
(このSPを使い切ってから指輪とか腕輪を外したらどうなるの?)
「わかんねぇな…ん?いや、これ……外れねぇ…」
((は?))
「((・・・))」
「お前ら外れろよっ!なんだ?呪われた装備なのか?装備して城に戻ったら追い返されるのか⁉︎」
(失礼なっ!僕たちだって外れたくなくて外れないわけじゃ無いんだぞ!)
(多分教会に行っても外してもらえないぞ?)
(そんな冗談言ってる場合じゃないでしょっ!)
「……冗談じゃねぇぞ…。」
(つまり…)
(俺たち…)
「(入れ替わってる⁈)」
(君の前前前…って違うよっ!この期に及んでどういう神経してるのさっ!)
「冗談だよ、冗談。」
(そうだぞ。)
(知ってるよ?それは、知ってるよ?)
「んんっ。それじゃあ改めて。」
(えぇ、改めるの?)
「……冗談じゃねぇぞ…」
(…はぁ。つまり…)
(俺たち…)
「((これから三位一体ってことかよっ!!!))」
「ギギャァッ!」
「あ、やべ。なんかいるの忘れてた。」
(ちょっ、とりあえず逃げてっ!)
(いや、ここはあえて迎え撃つに一票。)
「俺も賛成。じゃ、迎え撃つに決定な。」
(極めて民主的で平等な決定だな。)
(民主主義の闇だぁぁぁ……)