異世界へ
俺の名前は香羽海翔。俗に言うオタクだ。顔は整っている方だと思う。
「どうしたの?ぼーっとして。」
今話しかけてきたこいつは浦中蒼太。見た目ははっきり言ってあまりよろしくない。俺をオタクの道へ引きずり込んだ張本人で、俺たち三人の中では基本ツッコミ担当。
「感動で震えているのか?」
もう一人は金田雄岐。それはもうイケメンで、ゴリッゴリモテる。義理堅くていい奴。蒼太に勧められてオタク化が進みつつある。この二人とは幼稚園の時からの付き合いで、幼馴染というやつだ。そんな俺たち三人は高校からの帰り道、ある神社に寄っていた。
「いや、悪い悪い。だが、雄岐の言うこともあながち間違いじゃないかもな。」
「ついに…ついに僕たちはやったんだよね……」
「まだ最後の一回が残ってるけどな。」
「まぁ、終わりみたいなものじゃない。……辛かったよね。…ねぇ、でも本当に確かなの?」
「そうゆうこと言うか?ここまできて?表面だけじゃなくて内側までバグっちまったのか?」
「えぇ!どうゆうこと⁈」
「この神社に複数人で一カ月間毎日通い、同じお願いをし続ければその願いが叶う。俺の追っかけが言っていたからな。間違いないだろう。」
「その追っかけへの絶対的な信頼はなんなのさ……」
「今日で最後なんだ。お前ら、余計なこと考えんなよ?」
「勿論だよ。」
「任せておけ。」
「よし、じゃあいくぞっ!」
俺たちはこの一カ月で言い慣れてしまった言葉を声を揃えて叫んだ。
「「「異世界転移をさせてください!それが無理ならドラ○もんをください!!!」」」
「……何も起きないね。」
「異世界転移の線は消えたか……」
「と、いうことは……」
「あぁ、家に帰って確認だな。」
「「「きっと部屋にドラ○もんがっ!」」」
俺たちは期待を胸に各々の家に帰った。
「親父、お袋。ただいま。」
俺はリビングの奥の仏壇に向かってそう言った。俺の両親は俺が十三歳の時に交通事故で死んだ。あの時はショックだったが、俺よりも蒼太が大泣きしてて思わず笑ってしまった。
両親に帰宅を告げた後、俺は期待に胸を膨らませながら勢いよく自室のドアを開けた。すると……
ガタガタッ、ガタガタガタッ
俺の勉強机の引き出しがガタガタと動いているではないか!
「うおおおおおお!ドラ○もんきたぁぁぁぁ!」
そう叫んでしまった俺を誰も責められまい。人類の夢と希望を詰め込んだ狸的な猫型ロボットが目の前に現れようとしているのだ。
「よし、さよなら日常。こんにちわドラえ○んっ!」
俺は過去最高潮のテンションで勉強机の引き出しを開いた。そして、俺の視界は凄まじい光に覆われた。
思わず「目がっ、目がぁぁっ!」と叫びそうになったが何とか堪え、目を開く。すると、……何もなかった。
「は?」
絶句した。本当に何もかもが無くなっていた。見渡せばただただ真っ白で、足元にポツンと所在無さげにパソコンらしきものが置いてある。
「これは…なんだ?種族選択?……もしかして、ドラちゃんの登場シーンと異世界転移を混ぜちまったのか?えぇ…ド○えもん要素弱くね?」
そのパソコンの画面には種族選択という文字が浮かび上がっていた。マウスがなかったため、仕方なくタップしてみるといろいろな種族の名前が出てきた。
「人間、獣人、エルフ、ドワーフ、魔族、魔物、その他か。…種族でその他ってなんだよ……。神とか精霊とかそういう系か?……ん?」
俺はその他の下にも文字があることに気づいた。
「ランダムに決めるならSP二倍?なんだ?SPって。何かのポイントか?スキル、スペシャル、スーパー、いろいろ考えられるな…いや、そもそもポイントであってるのかどうかもわかんねぇ。でも、あって困るようなもんでもなさそうだな。……よし。男は度胸だ。ランダムでいくか。」
俺はランダムのところをタップした。すると次に、ずらずらっとステータスであろうものが出てきた。
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香羽海翔(17)
種族:ランダム
Lv.0
HP:0/0
MP:0/0
物理攻撃力:0
物理防御力:0
魔法攻撃力:0
魔法防御力:0
素早さ :0
スキル
SP(1000)
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「オールゼロっ⁉︎いや、SPがあるか。スペシャルポイントのことだったとは…いや、それならSPPじゃね?……まぁどうでもいいか。で、全部一から作り直しか。転移っていうよりは転生か?ステータスは1上げるごとに1ポイント、スキルはLv.1なら10ポイント、Lv.2なら30ポイント…いや、10+20ポイントって感じか?」
俺は悩みに悩んでこんな感じにした。
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香羽海翔(17)
種族:ランダム
Lv.0
HP:123/123
MP:24/24
物理攻撃力:63
物理防御力:57
魔法攻撃力:60
魔法防御力:60
素早さ :63
スキル
剣術Lv.5
体術Lv.5
火魔法Lv.2
光魔法Lv.3
鑑定Lv.4
見切りLv.2
状態異常耐性Lv.2
SP(0)
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「やっぱランダムにしといて良かったな。500じゃ足りなかった。」
俺がステータスを入力し終わると三つの扉が現れた。
「ん?難易度?"易"は何も無し。"普"は取得経験値倍増をプレゼント。"難"は取得経験値倍増と取得SP倍増、それに上昇ステータス倍増までつくと…。"難"だとどうなるんだ?いきなり敵対している種族の領地内に出るとかか?……"難"だな。」
俺は"難"と書かれた扉を開き、中へと入った。