プラチナのステータスプレート
そして、皆から託された相澤が出した答えは……
「無論です。 そのためにデルバードさんに付いて来ましたから。
そのご協力の要請を俺たち皆で手伝わせていただきます!」
そう清々しい顔ではっきりと言い張った。 (どや顔を勇気に向けていた。)
それにはクラスメイト達も同意見で口々に『そういうことです!』 と言っていた。
そんな光景を見たライオドアは頬が緩み「感謝するぞ。」 と言っている。
未だにどや顔を向けられている勇気はそんなことを気にせずに、デルバードに小声で
「ステータスってどうやったら判るんですか?」
と聞いた。 それを聞いたデルバードは『ちょっと待ってろ』と言いたげな顔をして
ライオドアの傍に行き改めて跪いて
「ライオドア陛下、折り入って頼みたいことがございます。」
「なんだ、ゆうてみぃ。 大体の事なら叶えてやるぞ。」
「そのお言葉感謝です。 頼みたいことなのですが、この異世界人達にプラチナのステ
ータスプレートを授けてやって貰えないでしょうか?」
そうデルバードが言うと、‛‛プラチナのステータスプレート''と聞くと周りの兵士たちは
ざわっと 騒めき始めた。
「おいおい、プラチナのステータスプレートって貴族様以上の階級にしか配布されないと
言われている…」
「あれを持っているだけで検問素通、そして何かあれば王国を盾代わりに使える代物……」
「あんな異世界人共に……プラチナのステータスプレートなど……」
兵士たちの言葉を聞いていると、どうやらプラチナのステータスプレートは相当な品物
らしく、そう簡単に手に入る物では無さそうだ。 多分デルバード達勇者が持っている
ステータスプレートはプラチナかもしれないが、ライオドアとは出会ってまだ間もない
異世界人にそう簡単に渡せるはずがない……が
「はははっ! 私は初めからそうする気だった。 これから取りに行くとでもするか……
貴殿たちも私の城へ案内してやる」
笑いながらデルバードに言う。 デルバードは『有難きお言葉……』 と言い勇気たちの
方向へ向かってきた。 そして
「ライオドア陛下の城へ向かいます。 私の後に付いて来てください。」
と『やってやりましたよ』感を出して言っていた。 その事に気が付いた生徒は
(((((いや、初めから配るつもりだったやん))))) と心の中で突っ込み苦笑いして
付いて行く事にした。
歩いていると、周りの家はフランスの町並みで(誰も行ったことがない)、とても
異世界とは思えないほどだった。 けれども、クラスメイトの周りを取り囲んで警備を
している兵士たちを見たら『やっぱり異世界だな~』 と思ってしまう。
そんな事に苦笑いをする。
警備の人たちからは先程の件で何やら殺気みたいなの
を出しているが、それは無視することにしているクラスメイト達。
そんな殺気に気づかずイチャイチャしている信樹と葵。 『リア充は爆発するべき。』 と
言う周りの視線を当てられているがそれに気づかずスルー。 それに勇気は(流石バカップル
……) と心の中で思っていることは秘密。
勇気たちは様々な事を見たり、思ったり……やがてライオドアの城に着いた。
城はとてもじゃない程に大きく、警備もばっちりだ。
城の壁には返しが取り付けられていて、その壁のすぐ前には深い淵がある。
そんな本当の意味で警備は万全だ。
ライオドアが戻ると、今まで無かったはずの石橋が一瞬の内にして生成されており『流石は
異世界。 なんでもありだな!』 と思うクラスメイト。
MMORPG好きの勇気でさえ度肝を抜かれていた。 まさか現実で異世界召喚をされるなど
夢にも思ってはいなかったし、こんな現実味の無い魔法を見せられると興奮をせざるを得ない。
やっぱりそんな光景を見ていると、ゲーム好きの本能が疼く。
ライオドアは黙々と歩いて城へと入っていった。
それに便乗して付いて行く。 勿論、勇気たちのみでは城の中へ入ることなど不可能だ。
城の中に入ると、大きな絵画や肖像画などが沢山飾られていて、日本人からしたら金持の
家の様だった。 けれどもここは異世界。 ましてや王国の国王様の城なのだ。
そんな事実が信じられるだろうか? いや、実際に異世界転生をされていない人なら『あー
あれね。 あのよくアニメ、ゲーム、ラノベに出てくる異世界召喚ってやつでしょ? そんなの
現実で起こるわけないじゃんwwwwwww』 と笑いながら言われるだろう。
『だが、そんなことが実際にある。 今ここで実際に起こってますよ! 』そんな風に言いたそう
な勇気を横目に相澤は(ちっ…… なんだよ、この糞がぁ! この俺よりも目立ちやがって……後で
絶対に後悔させてやるからな。) と思っていた。 けれどもそんな事は勇気には露知らず……
あれこれしていると、既に玉座にライオドアは腰を下ろしていた。 そして……
「あれも持ってこい!」
そんな風に言うと、一人の老人が布を大事そうに持ちながらライオドアの目の前
まで歩いて行った。
老人は被せてあった布を取ると、そこにはプラチナのカードが沢山積まれていた。
多分先ほど言っていたプラチナのステータスプレートだろう。
老人はライオドアに渡すとその場を直ぐに離れた。
そうして、ライオドアはステータスプレートについて語っていた。
「貴殿たち、このステータスカードはな……」
それを要約するとこうだ。
このステータスカードには身分証明書の代わりにもなり、日本で言うクレジットカード
にもなるらしい。 その上、貴族とか高貴の人たちしか泊まれない宿を無償で借りれ、
何か問題が起きた場合は国王が肩を持つ。 そういうカードらしい。
説明が終わるとステータスプレートが配られたが、何をしたらいいのか判らない
クラスメイト達。 ステータスプレートには何の文字も書かれてはいなく、ただのプラチナ
だった。 やがてクラス中が口々に『どうするのこれ?』 と言い出していた。
それを説明してくれたのはデルバードだった。
「このステータスカードには針のように尖った場所がありますのでそこで、‛‛自分の指''を刺して
下さい。 そうするとステータスが表示されて所有者しか使えなくなります。」
「「「「「「「「・・・・・・はぁ?」」」」」」」」
針で自分の指を‛‛刺せ''そんな事を言われて直ぐに実行するものがいるのだろうか?
けれども、そんな中初めに針を指に刺したのは……相澤だった。
相澤は『オタク如きに見せ場を奪われてたまるか!』と小声で言って、たかがオタクに勝ち
たいが為だけに真っ先に行動を起こしている。 唯それだけだ。
すると、針に血が伝わっていき、ステータスプレートに注ぎ込まれていくと、いつの間にか
ステータスプレートにあった針が平らになって、光った文字が浮かび上がってきた。
クラスメイト達は相澤の傍に寄ってきてステータスプレートを見た。
=========================================
名前・相澤 隆俊 種族・人間 年齢・18 性別・男 レベル・1
職業 ・勇者
筋力 ・1500
体力 ・1500
魔力 ・1500
俊敏性・200
耐性力・500
精神力・100
スキル・暗視、身体強化、成長力促進、言語理解、気配察知
剣術、全属性適正、全属性耐性・魔力感知
=========================================
それを勇気も見ていたが、成長力促進はいわゆるチート能力だ。
「流石異世界人……僕と同じ勇者の職業でも、ここまでの差が開くとは思いませんでした…」
「デルバードさんはどんな感じだったんですか?」
「いや~、お恥ずかしながらオール300でした。 スキルもここまでありませんでしたし…」
「そうなんですね……」
流石に自分の能力がチートの上、チートのスペックと言うことを知った相澤は勇気に向けて
不適な笑みを浮かべて居た。 だが、見られている事にすら気が付いていない勇気は覚悟を
決めて、針に指を刺していた。
実際はそこまで深くは刺さることは無く、あまり痛みは無い。
すると、相澤と同じようにステータスプレートの針が無くなり、光の文字が浮かび上がって
来た。 その光はやがて消えていき、真っ黒な文字へと変換されていた。
=========================================
名前・片桐 勇気 種族・人間 年齢・18 性別・男 レベル・1
職業 ・
筋力 ・300
体力 ・500
魔力 ・1
俊敏性・3000
耐性力・100
精神力・500
スキル・全言語理解
=========================================
「ん? あれ可笑しいな? 魔力1......? 何も使えないよね?!」
と大声で言ってしまった。 デルバードは『何事か?!』 と勇気の元へ行っていた。
デルバードは、勇気のステータスプレートを見ると険しい表情を浮かべ……
「ま、まぁ、なんだ。 俊敏性が3000とはいい事じゃないか! あ、あと、理解系がすべて
付いているし…… 」
「あ、はい。 それで、職業の欄が……」
「……職業が無いってことですね…ですから戦闘には不向きなタイプかと…」
デルバードがそういうと、クラス中(信樹と葵以外) は大いに笑いだし、相澤が
「ははははは!!! 無能オタク! なんだそのステータスは! 盾役にも使えねぇ唯
のゴミ同然じゃねぇか! はははは!」
そう言っていた。 だが、葵が
「相澤ってほんと―にキモイよね。 自分がリーダーとか思っちゃって、マジ引く。
しかも性格が悪いし。」
「はぁ? なんだとゴラァ! やんのか?」
「別に構わないけど? 私に勝てるとでも?」
「まぁまぁ、二人ともそこまでにして……」
「はっ! そんなのやってみないと判んねぇだろ!」
と、二人で喧嘩を始めた。 葵はいつもストレートに物を言い、喧嘩沙汰が日常茶飯事だ。
喧嘩をデルバードは必至で止めてはいる物の、二人に威嚇をされ『あ、いえなんでも
ないです! 失礼しました!』 そう言い引っ込んでしまった。
そんな姿に情けないな。 と思うクラスメイト達。
ライオドアはと言うと、その喧嘩 を止めることなく、面白がってただただみている
だけだった。
二人の喧嘩は段々とヒートアップしていき、最後には相澤が『決闘だ!』 と大声で言い、
葵は『受けて立つわ!』 と挑戦を受けたが…… 二人の意識は糸が切れたように途絶え
その場に倒れてしまった。
クラス中は何が起きたのかは一切理解出来ていなく、唖然とした表情を浮かべながら
見る事しかできなかった。 そんな中、動いたのは葵の彼氏信樹だった。
信樹は葵の傍に一目散に向かい『大丈夫?!』 と言い、人工呼吸まで始めていた。
((((((((よし。 こっちは安全そうだな!))))))))
またしても、心がシンクロする3年1組。
すると、そこへ男女5人の人たちが来ていた。
その中の一人が魔法を発動していた。 多分それで葵と相澤を眠らせたのだろう。
「やぁやぁ! 君たちが異世界人かい??」
と明るい声を掛けてきたのはその男女5人の中の一人だった。
年齢は20台半ばだろうか? そんな20台半ばの男性がこちらに向かって歩いてきており、
当然『誰? あのひと?』 とクラスメイト達はそうなる。
男性は『失敬失敬!』 そう笑い交じりに言い放ち、
「僕の名前はエリオネル・ニコラード。 愛嬌を込めて‛‛エリオ''と呼んでくれたらうれしい。
そうじゃなくて……僕たちは全員‛‛勇者''。 デルバードと同じだよ。」
「言い忘れていましたね。 この世界は6人のパーティーで主に活動することが多いよ。
前衛2人、後衛が3名、支援役が1人と言う組み合わせで組んでいます。 大体はそれで
活動してもらうから、今すぐ組んで貰えると嬉しいな。」
デルバードがそう言うと、クラスメイト達は仲の良い友達同士とくっ付き、自然とクラスに
馴染んでいない者ははみ出される。 そうなって何とか班が出来た……
だが、うちのクラスは31名。 単純に計算すると31÷6で5あまり1。
そう。 余りが一人出てきてしまった。
それは、いつもながらに勇気が余っていた。
しかも今回は、勇気を入れてしまうと確実に‛‛お荷物''だ。 そんな勇気を入れたがる
グループはそうそうないだろう。 だから余るのは当然……では無かった。
「デルバードさん。 一人増えても構いませんよね?」
そう言ったのは今さっきまで意識が無かった相澤だった。
「まぁ、構いませんよ。 一人では何かと……無理ですからね。」
デルバードは奏多の出している 嫌々オーラ には全く以て気付いてはおらず、
すんなりと相澤の出した提案を了承して、勇気は相澤のグループに入る事となった……
勇気は無能でなんの役にも立たないのにチームに入れて貰っている。 そんな風に
デルバードには捉えている様で、そのことに文句を言う気も失せて来たので、
『まぁ、いいか……』と誰ともなしに呟いた。
そうして、今日はそこで解散となり、ライオドアの屋敷に一晩だけ客人としてもてなされる
事となった……