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無能転移~気が付けば世界最強~  作者: 石立 諷太
第一章
2/3

勇者に召喚されし者たち

 勇気は光が薄れていくと同時にゆっくりと目を開けていった。

目を開けて視力が完全に戻ると……


 そこはまるで遺跡のような建造物が沢山あった。

勇気だけではなく、クラスのみんなが呆然と立ち尽くしていた。


 そんな中こちらに向かってくる人影があった。

それに気づいた勇気は『誰だろう?』 と思っていて、よく見てみると…

鋼の鎧を身に纏い、剣を腰に提げている男騎士? が居た。

それを見た勇気は咄嗟に『う、うわぁぁぁ!!』 と言って後ろに尻もちを

ついていた。


 いきなり大きな声を聞いたクラスメイト達はその大声に驚いて勇気の方を振り向くと、

誰もが言葉を失った。


 それはそうだろう。 完全武装した男がこちらに向かって

歩いてきているのだから。


 完全武装をした男をクラスメイト達が目で確認すると、クラスに居たのにいきなり

目を開けると神殿にいるし、突然完全武装をした男がこちらに向かって歩いて

来ているしで、それだけで完全にパニック状態に陥っていた。


 パニック状態に陥ってるのにも関わらず、誰もその場を動こうとはしなかった。

いや、厳密に言うと‛‛あまりにもの恐怖で''誰も動くことが出来なかったのだ。


 逃げらない状態のまま‛‛その時''がやってきてしまった。

武装をした男に一番近かった勇気はと言うと(やられる・・・) と確信して、目を

瞑っていた。


 だが勇気とクラスメイト達の斜め上を行く予想外の展開が起きた。


「大丈夫かい? 君」


 そう優しく声を掛けてくれたのだった。

勇気は恐る恐る目を開けてみると、武装をした男は勇気に向かい手を差し伸べて

居て、心配そうな目をしていた。


 それを見た勇気は安全と言う保証はないけれども、何故か安堵してしまい

男の手を取って立ち上がっていた。

すると男は優しく笑いかけて


「えーと、いきなりですまないが、僕が君たちをここに召喚しました。」

「「「「「「「「はぁっ???!!」」」」」」」」


 突然そんなことを言われ、3-1のクラスの人たちが驚きの声を上げていた。

本当に、いきなりの『僕が君たちを‘‘召喚’’しました』 宣言をされ、驚いて

いた半面怒りも少しだけだが混じっていた。


 そして少しの間沈黙がそこ一帯を支配していた。

だが、そんな沈黙を破ったのはクラスメイトの中心核こと相澤 隆俊だった。


「ど、どうして召喚したんだよ?! と言うかどうやって召喚したんだよ! と言うか

お前誰だよ!」


 そんな風に疑問に思っていた事を怒鳴りながら質問しており、質問されている男は

『まぁまぁ(笑) 落ち着いて』 と言わんばかりに手を動かしており、相澤は はっ!

とした表情を浮かべて慌てて『すみません』 と言っていた。


 それを見た男は皆に『それじゃあ話しますが、立って話すのもなんなのでその場に

座ってもらって結構ですよ。』 それを言われると、クラスメイト達は互いに顔を

見合わせて、座っていった。


 皆が座ったのを確認するとその男はおもむろに話し始めた。


「まず僕は、‛‛勇者''のデルバード・ジュリオンです。」

「「「「「「「「はぁっ???!!!」」」」」」」」


 ‛‛勇者''と言う言葉を聞いた途端、またもや皆は驚きの声を上げていた。

それを静めるためにデルバードは『落ち着いて』 と手を動かしていた。


「それで、続きなんですけど…… 最近占い師の職業を持った人が、近々この世界に

破滅の危機が訪れる。 と言う神託を下したんです。 それによって国の民は混乱し、

今現在は他の勇者達がその事態の収拾を行っている真っ最中なんだよ。

そして、その事態の収拾を早く終わらそうと思ったら、召喚魔法に頼るしかなかった…

だから君たちが召喚されました…」

「「「「「「「「……」」」」」」」」

「そこで皆さんに折り入って頼みたいことがあります。 我ら勇者と共にそのその

来たるべき破滅の危機を救ってはもらえないだろうか? そして、今までの魔人との

戦いに終止符を……」


デルバードはそういう風に言っているが、誰も言葉を口にできない。

なぜなら、まだ現実味の少ない状況に理解が追い付いてはいないからだ。

そんな中、言葉を返したのは勇気だった。


「質問ですが、どうして召喚魔法に頼らなければならなかったのですか?」

「それはですね……異世界人は異様なステータスを誇っているからなんだ……」

「ですが、僕たちは今までの生活を唯のんびりと過ごしていた学生ですよ?

そんな学生風情に何ができると言うのですか……?」

「ガクセイ……? とは何の事だか判りませんが、この世界の人間じゃないですよね……?」

「はい。 僕たちは‘‘日本’’と言う国から来ました……」

「それなら大丈夫です。 後でステータスプレートを皆に配布するので、それを確認

して頂いて、戦闘向けの職業かそうではない職業かを確認できますので……」

「いえ、そういう問題ではなく……」

「で、ではどういう問題なのですか…?」

「取り合えず日本に帰して下さい……」

「……それは出来ません」

「「「「「「「「はぁっ???!!!」」」」」」」


 皆は同じ驚き方をしていた。 これで三回目だ。 だが、そんな事は気にせずに

勇気は喋っていた。


「ど、どうしてですか……」

「残念ながら……一度召喚してしまった異世界人は二度と帰れないんだよ……」

「何を根拠に言ってるんだ?」


 そう口を挟んできたのは相澤だった。 相澤はようやく自分の置かれている状況を

理解し、勇気とデルバードの会話に割ってきたのだった。


「初めに召喚されたのがおよそ500年前……それはこの世界初の勇者とも言える。

誰が召喚したのかは結局判らなかったらしいけど、その勇者は自分の星に戻りたい。

と連呼してたらしいんだ……だけど、その夢は叶わずこの世界で死を遂げた……

これが周りに召喚魔法が知られた事件だよ……」


 勢いよく話してた相澤だったが、その事実を目の前に突き出されどうしようも無かった…

そんな勢いをすぐに失ってしまった相澤だったが、勇気がフォローを入れるかの

ように


「帰れる方法は‘‛絶対'’無い、とは言い切れません……よね?」

「確かに……絶対とは言い切れないですが……」

「その言葉を聞けて安心したぜ……」


 とまたもや相澤は口を挟んできて、どうやら『俺が主役だ!』と言わんばかりに

主張している……


「それじゃあ!」

「あぁ! 俺はあなた達勇者の手伝いをする……」

「ありがとうございます!」

「それで? お前たちはどうすんの?」


 相澤はクラスメイトの方向を向いて皆に質問をしていた。

クラスメイト達は少し悩んでいたが、現状で帰れる方法が無いのならこの話に乗るしか

無いと思い『俺も!(私も!)』 と結局はクラスの全員が同意した。


 そんな光景を見ているデルバードは歓喜の声を上げて、ウルウルと目には涙を

浮かべて居た。


それをみた相澤は


「泣かないで下さい。 僕たちは当然のことをしたまでです。」

「ありがとうございます……」


 デルバードは徐に立ち上がり『付いて来てください。』と言って歩き出した。

クラスの皆は顔を合わせつつも、付いて行く事にした。



 デルバードの後を付いて行きながらも、皆は‛‛やっぱり信じられない''そんな顔をしな

がら歩いていた。


 勇気は周りの風景に少し興奮気味だった。

なぜなら、周りの風景はとても2次元その物で、ゲーム好きやアニメ好きからしたら

夢のまた夢の世界のようだから。


 そんな風に浮かれていると、えいっ! と言う掛け後と同時に勇気の後頭部を

衝撃が走った。


「っっ?!」


 勇気は後ろを振り向くと、そこには幼稚園の頃からの幼馴染の神崎(かんざき) (あおい)

と葵の彼氏の金沢(かなざわ) 信樹(のぶき) の姿があった。


 葵は少しヤンチャな性格だが容姿端麗で、頭も良くとてもモテていた。

信樹も信樹で勉強は優秀、スポーツ万能。 羨ましすぎだろ! と勇気は思っている。

そういつも言っているのだが、信樹には嫌味にしか聞こえないらしく……⦅それはそうだろ

う。 勇気はスポーツ万能、勉強はいつもトップ。 おまけに美青年と来た。 こんな

チートなスペックを持った人間が居て良いのだろうか? 断じて否!⦆


 そんな事をいつも考えている信明は、それほどハイスペックな勇気に言われると

自分がみじめに見えてくるらしく、とても嫌らしいが……当事者の勇気の方は

自分でそこまでのハイスペックとは理解しておらず、なんか、とても持て余して

いる感が凄かった。


「どうしたの葵? いきなりチョップしてきて」

「えへへ~ さっき、皆が理解できずに沈黙してた中、勇気だけが一人でデルバードさん

と話し合っている姿かっこよかったよ♪」

「そ、そうだな! 凄いよな勇気って。」

「そんな事はないよ……」

「でも、私の一番カッコいいは信明だからね!」 チュ!

「俺もだよ//////」チュ!


 と信明と葵は甘いキスをしていて、見ている勇気は

(リア充は爆発するべし…… リア充は…何を考えているんだ?! 僕は……)

そんな風に自分の心で思ったことを頭の中から掻き消して、その何とも入りずらい

光景を苦笑いして見ていた。


 それを見ていた相澤のグループは


「あいつ、マジで最近調子乗ってるよな。」

「そうだよね~ さっきだって隆俊の出番邪魔してたしね~! マジオタクの癖に

マジキモイんですけど~!」

「「「それな」」」


 これはこれで何気に盛り上がっていた。 勿論勇気には聞こえているはずもなく、

イチャイチャしているところを間近で見ている勇気だった……





 歩いて1時間程立つとデルバードは徐に振り返り


「もうそろそろ帝都が見えてきますよ~」


 と言う風に皆に言っていた。 でも、流石にこんな凸凹した道を1時間も歩いていると

とても疲れてきており『足が痛くなってきた~』『もう歩きたくない……』などと言う

ヘタレが出てきていた。


 それでもデルバードは『もう少しだから頑張って』 と何度も繰り返して居たが、

その場に座る者も多く出てきており『仕方ないです……10分程休憩していきますか…」

とどこか悲しそうな言い方で言っていた。 それには皆も少し、もといほんの少し悪い

と思い初めに座りだした人が、『休憩は8分で大丈夫です』 と言った。

だが、その場にいるものは心がシンクロしていた。

((((((((2分短くなっただけじゃないか!!!!!))))))))と……


 それでも、デルバードは『ありがとう。 じゃあ、8分後に出発するね。』 と

少しうれしそうな顔をしており((((((2分ってそんなに変わるのか?!))))))))

とまたもや皆の心はシンクロしていた。



 そしてなんやかんやしていると8分はあっという間に過ぎて、残りの道を歩く事に

なった。 デルバードはもうすぐだとは言っているが全然建物があるようには見えない。

それが気になった相澤は


「建物見えないんですけど、いつつくんですかね?」

「もう着いたよ。」


 デルバードはそんな風に言ったが、周りに建物は一切見受けられず、そこには先程

のような遺跡だけしか無かった……

そんな出鱈目を言われたクラスメイト達の一部は怒りが込み上げてき、


「「「「「「「「なんも無いじゃねぇーか!(なんもありません!)」」」」」」」」


 一部とは言っても大勢のクラスメイト達の怒りがデルバードに向けられていた。

だが、そんな怒りを物ともせずに雄弁を振るっていた。


「いえいえ。 ここは古代魔法で作られている転移用魔法陣が組み込まれているので、

ここに入ると転移することが出来ます。 ですが、ここから先は帝国領内部……

くれぐれも粗相のないように願います……」

「「「「「「「「判りました。」」」」」」」」


 皆はどこか安心したような表情を浮かべ、先程急に怒ってしまったのを反省している

クラスメイト達。 そしてその魔方陣にクラスメイト全員が入ると、『それでは!』

とデルバードが言った瞬間に、一瞬で街中へと転移していた。


 この光景には口を半開きにして唖然とするクラスメイト達。

勇気は『この展開きたぁ!!!!』 と目で物を語っているようで、とても嬉しそうに

しているのが傍から見るとまる判りだ……


 そして、転移した先にはデルバードの様な武装をした集団が整列しており

『『『デルバード様が異世界人を連れて御帰還されましたぁ!』』』 と大声で皆に

聞こえるように喋っており、その真正面には30代くらいで王冠を頭に乗せていて、

如何にも国王らしき人が仁王立ちしていた。


 その国王らしき人を見たデルバードは跪き


「ライオドア陛下、只今異世界人達を連れて参りました。」


 そう言ったので、クラスメイト達は‛‛取り合えず''デルバードと同じく跪き、その場

を凌ごうと全員が思っていた……


「はははっ! よせ、皆の者。 顔を表に上げよ。 私たちが勝手に呼んでおいてそ

の礼儀は変と言うものだろう?」


 と言われるがまま跪いていたクラスメイト達は顔を表に上げていた。

国王が全員顔を上げたのを確認すると同時に


「そして、私がナハール帝国国王ライオドア・オーガス・ジェフレッドだ。

君たちの名前も聞かせてもらってもいいか?」


 そうして、一人一人が名前を教えていった。

全員の名前を聞き終わるまでライオドアは真剣に一人一人の名前を聞いて覚えようと

しており、皆は『良い国王様だな~』 と心の中で思い始めていた。


 

 全員の名前を聞き終わると、ライオドアは『貴殿たちに折り入って私から頼みたい。』

と真剣な眼差しで言われ、クラスの中心核の相澤は『判りました。 何なりと

仰って下さい。』 とまるで異世界に来たことのあるような口ぶりで言っていた。

勿論だが、こんな体験や異世界に召喚されたなど聞いたことは無かった。

 

 けれども、地球には都市伝説となった神隠しと言う存在がある…… もしかしたら神隠し

では無く、異世界人達による召喚だったのかもしれないが、それを知る者は本人のみ

だろう。


 その言葉を聞き、ライオドアは少し安心したような笑みを浮かべ、


「単刀直入に言わせてもらう。 貴殿たちにこの王国を救って貰って、‛‛序に''魔王

討伐をして貰いたい。 無論、報酬はそれに値する額を出そう。 無理なら断ってくれても

構わん。」


 そう言われ、3-1のクラスメイト達は相澤に全てを任せ……

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