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アスノヨゾラ哨戒班  作者: 白雲
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キミの夜空

午前6時


二次募集のオーディションが始まる。僕は会場の待合室にいる。待合室は六畳くらいの少し狭めの部屋で綺麗な部屋だ。


「あっちではとっくに手術が終わったくらいの時間だね。」


僕は鏡の中の自分に話しかける。鏡の中の自分は自信なさげな表情をしている。


「大丈夫だよね?」


鏡の中の自分に話しかけるが応答はない。

何してんだ俺と我に返る。


ところで6時開始って早すぎないか…


これには理由があって、本番の収録は何時に始まるか分からないので朝早い時間でも集中して演奏出来るかが試されているらしい。


…コンコンッ…


ドアがノックされる。自分の番がまわってきたようだ。僕は自分のお気に入りのギターを手に歩き出す。


「よろしくお願いします。」


僕がスタジオの舞台に立つと舞台がライトアップされる。こちら側だと逆光でスタッフ側がよく見えない。緊張で押し潰されそうになる。


曲が始まりいざ弾くってところで僕の右手首のミサンガが視界に入った。その瞬間僕は無の領域に入った。それはまるで曲と一体化したかのような感覚であった。


曲が終わった瞬間僕は無の境地から現世に戻ってくる。そしてなんだか寂しい様な感覚に陥る。初めての感覚だ。そして、達成感の波が押し寄せてくる。


「お疲れ様。」


そう言われて我に返る。


「あ、はい。ありがとうございました。」


「待合室で待ってて貰えるかな?」


「了解しました。」


僕は待合室でさっきの不思議な感覚を思い出す。初めて味わった曲との一体感。自分が新たな段階に上がった気がした。そんな事を考えていると、


コンコンッ…


「はーい。」


ガチャ…


「ソラ様合格おめでとうございます。」


「え、ほんとですか?ありがとうございます!!!」


僕は二次募集に合格した。やっと本物のギタリストになれた気がした。この気持ちを1番最初に伝えたい君のもとへ僕は向かった。


ーーーーーーーーーーーーー


僕は約5時間かけて病院に辿り着く。

君の病室に入ると僕は


「オーディション受かったよ!」


と元気よく伝えた。しかし、君のベッドの周りには両親が泣きながらベッドに寄りかかっている。病室内が重く悲しい空気に包まれていることに気付く。その瞬間、僕は全てを察してしまった。


…君は死んでしまった…


「何があったんですか…?」


僕は君の両親に尋ねる。


「手術にこの子の心臓が耐えられなかったそうよ…」


君の母が今にも潰れてしまいそうな声で答えてくれた。


「そうなんですか…」


僕の目から涙が溢れ出す。


…君に合格した事言えてないじゃないか…


病室の窓から生暖かい風が入ってくる。

緑色のカーテンがたなびく。

太陽の光が君を照らす。


僕は君の手を握り心の中で叫ぶ


…ありがとう…


すると、僕の手に硬いものが当たる。

何だろうと思い君の手を見ると左手の薬指に指輪がはめられていた。


それを見て僕はまた泣いてしまうのであった。


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