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アスノヨゾラ哨戒班  作者: 白雲
4/5

再会の夜空

外はすっかり暗くなり病院内の明かりが窓越しに少し漏れている。


僕は屋上へとエレベーターに乗る。

心の中には子供の頃に味わうことのなった期待とドキドキ。その時にはギターオーディションで次落ちたら行き場がない危機感と怠惰感の事は忘れていた。


「ドアが開きます」


エレベーターのアナウンスが鳴り、ドアが開く。その瞬間、僕の期待感はエレベーターのドアから溢れ出す。


そこには田舎の夜空が広がっていた。東京では見ることの出来ない星々。


ふと、視線を下に向け周りを見渡すと奥で1人の女性が車椅子に座っている。僕はその後ろ姿に見覚えがあるような気がした。


「すいません、なにをしてらっしゃるんですか?」


僕は尋ねる。素直に何をしているのか気になったのだ。 そして女性の顔をのぞきのむ。女性は真っ直ぐ夜空を見上げていた。その時、僕の身体には電流が走った。


「え、あーと、夜空を見ていました。この病院の屋上から眺める夜空が大好きなもんで!」


「………君は………あの時の……」


僕は驚きで口を閉じることが出来ない。


「どうかしましたか?」


その女性が振り向き、僕と目が合う。そして僕の驚く顔を見て口を開く。


「え、…あなたは……ソラ君…?」


………コクッ


今にも零れそうな涙を堪え静かに頷く。


「久しぶりだね!」


君も目に涙を浮かべ声を震わせて満開の笑顔で僕を見つめる。それはまるで6年前に戻った様な光景であった。いつもより夜空が明るく神々しく闇夜を照らしている。


それから僕らが打ち解けるのに時間はかからなかった。


「今はなんの仕事をしているの?」


「ギタリストだよ!」


「ソラ君あの頃から上手かったもんねぇ!」


「それよりどうしたの?車椅子…」


「あー、私歩けないの…。」


「病気?」


「ANUって言うらしいんだけど、心臓の機能が弱まる病気なんだ。運動すると心臓に負担がかかって止まっちゃうの。だから歩いちゃダメなの。」


「え、大丈夫なの?治るの?」


「治る確率は五分五分だって、1週間後手術なんだ。」


「そっか…病気なんかに負けちゃダメだよ…?」


「当たり前!」


「僕もさギタリスト辞めなければならないかもしれないんだ。」


「え、なんで?」


僕は今までの経緯と二次募集に全てがかかっている事を話した。すると君は腕につけている2つのミサンガの1つを外して、僕に渡した。


「はい、これあげる!お守りだよ!」


「ほんと?ありがとう!」


なんだか懐かしい気がした。


「願ったのなら叶えてしまえ!」


君は笑いながら僕に叫んだ。


…君が笑う再開の夜空へ…


ーーー6日後ーーー

時刻午後3時

彼女の手術開始時間午後9時


僕は君の手を握っている。


「大丈夫だよ。絶対成功するから。」


「うん…」


いま僕は彼女の病室にいる。君は心配そうな表情を浮かべ、ベッドに横たわっている。静かな重い空気が流れる。


気のせいかもしれないけどこの手術が終わって元気になったら僕達はいずれ結婚する。そんな気がするんだ。


それは彼女も思っていた。


「じゃあ行くね…」


「オーディション頑張って!応援してる。」


僕のオーディションも明日に迫っている。


「また明日の夜に会いに来るからね。」


「もし、死んでても私達ひとつだからね。」


「そんな事言うなよ。またね。」


…笑っていよう…


僕は病室を出る。同時に40代後半くらいの男女が病室に入っていく。


…君の両親かな…


そう思いながら病院を立ち去り駅へ向かう。


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