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アスノヨゾラ哨戒班  作者: 白雲
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運命の夜空

「アスノヨゾラ哨戒班」~第2話運命の夜空~


僕は1人丘に座っている。正面には大きな弧を作る水平線、上には空一面の夜空そして背後には僕の生まれ育った街を見渡す事が出来る。今日は少し雲がかかっている。


…いいところだなぁ、ここは…


そう思いながら僕は生きている意味を考え始める。


思いついたのはまず家族の為である、ここまで大事に育ててくれた家族をこんな形で悲しませて良いのか。


次に思いつくのはギターの事、僕は運動神経も良くない方だし勉強もできる訳では無い。そんな僕が唯一出来ると自信を持って言えるのがギターである。ギターは小学校に入学してすぐ、幼稚園からの友達である男の子の影響で始めた。


というのも、その子のお父さんは有名なギタリストで彼のライブを見せてもらったのである。その時の事は今でも覚えている。小学1年生でもわかる迫力。僕はその時ギタリストに憧れた。


だけど、ここ2年くらいギターの演奏会ではミスを連発しもうギタリストは諦め、今は趣味でギターを嗜んでいる。


生きる意味が2つしか思いつかない。


脳裏でクラスの人が僕を嘲笑っている。


「じゃあ、死んじゃえよ。」


そう直接心に語りかけてくる。


空を見上げ夜空に沢山の思い出を浮かべる。しかしその思い出の情景までもいじめられる情景によって掻き消される。そして追い打ちを掛けてくる毎日同じ事を繰り返すだけの人生の不毛感。


そんな絶望に背中を押され僕は丘の崖に立つ。崖の下を見てみる。海の波が岩場とぶつかり音を立てている。


…落ちたら、死ぬな…


目に涙が浮かぶ。周りの景色が歪む。そして覚悟を決める。


「ごめんなさい。」


そう言いながら一歩前に出て目をつぶった時、


「何をしているの?」


後ろから声がした。僕はドキッとして振り返るとそこには同じクラスの少女が立っている。


こんな時間に少女1人で何故ここに…

率直にそう思った。


「そんな所で何やってるの?危ないよ!」


……


3秒くらいの沈黙の後僕が口を開く。


「ひとりにしてくれないか。」


「え、ソラ君…?どうしたの?」


君が優しい口調で話しかけてくる。


「状況を見ればわかるだろ!僕はこれから死ぬんだ。頼む、ほっといてくれ。」


「ほっとけるわけないじゃん!」


「君に何がわかる?僕には生きる希望、、意味が、、ない。人生に飽きたんだよ。」


「生きる意味ならある!私の為に生きて!」


僕は鼻で笑い返す。


「ふふっ、何言ってるの?」


「私が生きる希望になるの!」


そう言いながら君は僕の手を掴み崖から丘の真ん中に引き戻す。君は笑顔を見せながら涙を流していた。僕は咄嗟に目線を逸らすと君の腕には大きなアザがあった。その時僕は全てを理解した。


「これ大丈夫なの…?」


「うん…ごめんね、汚い腕で。」


「そんな事ないよ!ほんとに大丈夫なの?」


「まあね、でも大丈夫!慣れてるから!」


君が無理して笑顔を作っているのがわかる。本当はつらい、死んでしまいたいと君も思っているはず。


…僕も君の生きる希望にならなきゃ…


瞬間的にそう思った。


「僕も君の生きる希望になる。だから一緒に生きよう!頑張ろう!」


「うん!」


「そうだ、これあげる!」


そう言って僕は右手の薬指に付けていた指輪を外し君に手渡す。


「お守りだよ。」


「ありがとう!!」


ーーーーーーーーーーーーー


「綺麗だね!」


笑顔の君は夜空を指さして僕に言う。さっきの雲はとっくに消えていた。いつもとは違う夜空に見えた。


夜空がいつもより明るく、希望に満ちている。そんな気がした。


また明日もこうやって笑っていたい。


…君と僕とでまた明日へ向かっていこう…

心の中でそう思った。


丘の真ん中で2人が空を見上げて涙を流している。




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