曇天の夜空
「アスノヨゾラ哨戒班」~第1話曇天の夜空~
…キーンコーンカーンコーン…
学校のチャイムが鳴る。それと同時に
「昼休みだぁ!」
「サッカーやろーぜー!」
と男子が騒ぎ始める。それをバカを見るような目で見ている女子。だけどこの教室全体は希望と元気な雰囲気で溢れている。
心でそう呟きながら僕はプリントをゆっくりとしまい、弁当箱を開ける。今日はいつも通りのおかずと白米。
今日はテストの返却日、教室に残っている人達の会話は点数の話ばかりである。僕は教室の隅の席で1人弁当を食べている。
僕は少し前にこの学校に転校してきた。だから友達もいないし、話し相手もいない。友達を作りたいとは思うけど作り方がわからない。いつもそうだ。高校で友達が出来た試しがない。
学生のなにが青春なのだろうか。僕達は学校という檻に縛られ、授業という強制労働をさせられているのだ。毎週同じ時間に起きて同じようなことをして同じ時間に寝る。人生はこれの繰り返しだ。
テストの点数も良い訳ではないが悪い訳でもない。クラス20位くらいである。簡単に言えば微妙な順位。
僕には叶えたい未来もない。何のために生きているのかわからない。
…キーンコーンカーンコーン…
そんな事を考えていると今日も昼休みが終わる。外で熱を蓄えた汗だくのサッカー少年達が一斉に教室に帰ってくる。すると、教室の室温が5度ほど一時的に上昇する。
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「さようなら!」
…やっと終わった…
帰りのHRが終わる。
ここで生徒は3種類に分かれる。部活に行く者。部活が休みで帰るもの。部活がなくて帰る者。まあ僕は最後のやつ。
色々な子に
「サッカー部入らん?」
「野球部どう?」
とか言われたが
「強い人と戦うの苦手だし、気分屋だから」
と言って断ってきた。
もちろん、いじめられる様な事もある。集団で「やい、ぼっち!」って言われたり、グループ決めの時仲間外れにされたり…まあ色々。その度に苦しみが蓄積されていく。
みんな部活の友達がクラスの友達と帰るなか僕は1人校門を出る。
帰り道みんなが笑っている。まるで一人の僕を嘲笑っているみたいだ。周りの視線が気になる。早く家に着こうと小走りする。
「ただいまぁ。」
「あ、おかえりなさい。」
僕は自分の部屋に入り、バックから教材などを取り出す。いつもなら教材を出した後すぐギターを弾き始めるが教材を取り出していると1冊の教科書が目に入った。教科書は数学の教科書で表紙に「転校しろ!」っと書かれている。いつの間に書かれたのだろうか。
「はぁ…」
消しゴムでその文字を消していると悲しさが込み上げてくる。
その悲しみが溢れた瞬間、僕はベットに潜り耳を塞ぎ叫ぶ。
「明日よ、もう来ないでくれ!」
その時僕は思った。
…死のう…
「ご飯できたわよ。降りてらっしゃい。」
下からお母さんの声がする。
僕は1階に降りご飯をたいらげる。
時計を見る現在時刻7時20分。
そして僕はお母さんに
「少し散歩してくる。」
と言い残して家を出た。
目には涙が潤んでいる。最後かもしれない家の居心地を身体に思い出させ僕は丘へ向かう。
家の近くには海に面する小高い丘があってその丘の頂上からは晴れていれば空一面の夜空と海を見渡す事が出来る。