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2.変化

「慎二!」


「ん?どうした?」


僕が慎二の部屋へとたどり着いた時、そこには誰もいなかった。

慎二はクラスメイトの中心で、てっきり数人は部屋に一緒にいると思っていた僕はその幸運に感謝する。


「話が、大事な話がある」


そして僕は今まで見てきた国王達の姿を慎二に全て伝えることにした。









慎二は僕の親友というだけでなく、人の話を聞くのが上手い人間だった。

そしてだからこそ、クラスメイト達の意見を上手くまとめ常にその中心にいた。

そんな信二だからこそ、親友であるということ抜きで1番にこのことを相談しようと僕は決めていて、


「あり得るわけないだろ!」


「え、」


だからこそ、邪神教徒達のことの話を聞く耳持たれず否定されるとは思ってはいなかった。


「いや、違う!」


だが、ここで引くわけにはいかないと僕は慎二に必死で訴える。


「そうか、やっぱりお前外れスキルだったことをそんなに根に持っていたのか……」


「っ!」


しかし、それでも慎二が僕の言い分を信じることはなかった。


「確かに気持ちはわかる。クラスメイト達の中でお前だけが役立たずだもんな。だけど、それでもやっていいことと駄目なことはあるだろう!」


「いや、ちょっと待てよ!」


慎二の言葉、それはあまりにも酷い想像で僕は思わず叫ぶ。

そんな推測は僕が知っている慎二がするものではなかった。

確かにその話よりも僕の話の方が突飛ではあるかもしれない。

けれども、僕がそんな人間だと慎二に思われていたことがひどく衝撃的で、思わず睨みつける。


「っ!」


だが、そう告げていた慎二の目を見て僕は絶句した。

慎二が僕を見る目、そこに浮かんでいたのはのは僕に対する蔑みだった。

そこで僕はようやく気づく。

慎二は僕の言葉を否定しているのではない。


ーーー拒絶しているのだということを。


つまり、慎二は僕の話をそもそも聞いていないのだ。

いや、聞いていたとしてもそのことに関して一切真偽を考えることなく否定しているのだ。

そのことに僕は気づいてしまう。


「そもそも、外れスキルしか持っていないのに、どうやって国王の話を盗み聞き出来るんだよ」


「それは!」


だが、それでも僕は認められなかった。

僕の知っている慎二は聞き上手で、認められない話を認めることはなかったが、それでもどんな人の話も真摯に聞く人間だった。

だから僕は今まで隠してきたスキルを慎二に伝えれば信じてくれると、ステータスを開いて見せようとして、


「っ!」


その時、ぞわりと背中に悪寒が走る。

そして僕は直感的に悟る。


ー 今、慎二に隠してきたスキルを言ってはいけないというそのことを。


「……ごめん。ちょっと焦ってた」


それは何の確証もない、けれども国王の正体を看過した直感。

そしてその直感が正しいことを分かっていた僕は無理やり笑みの形に顔を歪めて、慎二に背を向けた。

背を向けた途端、胸中に苦みが溢れ、顔が歪む。

信じてくれると思っていた一番の味方の思わぬ裏切りに僕の心は散り散りに乱れていた。


「そうか……お前がそんな状態になっているのに気づかなくてごめん。でも、いつでも相談してくれよ!力になって見せるから!」


だが、何故か僕の背にそう声をかける慎二の声にはいつも通り溢れんばかりの思いやりが困っていて、


「っ!」


僕は意味が分からず走り出すことしかできなかった……







「畜生、何で……」


信二と別れ、自室に戻った僕は一番の親友からの拒絶に苛立ち混じりに吐き捨てた。


「本当にこの場所に居ると危険なのに!」


僕の頭にあの異常な邪神教徒達の姿がよみがえる。

それは生理的嫌悪を催す光景。

歪で、狂的な絶対に受け入れられない何か。

そしてこのままこの国にいては面倒ごとに巻き込まれることは明らかだと、僕は確信する。


「あれ?」


だが、その時はと僕は気づく。

確かに邪神教徒達の話では僕らを召喚したのは彼らだが、何故召喚したのか、その狙いは全く分かっていないことを。


「っ!しまった」


その時ようやく僕は王座での会議、1番得なければならなかった情報を見逃してしまったことを悟る。

それはあまりにも痛すぎる失態。

ただ、国王が邪神教で僕達を召喚したのは邪神に関わることだと訴えても、あまりにも説得力に欠ける。

そのことに気づいて僕は愕然とする。


「くそ!」


何が狙いなのかは分からない。

だが、明らかにこの王国は僕らに害をなすことをしようとしている。

恐らく、この王国にいることが危険であるだろうというのことは確信できる。

だが、その一番の証拠を手に入れることができなかった僕に今からクラスメイトを説得して逃げることが出来るだろうか?

いや、その可能性はあまりにも低い。

最初に僕が外れスキルだと偽ったことも踏まえ、クラスメイトの僕に対する信用は限りなく低い。

例え僕が必死に訴えたところで妄言だと断言されておしまいだろうり

そう、慎二に話した時と同じように。

そしてもう、何かが起こってからでしかクラスメイトは真実に気づけない。

だが、そんなことを認めるわけにはいけない。

僕はどうにか出来ないか、そう考えて、


「どうしようもない、か」


クラスメイトに伝えることを諦めた。

クラスメイトに僕の言葉を信じてもらうということを諦めた。


だが、そう決めた僕の頭には新たな決意が浮かんでいた。


「とにかく今から出来ることは何かが起こったとしても対処出来る力を手にすることか……」


僕は必死に頭を動かす。

確かに1番安全であろう、前もってクラスメイトに訴えるという案は不可能だろう。

だが、クラスメイトを助けるために打てる手はそれだけではない。


「僕のスキルさえあれば、何が起ころうと取り返しがつく」


そしてそう僕が呟いた声には、何があっても大丈夫という自信に溢れていた。

いや、確信した声であったというべきか。


「ただ、このスキルでは今の時点で物理的に僕を最強にするわけではない。だとすれば……」


そこで僕は一度言葉を止め、今までのことを思い出す。

そして召喚された当初の説明で興味深い話があったことを思い出す。


「そうか、迷宮だ!国王に頼んで騎士同伴の元そこで訓練するか……」


それは実力を驚異的に上げることができる魔境。

だが、そこでなら確実に力をつけられると僕はそう確信して笑う。

その時、僕はクラスメイトを助けられると確信していて、


ー そして、だからこそ僕は自分の能力を過信していることに気づかなかった。



どんな状況でも取り返しがつくという絶対の自信、それがただの慢心でしかないと嘆くことになる未来を……

本日の投稿はこの話で最後です。

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