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サイコヘイトの能力者  作者:
序章
8/42

第7話 「忠誠心の示し方」

王城の無駄に高い壁の無駄に厳重な警備の扉の前にレイダは立っている。

前日に王に会いたいと報告したときは流石に翌日じゃ会えないと思っていたのだが、意外と話が通じるのか顔が通ってるのか暇なのかは知らないが会えることになった。

ただ、前の王家の家来でしかも能力者ということで、反乱や王位奪還を恐れてか手鎖と足枷を付けられて5人の兵士に周りを囲まれてだが。


王城の無駄に広くて無駄に長い廊下を足枷で歩きにくい状態で歩き、王の間の無駄に大きい扉の前に立たされた。

扉の前で数分間待たされ、ようやく扉が開いた。


無駄に広い空間に無駄に豪華そうな縁が金色のレッドカーペットが無駄に豪華な椅子に座ってるわりと若そうな王様のもとまで続いている。

隣の兵士に肩を押されてレイダは王様の前に出た。

頬杖をついて顎髭をいじくりながら王様はこちらをもの珍しそうな目で見ている。



「お前がスキアドラム・レイダか。」


「はい、私がスキアドラム・レイダであります。」



不本意ではあるが、ありもしない敬意を示すために膝間付いて王に頭を下げた。



「スキアドラム・レイダよ、お前の話は聞いておる。わずか13歳にしてエデン王家の家来となり、能力者にも関わらず当時の王エデン・ヨアシュから絶大な信頼を得ていたとか。」


「はい、その通りです。」


「して、そのような者がこの私に何のようかね。王位の奪還とは言うまいな。」



膝間付くレイダに王はギラリと鋭い目線を向けた。



「そんな滅相もございません。主君がいなくなった今、私がすべきことは主君の死を嘆くことでも主君の仇を討つことでもありません。新しい主君を探すことです。」


「ほう、つまり私のことか。お前はそのように簡単に以前の(あるじ)から私に鞍替えすると。」


「はい」



王様は少しの間考える素振りを見せると再びレイダを睨んだ。



「そのような戯言、信じられるわけがない。そもそもお前は能力者だろ。そのような悪魔の末裔の言葉など信用できん。なぜ以前の王はこのような者を信用して配下に置いていたのか不思議でならん。」


「クッ………」



この偉そうな王様の顔面を原形がわからないほどぐちゃぐちゃにしてハムを製造するマッシーンに投入してやろうかと思った。

当然そんなことしたら地位の確立どころか国に追われることになるので抑えるが。


歪んだ表情を戻し、後に続く言葉を考えた。



「王も能力者差別の思想をお持ちのようで。」


「当たり前だ。私だけでなく皆能力者どもが疎い、それが常識だ。」


「しかし、そのような思想の対象であろうと、それを凌ぐ実力を持ち合わせていれば関係の無いことです。」


「ほう、実力とな…聞く話によるとお前は3年前、以前の王のもとについたとき、権力を持て余し行政に介入するようになった国軍をたった一人で壊滅させたとか。」


「はい、確かに。」



本当は一人ではなくセヴァと二人でだが、自分の実力を過大に見せるために訂正はしなかった。そもそも一人でも壊滅できてた。



「確かに、そのような実力者が配下にいればこれ以上心強いものはない。しかしだ、それと信用は別問題だ。そのような者を配下に置いてもし裏切りでもすればそれこそお仕舞いだ。」



そのとき、王の隣に立つ側近と思われる自分が「それでは」と王に耳打ちをしてなにかを話した。

王は納得したような顔を見せると再びレイダの方を見た。



「それではスキアドラム・レイダよ、お前の忠誠心を試すために1つお前に任務を言い渡す。」


「任務…ですか…」


「あぁ、お前がエデン王家を見限り、バベル王家に忠誠を誓うことを試す任務だ。」



エデン王家を見限ることを試す任務。なんとなく予想はついた。

王家を交代するには現王とその後継者を抹殺する必要がある。

後継者とはつまり王の長男。

先に王が王位の奪還と言っていたが、まず王となりうる者がいなければそんなことはできない。

つまりこいつらは王となりうる者が生きていることをしっている。

王となりうる者とはつまり━━━



「エデン…イヴの…抹殺……」



下を向いて呟くような声でそう言った。



「よくわかったな。任務とはエデン・イヴの抹殺だ。1年前、エデン・ヨアシュとその後継者のエデン・アダムは殺したんだが、最近になってエデン・ヨアシュには隠し子がいたことが発覚した。しかもその隠し子、女として育てられたいたらしいが実は男でしかも最初の子だと。この意味がわかるかね?」


「はい、つまりエデン・イヴは王位の正式な後継者。」



正直、1番来てほしくなかった任務だ。



「そう、そのエデン・イヴをこのまま生かしておけばいずれバベル王家の脅威となりかねん。また、残るエデン派の残党の高揚を招く恐れもある。生かしておくわけにはいかぬ。」


「なのでそれを私に殺せと…」


「嫌か?聞く話によるとお前は昔エデン・イヴの世話役だったとか。昔の主君の形見を殺すのは嫌か?」



レイダは考える間もなく下げていた頭を上げると、王に悟られぬようひっそりとため息をついた。



「いえ、必ず私がエデン・イヴを殺し、王への忠誠心を証明してみせましょう。」









夕暮れ時、夕日で赤く照らされた薄暗い部屋の中、下着姿で机のコンピュータにセヴァは向かっていた。

コンピュータで作業をしていると、ガシャンと玄関の扉の開く音が聞こえた。

その瞬間、壁に掛けてある上着を羽織り、部屋を飛び出し、ドタドタと階段を駆け下り、玄関に向かった。



「レイダぁ、どうだった?」



出迎えるセヴァの言葉を無視してレイダはズカズカと上がりこんだ。



「レイダぁ?」



リビングの扉を開き、その中に入ったレイダはそのまま黒いソファに腰掛け、頭を押さえてハァとため息をついた。



「レイダ?もしかしてだめだったの?」



すこし怯えた声で聞くセヴァに対してレイダはまたハァとため息をついた。



「いや、成功するか失敗するかはこれから決まることだ。」


「これから?」



セヴァは棚からホットプレートを取り出し、さらに白い粉と冷蔵庫から牛乳と卵をとりだした。



「王から、俺の忠誠心を試すための任務が下った。その任務を為し遂げれば俺を以前と同じ役職に就かせてくれるってよ。」


「忠誠心を試す任務…?もしかして…イヴ…?」



少し驚いた表情を見せたセヴァは白い粉と卵と牛乳をボウルに入れ、ホットプレートの電源を入れた。

レイダは頭を押さえてまたため息をついた。



「あぁ、エデン・イヴを殺して、更にそれを(かくま)った奴等も王への反逆罪で殺せと。」


「それはまた随分と…」



ボウルの中身をかき混ぜながらセヴァもハァとため息をついた。



「それで、イヴの居場所はわかってるの?」


「あぁ、カナンの農家のボアズと言う男がエデン・イヴを匿ってるらしい。で、その男の(むすめ)が能力者だという情報もある。」


「え!!Really!!?」


「五月蠅い黙れ」



ボウルの中身をホットプレートに長しこみながら叫ぶセヴァにレイダはまたため息をついた。



「レイダぁ、そんなにため息ばっかりついてたら幸せが逃げるよ?」


「お前、また向こうの文化に侵食されてんのか。英語とか鬱陶(うっとう)しいからやめろ。今何作ってんだ?お好み焼きか?」


「違うよ。ホットケーキだよ。食べる?」


「いらん。」



不満そうに頬を膨らませたセヴァはホットプレートをじっと見つめている。



「それで、能力者だからどうするの?匿った人間は殺すんでしょ?」


「いや、素直にエデン・イヴを差し出すならお(とが)め無しだ。能力者は貴重な戦力だ。なんとかルツをこっちに引きこむ。」


「お!!そこで私の出番!!?」


「あぁ、こうゆうことならお前の方が向いてるしな。」


「まっかせてよー!!」



さっきの不満そうな表情から一転して満足そうな表情になったセヴァはホットケーキをひっくり返した。



「正直、エデン・イヴもこっちに取り込みたかったんだがな。あいつは運動能力が能力者の中でも異常に高くて頭の回転も早い。おまけにかなりの努力家ときた。あんな逸材殺すなんてもったいない。」



レイダは頭を押さえてため息をつくと立ち上がった。



「そうだね。イヴは料理が上手くて掃除も洗濯も完璧にこなせて、おまけにすっごく可愛い。絶対いいお嫁さんになるのにもったいないね。」



イヴのエプロン姿を想像してニヤニヤしながらセヴァはホットケーキを皿に移した。

ハァとため息をついたレイダは部屋の扉に手を掛け、振り返ってセヴァの方を見た。



「明日決行する。準備しとけよ。」


「りょーかーい!!」



レイダは扉を開き、部屋の外へ出ていった。


ホットケーキの乗った皿をテーブルに運んだセヴァは夕暮れの赤い空を窓越しに眺めた。



「明日は雨か…」



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