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サイコヘイトの能力者  作者:
新生活
42/42

第41話「共犯者」

 ルツが部屋に戻るとエレンはいなかった。

 さっきまで閉まっていたはずの窓が空いている。ここから黙って出ていったのならそれはもう猿だな。2階だし。

 追いかけて探し出そうとも思ったが、何だかとても疲れている。外に出るのも面倒に思えてくる。

 ここでさっきのセヴァの言葉が頭に浮かんだ。確かに、エレンにその意志が無いのに無理に助けるのは私を含めて誰の得にもならない。

 そう思ったが、ふとある事が気になって玄関に行って靴箱を開くと、エレンの靴が残っている。

 エレンがここにいたことを裏付ける証拠だ。こんな物を忘れて行くなんて計画性皆無なのか。せめてこれだけはエレンに突き返さないと。

 エレンの靴を袋に入れて玄関の扉を開いた。だが外に出て数歩歩いた所で足を止めた。しばらくうつむいて考え込んだ後、再び玄関に戻り靴箱に靴を袋ごと突っ込んでから再び外に出た。

 

 

 

 

 

 

 エレンは公園のベンチで座り、ただ黒い星空を眺めていた。

 顔の左側と左腕は麻酔のせいで感覚が無い。冷たい風が顔の右側だけを撫でる。変な感覚だ。

 街灯の灯り一つない闇の中、一つの足音が近付いてくる。

 

 

 「エレン、やっと見つけた」

 

 

 そう言ってふらりと現れたエリはエレンの隣に座った。エレンはその様子を横目で見てるだけで、特に何の反応もしない。

 

 

 「何してんだよ、こんな所でだらけて」

 

 

 エリが問いかけてもやはり反応は無い。強いていうなら、エリの方を見ていたのを再び空の方に戻したくらいだ。

 

 

 「何か喋れよ。お前らしくない。何も言わないなら、こっちから一方的に話しかけてやる。大声で」

 

 「…何しに来たの」

 

 

 ようやくエレンは空を見上げたまま口を開いた。

 

 

 「お前を探しにだけど?」

 

 「…へぇ」

 

 「もっと気の利いた返事はできないのか?」

 

 「…妹達の世話はいいの?」

 

 「俺はそんなにシスコンか。全部ルナがやってくれるよ」

 

 「…」

 

 「エレン」

 

 「帰ってよ。私といたらあんたまで人殺しだよ」

 

 「やっぱりお前が犯人だったか。薄々気付いてたけど」

 

 「早く帰れ」

 

 「髪の色落とした?初めて見たよお前の地毛。いい色じゃん、白」

 

 「いい色?そうなら髪なんて染めない。元から普通の色のあんたにはわかんないだろ」

 

 「そうか?何にせよ、ようやく本当のお前を見れた気がするよ、エレン」

 

 「なにそれ。私の髪が白いこと?それとも、私が人を殺すようなヤバい奴ってこと?私が父親に汚されて、その子供まで孕んだこと?」

 

 「あぁ、そうだよ」

 

 「相変わらず性格悪いね」

 

 「お互い様だろ?」

 

 「私はあんたとは違う」

 

 「同意だ。俺もお前とは違う」

 

 

 二人は暗い空に向かいながら声を発していた。一段落してからエリはフッと笑い、ひと呼吸置いてから再び口を開く。

 

 

 「なんだ、喋れるじゃん。よかったよ。変な空気のままこんなこと言うのも、アレだったから」

 

 「こんなこと?」

 

 「こっちは警察がうろうろしてる中、わざわざ殺人者に会いに来たんだよ。それなりの理由がなきゃそんなことしない」

 

 「で、どんなこと?」

 

 「それは…なんというか…」

 

 

 エリはそこで言葉に詰まったのか黙り込んで、エレンから目を逸らす。逸したまま言う。

 

 

 「お前に付き合いに来た」

 

 「は…?」

 

 「お前がどこに行こうと、お前が何をしようと、地獄の果まで俺が付き合う」

 

 「…なにそれ。そんな臭いセリフよく言う気になったよね。とりあえず脱げ」

 

 「え、やだ」

 

 「脱げ。ここで既成事実を作っておけば、これはエリの子供だ。いいだろ、どうせ暗くて見えないだろ?」

 

 「俺は見えてるぞ。俺の能力は暗視もできる」

 

 「あぁそう。それじゃ―――」

 

 「待て」

 

 

 エリはエレンを制止して立ち上がる。エリが視線を当てる先には警察が3人、ライト片手にこちらを捉えている。

 

 

 「エレン・アップルカーゼだな?貴様を逮捕する。大人しく同行しなさい」

 

 

 3人のうちの一人がそう言いながらこちらに歩み寄ってくる。

 エレンとエリは後退りした。そしてエリは右手に鉄パイプを呼び出す。

 

 

 「どうしようかエレン、ここで―――」

 

 「そいつら全員殺す」

 

 「オーケー」

 

 

 2人はそう息巻いていたが、気づけば警察達は地面に伏していた。その後ろで立っているルツは頭を掻きながら手のひらを向ける。

 

 

 「意識と記憶の飛ばし方、知ってる?」

 

 

 そしてエレン達の前まで歩いてくるとエレンの手を握る。

 

 

 「超探したんだから。まったく」

 

 「…」

 

 「ほら、帰るよ」

 

 

 ルツが手を引くが、エレンは動こうとはしない。ルツが困ったようにエリに視線を向けると、エリはエレンの手を掴むルツの手を掴む。

 

 

 「ルツ、エレンは―――」

 

 「エレンはエリと一緒に逃げるから私は余計な手を出さなくていい?何で私はダメで、エリならいいんだか」

 

 

 ルツが手を放すとエリも手を放した。

 

 

 「エレンは私のことが嫌いだから、私に頼りたくない。そうでしょ?」

 

 「よくわかってるじゃん」

 

 「だったら尚更、共犯の罪は嫌いな奴に背負わせないと」

 

 

 ルツがもう一度手を掴もうとすると、エレンはそれをはらいのけた。

 

 

 「だからあんたは嫌いなんだよルツ。私とエリの聖域に入り込んできて。あんたは必要ないんだよ。私とエリで何とでもする。関わるな」

 

 

 エレンがそう言い終える頃にはエレンは地面に叩きつけられて、その手をルツが拘束していた。

 

 

 「ダメだよエレン。その考えはダメだよ。確かに能力者2人なら何も何とかなりそうだけど、それはダメ。事実、あなた達は私一人どうにもすることができない」

 

 

 そしてルツはエレンを無理やり引っ張って家に帰った。

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