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サイコヘイトの能力者  作者:
新生活
38/42

第37話 「戦士の二」

 目の前のその男は、ルツが引っ越してからずっとルツのことを見ていたと言う。

 気持ち悪い。ストーカーじゃないか。

 男は続けて言う。

  

 

 「それにしても、こんな近くに能力者が引っ越して来るとはなぁ! 嬉しい限りだ」

 

 「…ねぇ、私の話聞いてた?」

 

 「あぁ?」

 

 

 そのとき、飛んできた大きなコンクリートの破片が男の顔のすぐそばを横切った。男の頬に小さな切り傷が入る。

 

 

 「ルツのお父さんを殺したのはお前かって、聞いてるの!!」

 

 

 そう言ったルツの右手の上には、いくつもの石や破片が浮いている。

 

 

 「へぇ!? 念動力か? いいねぇ、嫌いじゃない。やろうか!!」

 

 

 男は意気揚々と構えると、左手をルツの方に向ける。そして男の両目から赤い液体が流れ出る。

 

 

 「やばっ━━━」

 

 

 その瞬間、ルツの視界が途切れた。

 男の目から流れ出た血、レイダと同じ生操力。生きてる者に直接能力を使うことのできる力。

 ルツの視界が奪われたのもその力のせいだろう。

 男の顔を見ることはできないが、声だけが聞こえてくる。

 

 

 「俺の能力は造壁力。絶対に何も通さない障壁を造る力。それは人の神経の信号をもだ」

 

 「うっ…視神経に壁を…?」

 

 「そういうこと。光だけじゃない。音も匂いも感触も、運動神経を遮って動けなくすることもできるんだぜ。あ、そうだ。耳が聞こえてる内に言っておく。俺の名前はレーヌ。冥土でも覚えておけよ」

 

 

 レーヌが言ってる間に、ルツは自分の両目を抉り落とし、踏み潰した。そして数秒後に回復した両目で再びレーヌを睨みつける。

 しかしレーヌは余裕の笑みで再びルツに右手を向ける。

 

 

 「無駄だ。再生しようが、何度だって遮るまでだ」

 

 「関係ないよ」

 

 

 再びルツの視界は途絶えた。だがルツはそんなこと関係なしにレーヌに駆け寄ると、そのまま格闘する。

 

 

 「私は目なんて見えなくても戦える」

 

 

 ルツの攻撃はまるで目が見えてるかのように正確にレーヌを狙っている。しかしその攻撃も全て防がれる。

 

 

 「いいねぇ、やるなぁ! でもお嬢ちゃん、いくら小競合いで勝っても、決め手がないと意味無いぜ。まぁ、お前は小競合いにも勝てないか」

 

 「っ━━━!!」

 

 

 レーヌはルツの拳を掴んで止めると、そのまま腹を蹴飛ばした。ルツは後方に飛ばされ地面に倒れるもすぐに起き上がる。

 

 

 「ほう、急所を避けたか。普通なら能力者でもしばらく再起不能になるがなぁ」

 

 「ちぃ…」

 

 

 正直、この男はやばい。私の手には負えない。

 逃げるべきだろうが、そうもいかない。簡単に逃がしてくれるとは思えないし、この男はいずれ任務の支障となる。なんとかしないと。

 この男の話が本当なら、障壁で血流や呼吸を遮れば簡単に殺せるはずだ。そんな危険な男を野放しにしておくわけにいかない。

 するとそのとき、突然ルツは地面に倒れた。ルツ本人は、自分が倒れたことすらよくわかっていない。ただ、何かが倒れるような音だけが耳に届いた。

 

 

 「お嬢ちゃんの聴覚以外の全ての感覚を奪った。どんな気分だ?」

 

 「う…お…おまえ…なにが━━━」

 

 「おっと、それ以上喋らない方がいいなぁ。舌噛み千切って死ぬぞ」

 

 

 痛覚も失ったルツは、自分が自分の舌を噛んでいることをそのとき初めて知った。

 しゃべるたびに変な音が聞こえると思ってたが、自分の舌を噛みちぎる音だったとは。

 とにかくこの状況はまずい。体を動かそうとするが、その度にグシャグシャと嫌な音がする。多分自分の骨の折れる音。

 ダメだ。感覚がなければ力の制御ができず、動いたら無意識に自分の体を壊していく。

 かと言って止まるにも、自分が動いているか、止まっているかもわからない。動き方も止まり方もわからない。唯一残った聴覚からは、延々と体の壊れる音が聞こえる。

 

 

 「もういいか」

 

 

 レーヌの声がすると、ルツの視界が元に戻った。それと同時に他の感覚も、痛覚も元に戻る。

 最初に目に入ったのは自分の身体。服はビリビリに破れ、全身が深いすり傷や切り傷に被われ、内臓が漏れている。手足は何ヶ所も折れており、折れた骨が皮膚を突き破って出てきている。

 それと同時に、戻った痛覚による激痛。

 

 

 「あぁぁ!! くっ…ぁぁぁぁ!!」

 

 「悪くはないんだけどなぁ。まだ足りねぇなぁ!」

 

 

 ルツが痛みに悶えていると、そこに更にひとつ。右膝に衝撃と痛みを感じたかと思えば、そこには鉄パイプが刺さっている。

 

 

 「能力核を潰した。そこで暫く悶絶してろ」

 

 

 レーヌはそう言ってその場を去ろうとする。

 

 

 「ま…待て…!! …う…待て!!」

 

 「そうだ。お前のお友だち、今ごろどうなってるだろうなぁ!?」

 

 「…く…そうだ……エレン…」

 

 

 こんなことしてる場合じゃなかった。早くエレンの元に戻らないと。

 しかし傷のせいで動けない。能力核が再生するまで十数分、傷を再生できない。

 そんなとき、ルツのスマホの着信音が鳴った。

 痛くて動くことは難しいし、会話できるような状態でもないが、それでもルツは力を振り絞ってスマホを手に取る。

 着信はエリから。応答すると、エリの声が聞こえてくる。

 

 

 「ルツ、今どこだ?」

 

 「…う…ごめ…喋れ…ない…」

 

 「は? 大丈夫なのか?」

 

 「だい…じょうぶ……用件だけ…言って……」

 

 「悪いが、できるだけ早く戻ってきてくれ。ちょっとまずいことになった」

 

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