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サイコヘイトの能力者  作者:
序章
18/42

第17話 「超スキアドラム隊」

脱衣所にある洗濯機と床との隙間をハルは頬を床に着けて覗いている。

ハァとため息をついてゆっくりと立ち上がると体についたホコリを手ではらった。



「ここじゃない…」



すると今度は振り返って後ろにある棚と床との隙間を除きこんだ。



「なにしてるの?」



青いジャージを手にかけたセヴァは腰を低くして覗くようにハルを見ている。



「探し物…あ!あった!!」



ハルが嬉しそうに声をあげると風と共に隙間からホコリが舞った。

少し咳き込んだハルはゆっくりと立ち上り体についたホコリをはらうと手に持ってる物をセヴァに見せつけた。



「ん?ヘアピン?」


「うん、そうだよ」



その赤色の花形のヘアピンは一年前、ハルがルツに贈った青色のものとお揃いの髪止め。

贈った後すぐになくしてしまったがやっぱりここに落ちてた。

ハルはヘアピンについたホコリを風ではらうとそれで前髪を止めた。



「よーし、目的終了!!」



そう言うとハルは脱衣所から出ていき、廊下を走って玄関からも出ていった。







朝の日射しが窓から射し込み、よだれを垂らした寝顔を照らした。

眩しい日射しに照らさせ目を覚ますといつもと違う白い天井が目に入った。

そうだった、昨日から家変わったんだっけ。

ルツは体を起こし腕を伸ばして大きな欠伸をした。時計を見るともうすぐ昼だ。昨日はいろいろあって疲れてたから仕方ないか。

ルツはベッドからおりると乱れた布団を整え寝室を後にした。


リビングにおりて冷蔵庫を開けた。中には昨日食べなかった料理がまだ残っている。それを食べてもいいけど料理くらい自分でしないと。よくイヴに料理教えてもらってたから料理はそこそこできる。

ルツが冷蔵庫の中から食材を探していると突然玄関の扉の開く音と共にただいまーという声が聞こえてきた。

もしかしてイヴが帰ってきたのかと思い、ルツは玄関へ飛び出して行った。

案の定、玄関にはセヴァとその後ろにイヴが隠れるようにこちらを見ている。ウサ耳フード可愛い。



「オッスルツぅ!!ただいまぁ!!」


「あ、うんおかえり」



元気に叫ぶセヴァに素っ気ない態度で応答するとセヴァの後ろに隠れるハルに歩み寄った。



「よかったイヴ、生きてたんだ」


「……」



ハルは何も言わずにプイッとそっぽを向くと靴を脱いで廊下に上がり込んで行った。


そうだ、忘れてた。私、イヴを裏切ったんだった。裏切らないって約束したのに。無視されたって当然だよね。

ルツがうつむいて落ち込んでいるとセヴァが後ろからそれを手渡した。



「え、これって」


「ハルがね、どーしてもこれをルツに渡さなきゃって」


「ハル?」


「うん、イヴの新しい名前。アヅチ・ハル」


「そう…」



手渡されたそれは茶色い稿で作られた四角い籠。その籠の上には父の文字で誕生日おめでとうと書いてある紙が貼ってある。

ルツはその籠を部屋に持ち入ると早速その籠を開いた。

籠の中には茶色いカールした毛のいわゆるトイプードルが横になって眠っている。



「あ、これって…」



昔からルツは動物が好きだった。動物は自分を差別したりいじめたりすることはないから。動物の中でも特に犬が好きで、理由は単純に可愛いから。

昔から犬を飼いたいと思っていたけど生活もそんなに楽じゃないしお父さんには言わなかった。でもやっぱりお父さんは気付いてたんだ。犬なんて高価な物、ずっとお金を貯めてたんだろう。

今になってお父さんが死んだ悲しみと共に涙が溢れてきた。



「うぅ……お父…さん…」



ルツが泣いていると籠の中の犬ゆっくりとが起き上がり、籠から出てルツの肩に登ると頬を滴る涙をペロペロと舐めだした。

ルツは少しだけ笑顔になると肩に乗ってる犬を腕に抱き抱えた。



「この子…お父さんの形見…だね。名前を付けないと」



ルツは考えた。お父さんの名前から取ろうか。お父さんの名前がボアズだから…



「アズ…アズにしよう」



ルツがそう言ったとき既にアズはルツの腕の中で眠っていた。


ふと気付くと目の間の机にさっきまでなかった小さな白い紙袋が置いてある。

セヴァはさっきから洗濯機を回してるからこの部屋に入ったのはハルだけ。ハルが置いたのかな。

その紙袋の裏を見てみると小さくハルの文字でルツへと書いてある。



「イヴ……」



袋の中には銀色の花形のヘアピンが入っていた。去年貰ったものと同じ色違いのものが。

そういえばあのときは気づかなかったけどハルの前髪には赤いヘアピンと金色のヘアピンをつけていた。



「ウフフっ、またお揃い」



ルツは笑顔で少し顔を赤くするとその銀色のヘアピンで前髪を止めた。







その日の夜のこと。ハルが台所で夕飯を作っていたときのこと、玄関の扉が開く音が聞こえた。その瞬間セヴァが飛び出して玄関に出迎えに行った。



「おかえりぃレイダぁ」


「あぁ」



レイダが靴を脱いで廊下に上がるとセヴァはレイダが脱いだ靴を綺麗に並べ直した。



「エデン・イヴという人間は消えたと王に報告した。だが王も完全には信じてないだろう。見つかったらまずい。だからアヅチ・ハルには島で暮らしてもらうことにする」


「でもエデン・イヴが消えたってのは本当でしょ?あの子はエデン・イヴじゃなくてアヅチ・ハルなんだから」



レイダがリビングに入るとソファに座っていたルツは幽霊でも化物でも見るような目でレイダを見ながら座ったまま体を遠ざけた。

セヴァからレイダという人のことは聞いた。私にあんなことをしたのは私に無理矢理にでもハルを渡させて私を殺さないためだって。根は良い人だって。

でもやっぱりあんなことがあった後だから恐いしこの人がお父さんを殺したことには変わりない。



「昨日はすまなかったな、ルツ」


「え、うん…」



その言葉は以外だったけどそれでもやっぱり印象は変わらない。

レイダが食事用のテーブルの椅子に座るとその隣にセヴァも座った。



「なんで隣なんだよ」


「んへ?椅子は4つしかないんだから普通私達が隣でしょ」



レイダがハァとため息をついたとき、台所のハルがいきなり叫びだした。



「できたぁ!!」



ハルは器用に4つの皿を両手に持ってテーブルまで運んできた。テーブルに皿を並べるとハルはドスンと椅子に腰掛けた。



「さぁ、今日はとびっきりだよ。最高級の一角獣肉のステーキだよおいしそ」


「ほほ、2年ぶりのハルの料理。ヤバイよだれが」



ギャーギャー騒いでるハルとセヴァにレイダはハァとため息をついた。

アズに餌をあげていたルツは餌やりを終えるとハルの隣の椅子に座った。



「んふっ、それじゃ早速いっただっきまーす!!」



セヴァはそう言うと一人で勝手にバクバク食べだした。



「あ、セヴァずるい!」



それを見たハルはそう言うとセヴァに続いてバクバク食べだした。

カチカチ食器の擦れる音を響かせながら餓狼のごとくご飯を貪る二人にレイダはため息をつき、ルツは苦笑いを浮かべると二人も食べ始めた。


ほんの数十秒後、ご飯を貪り食っていたハルとセヴァはほぼ同時に空になった皿をテーブルにドンと叩き付けるように置いた。



「ごちそーさまー!!ハルは天才だね」


「フッ、僕にかかればこんな料理余裕ヨユウぅ」



大声で喋ってる二人を横目で見ながらまだレイダとルツは無言でムシャムシャ食べている。


更に数分後、最後にルツが皿を空にした。

ルツの皿が空になったことを確認したセヴァはテーブルにドンと手を着いて立ち上がった。



「それじゃー入隊式をはじめましょー!!」


「ん?入隊?」



ディッシュで口を拭いていたルツはその言葉を聞いて首をかしげた。



「フッフッフッ、ではまずスキアドラムさんから評価のお言葉をいただきましょぉ」



セヴァがそう言ってレイダに手のひらを向けた瞬間、鬼のような形相でレイダはセヴァに視線を突き刺し目から血を流した。



「あ…あの…その……レイダはこーゆーノリが苦手なようなので私が代わりに発表しまぁす!!」



セヴァの額には少し汗が滲んでいる。

セヴァは机に突っ伏して寝ているハルを指さした。



「アヅチ・ハル、有能!!」



セヴァがそう言ってもハルはぐーすか眠ってて反応を示さないのでセヴァはムゥと頬を膨らませた。



「ちょっとルツさん、ハルを起こして」


「あ、はい。ハル起きて」



ルツが眠ってるハルの肩を揺するとハルはゆっくりと顔を上げ目を擦った。



「んは…おはよ」



セヴァは今度はよだれを拭いて眠そうにしているハルを見つめているルツを指さした。



「ルツ、あなたも有能!!」


「え…?有能…?」



セヴァは腕を組んで何故か得意気な顔でうんうんと頷いた。



「うんうん、見てればわかるよ。あくまで素質の話だけどハルはもちろんルツも優秀ゆうしゅうぅ。これなら入隊しても問題無し!!」


「だから、入隊って?」


「ふふぅん、それは…レイダ、説明して」



セヴァに指名されてレイダはハァとため息をつくと口を開きはじめた。



「お前達二人には独立行動隊に入隊してもらう。独立行動隊ってのは俺が個人的に運営している組織のことだ」


「通称、“超スキアドラム隊”」


「黙れ」



レイダに睨まれたセヴァはハハッと笑うとバタンと椅子に座った。

レイダはハァとため息をついて頭を押さえると話を続けた。



「組織と言っても俺とこいつを含めて3人しかいないんだがな。王家が代わる前は王公認の半分国が運営してるような組織だったんだが。主に王からまわってきた裏の仕事をする組織だ」


「え?裏?汚れ仕事…?」



ルツは不安そうな顔でガクブル震えている。



「いや、裏と言ってもそんな汚い仕事ではない。ただな、昔と違って王家が代わったからそんな仕事が来ないとも言いきれん」


「そ、それで私達はそれに入隊するの?もし断ったら?」


「お前らに断る道があると思うか?」


「………」



一瞬無言の時間が流れた。

見かねたセヴァが立ち上がってハハッと苦笑いした。



「あの、レイダが言いたいことはね、将来的なことを考えれば入隊した方がいいってことだよ。能力者雇ってくれるようなとこなんて無いしね。ちゃんと給料も出るよ。それにルツ、強くなりたいんでしょ?入隊したら訓練も付くよ」



ルツは少し頭を抱えて考えた。

セヴァの言うとおり、将来的なことを考えれば入隊するのが一番合理的か。それに、ハルも入隊するんならハルと一緒にいれる。

ルツは横でうとうと眠りかけてるハルを見た。



「もちろんハルは入隊するよねぇ」



セヴァがハルにそう聞くとハルは眠そうに目を半開きにした。



「ふぇ?あぁうん入隊しましゅばたり」



ハルはテーブルに頬を着けてそのまま眠りだした。

よだれを垂らしながら寝てるハルを見つめながらルツはうんと頷いた。



「わ、私もその、入隊します」

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