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サイコヘイトの能力者  作者:
序章
14/42

第13和 「王子と戦士」

目が覚めると薄暗い汚れた天井が目に入った。

埃っぽくてイヴは少し咳き込んだ。

よくわからないけど殺されなかったみたいだ。

殺されなかったけどまぁ当然こうなるか。

薄暗いほぼ正方形の牢獄の中、両手を手鎖で拘束され両足に付けられた足掛は鎖で壁に止められている。

手足を少し強く動かしてみたが当然そんな簡単に外れるわけも壊れるわけもないか。



「ここは…?なんで殺さなかったの?」



牢獄の外で椅子に腰掛けて何も言わずにこちらを見ているレイダに声をかけた。

また無視するんじゃないかと思ったが今度はすんなりと口を開いた。



「ここは旧王城を改築してつくられた研究所の地下牢だ。王の命令が変わってな。西のヴェスト国が能力軍を保有しているのは知ってるだろ。その対策のために能力者を研究する必要がある。その被験体として選ばれたのがお前ってわけだ。」


「ひ…被験体…?」



レイダはハァとため息をついて頷いた。



「あぁ、何をするのかは詳しく知らんがまぁ良いもんではないだろうな。そんで残念なことにお前の監視は俺が担当だ」



レイダが監視の担当。つまり絶対に逃げられないってことか。

でも落ち着け、もっとよく話を聞いて分析しないと。レイダのことだから何か手掛かりが…



「言っとくが、風は使えないからな。能力制止剤なんてわりと簡単に作れる」



そうだ。さっきからあった違和感。風を感じにくいし操れない。

でも確か、能力制止剤は特殊能力は制止できても再生能力は制止できなかったはず。



「あの女のせいか?」


「は?」


「お前はもっと賢い奴だと思ってたが。少なくとも本気で俺と戦おうとするような奴じゃなかった。あのルツとか言う女との生活がお前の何を変えた?」


「ルツ…か…」



イヴはうつ向いて黙りこむとその先を喋ろうとしない。

レイダはハァとため息をついて頭を押さえた。



「まぁいいが…お前がどんなになろうとも、もう俺はお前の世話役じゃないんだしな」


「あ…そうだ…ちゃんとあれ!!やってくれた!!?」


「あ、悪い。まだだ」


「え…なんで…」



落胆して手を床に着いたイヴはハァと息を洩らした。

そんなイヴを見たレイダもハァとため息をつくと椅子から立ち上り、ガシャンと檻に手をついた。



「だめなんだよ。それはお前がやることだ。何日後でも何ヵ月後でも何年後でもいい、生きてお前がやることに意味があるんだろ?」


「はぁ?何言ってんの?早くしないと死んじゃうかもしれないんだよ?」



めんどくさそうにレイダはハァとため息をついて頭を押さえるとぶつぶつ何か呟きながらバタンと椅子に腰をおろした。



「だったら早くやればいい。単純な話だろ?」



早くやればいいってことはとっとと逃げ出して自分でやれってことか。そんなことできそうにもないけど。



「あれからどのくらい経った?」


「まだ日は変わってない。正確な時間までは規則で言えないが」


「…そう」



確か、レイダが家に来たのが昼過ぎくらいでそっから旧王城まで車で一時間程度だったはず。

服もまだ乾いてないところから察するにまだ日の入りの時刻には達していない。

ならまだ間に合う。今日中は無理でも明日までくらいなら。

でもそれはレイダがいなければの話。レイダがいたんじゃ逃げられるものも逃げられない。

なんとかレイダをここから、この旧王城内から追い出す方法を探さないと。

それさえ叶えば脱獄する手段も持ち合わせてるし、昔何回も出入りした城だからルートもわかる。警備の兵なんて話にならない。



「お前はまだ父親のことを恨んでいるのか?」



組んだ両手に額を当てて地面を眺めるレイダが唐突に呟いた。

そんなこといきなり言われてもわからない。

昔は恨んでた。僕を王家から追い出して、約束を破った父親なんて。

でも、今はどうだろう。

最期に見た父親の姿と一年間のルツの父親との生活で思い出した。昔の優しかった父親の姿を。



「さぁ、わからない。でも、お父様が僕を裏切ったことはまだ許してない」


「またあのことか」


「うん、レイダとセヴァも僕の前からいなくなったよね。あれはなんで?」



レイダはふっと顔を上げるとまたハァとため息をついた。



「あぁ、あれはエデン・ヨアシュ様の命である場所の調査に出てた。詳しいことは言えん」


「フフっ、でしょ?お父様は僕からレイダも奪ったんだよ」


「だが、お前に俺を与えたのもお前の父親だ」


「フフっ、あぁ確かにね。もうわかんないや」



イヴは不適な笑みを浮かべながらバタリと地面に倒れこむように寝そべった。



「相変わらず情緒不安定だな」









少し小雨になった雨雲の空の下、旧王城の門の前の警備の兵に見つからない位置で桃色のレインコートと朱色のレインコートを着た女が二人。



「セヴァ…本当にやるの?」



朱色のレインコートを着た方の女が桃色のレインコートの女に少し不安そうな顔で聞いた。



「やるよそりゃ。私達はただレイダを引摺り出せばいい。レイダがいなくなればあとはイヴが勝手に脱獄する」


「そ、そうかなぁ…」


「そうなの。それじゃ、作戦通りによろしくね」



セヴァはしゃがみこむルツをおいて一人軽いステップを踏みながらピョンピョン旧王城の門へ向かっていった。



「えぇ、ちょっと…待ってよ…」



ルツはフゥと息をついてゆっくりと膝に手をついて立ち上がった。


その頃、一人で王城の門へ向かったセヴァは門の前で警備の兵に掛け合っていた。



「だから、スキアドラム・レイダに用件があって」


「ここは部外者は立ち入り禁止だ」



全く話を聞かない警備の兵にセヴァは少しもたついていた。

頑として通そうともレイダを呼ぼうとも話をつけようともしない兵にため息を漏らし、またレイダの癖が移ったなどと思っていると、いきなりギィと木の擦れる音と共に門が開いた。



「お前…なにしてんの…?」



開いた門から出てきたのは黒いレインコートを着たレイダだった。

相変わらずダルそうな表情で頭を押さえてるレイダはハァとため息をつきながら睨むようにセヴァに視線を刺している。



「い、いやぁ別になにも。レイダこそどしたの?」


「あ?王様に呼ばれたから王城に。」


「あ、あぁそーなの。行ってらっしゃーい」



ふわふわした声で手を振るセヴァを2度見したレイダはセヴァの振ってない方の手を掴んだ。



「お前も来い。こんなところにお前がいるのを黙って見過ごせない。どーせイヴを助けるとかイキったこと考えてたんだろ」


「えー、そんなこと」



ぶつぶつ文句を言いながらもセヴァはレイダにズルズル引っ張られていった。


前髪を指にクルクル巻き付けながらルツはそれを遠くから見ていた。



「え…作戦は…?」



さっきまで作戦とか言ってたのにセヴァはレイダに連れられてどこかに行ってしまった。

どうしよ。一応帰る場所は聞いてるし交通費も貰ってる。レインコートのフードで髪の毛も隠せるし、帰ろうと思えば帰れる。

作戦はあの黒いレインコートの人をここから離れさせることが目的だから既に作戦は成功してる。

でも、ほんとにあの人さえいなければイヴは逃げ出せるの?

イヴなら簡単に脱出できるってセヴァは言ってたけど具体的にどうやって?

本当にイヴ一人で逃げ出せるの?



「やっぱり、私が行かないと」



レインコートのフードを脱いだルツは決心するように頷くと、ゆっくりと立ち上がった。

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