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サイコヘイトの能力者  作者:
序章
1/42

プロローグ 「エデンの園の父親の記憶」

ある国の王家の王城の中、暗く静まりかえったその部屋、そこに響くのは幼い子供の寝言。



「お…おとーしゃま…」



ベットの中でスヤスヤ眠る長い青髪の小さな子供。その安眠を妨げたのは男達の足音と、剣を鞘から抜くおとだった。



「だれ━━━」



間一髪だった。

右腕を取られながらもその子供はベットから飛び起き、剣の斬撃をかわした。



「うぅ……い…いたい…」



切断されて血がドクドク流れ出る右腕を押え、泣きながら目の前の男達を睨み付けた。

目の前の3人の男達のうち、血の付いた剣を右手に持った男が子供の前に立ち塞がると、剣を大きく子供に振りかざした。

その瞬間、強い風と共に男達は3人共吹き飛ばされた。

右腕から沸き起こる痛みに耐えながら子供はゆっくりと立ち上り、ヨロヨロとベットに寄り掛かった。

ハァハァと息を荒くしながら、布団に噛み付き痛みに耐えていたが、床に転がっている自分の右手を見た瞬間、塞き止めていたものが込み上がり、声を出して泣き出した。



「う…ぁ…うぁぁぁん!!!」



風に飛ばされ、少し警戒していた男達だが、子供が泣くのを見ると警戒を解き、再び剣を振りかざすと、子供に向かって降り下ろした。

子供はまた間一髪のところでかわしたが、今度は左足を取られた。

もう逃げられない、そう思ったときだった。バタンと部屋の扉が開き、何人もの兵士が部屋の中になだれ込んで男達を捕らえた。

兵士達に少し遅れて、少し豪華な身なりをした男が部屋の中に入ってきた。

右腕と左足から大量の血を流し、倒れこんでいる子供を見ると、男は急ぎ足で子供のもとに駆け寄り、子供を抱き抱えた。



「イヴ!!イヴ!!大丈夫か!!?」


「お…おとうさま…」



子供は今にも消えそうな声で呟くと、父親の腕の中で目を閉じ、首をガクリと落とした。



「イヴ!!イヴ!!」



子供の亡骸を抱えながら男は叫ぶと、大慌てで近くの兵士を呼び止めた。



「アベルよ、早く医者を連れてこい!」


「お言葉ですが王様、能力者に医者は必用ないかと」


「何を言っている!イヴは私の娘でまだ6つだぞ!もしものことがあったら…」



父親のうろたえた声の中、腕の中の子供は目を覚まし、父親の腕から床にぽとりと足をついた。



「おとうさま、もうだいじょうぶですから」



子供は何事も無かったかのような涼しい顔で父親を見つめている。

それでも父親の慌てようは変わらない。



「イヴ!!本当に大丈夫なのか!!?どこか痛いところはないのか!!?」


「だいじょうぶですよ。ほら」



そう言いながら子供は新しい右腕を父親に見せつけた。

少し戸惑いつつも父親は大丈夫だと割り切り、さらに兵士に問った。



「あの男達を使わしたのはだれだ?」


「はっ…それが…奥様のイゼベル様だと…」


「イゼベルだと!?」



声を荒げた父親はそのまま部屋から出ていった。


王城の長い廊下を歩き、寝室と書かれた部屋の中へと怒鳴り込んだ。



「イゼベル!!どういうことだ!!?」


「あら貴方、どうされましたか?」



真夜中だというのにベットに腰掛けている年増の女は涼しい顔で対応した。



「どうしたじゃない!!あの男達はお前が使わしたのか!!?」


「あら、あの人達喋っちゃったのね」



女が喋り終わった瞬間、女は男に殴られベットから吹き飛んだ。



「何を考えているんだ!!?自分の息子だろ!!?」


「貴方こそ何考えてるの!!?あんな汚れた血を王家に置いておくなんて!!」


「黙れ!!イヴは私の息子だ!!汚れた血だろうがなんだろうが関係ない!!」



倒れた女は立ち上るとベットに寄り掛かり、殴られた左頬を押さえた。



「ねぇ貴方、私のお腹にはもう新しい子供がいるのよ?もうあんな汚れた子なんて忘れてもう一度やり直しましょ?」


「お前のお腹の子も確かに私の子だ。だがイヴもその子と変わらない私の子だ。お前は本来、極刑にされてもおかしくないが、今回は見逃してやる。2度とこのようなことがないように。」



男は後ろを振り返ると、部屋から出ていった。








何日か後、子供は父親に連れられ王城の庭にある古い小屋の前にいた。

文字通り指をくわえながら小屋と父親を交互に見ていると、父親がしゃがみこみ、子供に目線を合わせると肩に手を置き、力強くまるで自分自分に言い聞かせるように口を開いた。



「イヴ、これから辛いことがたくさんあるだろうが、父さんだけはお前の味方だ。お前がどれだけ人から蔑まれようと、お前がどれだけ疎まれようと父さんは…父さんはお前を守ってやる」


「お父…様…?」



わけがわからないと首を傾げる子供を見て父親はふっと笑うと、仕切り直すように立ち上り、小屋の方を眺めた。



「結局、お前を王家に置くのは限界だった。また前回のような事が起きてもおかしくない。だから…今日からここが…お前の住むところだ」


「ここが?」


「あぁ」



子供はボロボロの小屋を眺め、少し不安そうな顔を父親に見せた。

その顔を見た父親は安心させるように手のひらを子供の頭の上に置いた。



「心配するな。私はお前の味方だ。忙しくて来れない日もあるだろうが、できる限り毎日ここに来てお前の面倒を見てやる。」


「お父様…」



にっこりと笑顔になった子供は軽いステップを踏みながら小屋の扉を蹴破った。

舞い散ったホコリが朝日に輝き光の筋を作っている。

ホコリを吸い込み少し咳き込んだ子供は小屋内に立て掛けてあるほうきを手に取り、小屋の外の父親に叫んだ。



「イヴもね、お父様大好きだよ。」


照れた顔をを隠すように子供は小屋の奥へと走り込んでいった。



「お父様、まずは掃除!!ここ、ホコリすごいよ!!」



小屋の中から響く元気な声を聞き安心したような笑みを浮かべ、父親も小屋の中へ入っていった。

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