三毛猫おばあちゃんのお昼寝
霜月 透子事務局長、鈴木 りん副館長の主催の『ひだまり童話館』の『開館1周年記念祭』に参加しています。
『のんびりな話』です。
前の『真っ白な子猫』の続きです。
海の見える公園で、年老いた三毛猫がひなたぼっこをしています。
白い地毛に黒色と茶色のぶちが、上手いバランスで生えているいる三毛猫は、公園一のべっぴんさんでした。
しかし、べっぴんさんの三毛猫ですが、若い頃の艶やかな毛並みは、年老いたので少しぱさぱさしてきてます。
『三毛猫おばあちゃん』
真っ白な子猫が、とてとてと歩いてきました。
この春に産まれたチビ猫が、迷子になったのを助けた縁で、懐かれてしまったのです。
たまに遊んでやるのは楽しいのですが、今はそんな気分ではありません。
『忙がしいから、あっちへお行き』
暖かなお日様を浴びて、ゆっくりと毛づくろいしたいのです。
『遊ぼうよう~』
三毛猫おばあちゃんは、子猫ってものは言う事を聞かないと溜め息をつきました。
『お母さん猫に、遊んで貰いな』
ぺろぺろと背中を舐めながら、ペシッとしっぽを地面に叩きつけました。
『にゃん!』
しっぽに、じゃれつく真っ白な子猫を追い払おうと、激しく叩きつけると、喜んで小さな手でぱしぱししだします。
『仕方ないねぇ~! 子猫はしっぽにじゃれるのが好きだからねぇ』
毛づくろいを諦めて、三毛猫おばあちゃんはゴロンと横たわると、しっぽで真っ白な子猫を遊んでやりながら、うとうとし始めます。
『そう、私が産んだ子猫も、しっぽでよく遊んでやったよ』
三毛猫おばあちゃんは、夢の中で、若いべっぴんの三毛猫になってました。
『これ! ちゃんと言う事を聞かないと、猫さらいに三味線にされてしまうよ!』
三匹の子猫は、べっぴんの三毛猫に似て可愛らしく、人にさらわれないか心配で仕方ありません。
『三味線って、なに?』
チビ三毛猫に尋ねられても、本当は三毛猫もハッキリとは知らないのです。
『三味線って言うのは、多分……そう! 確か、ペン、ペンと鳴らす楽器だよ。
猫さらいは、特にお腹が白い三毛猫を狙っていると、私のお母さん猫から聞いたんだ。
お前達! 気をつけるんだよ!』
子猫達は、可愛く首をかしげます。
『お腹が白いと三味線になるの? じゃあ、黒猫やキジトラはさらわれないの?』
三毛猫は、人間に気をつけるんだよ! と注意したかっただけなのに、子猫達に質問責めにされて、うんざりしました。
『お昼寝を、ちゃんとしない悪い子猫は、猫さらいにさらわれてしまうよ!
三味線にされたら、きっと餌も貰えないし、きっと遊べないよ。
楽器なんだから、きっと毎日ペン、ペンと叩かれるんだ』
子猫達は、ゾッとしてお母さん猫のお腹の下に逃げ込みました。
『ちょっとばかし、おどかし過ぎたかねぇ~
ほらほら、お母さんの側にいたら、大丈夫だよ』
子猫達を舐めてやってるうちに、お母さん三毛猫も眠ってしまいました。
『三毛猫おばあちゃん! 眠っちゃったの?』
じゃれついていたしっぽが、動かなくなったので、真っ白な子猫は、つまんないなぁと思いました。
『おっぱいが飲みたいな……』
しっぽで遊んで、小腹もすいたし、お日様がぽかぽかしています。
真っ白な子猫は、三毛猫おばあちゃんさんのお腹をもみもみしながら眠ってしまいました。
お昼寝していた三毛猫おばあちゃんは、お腹をもみもみされて、うっすらと金色の目をあけます。
『何度言ったら、覚えるのかねぇ……私はあんたのお母さん猫じゃないよ……』
そう文句を言いながらも、起きるのも面倒になり、三毛猫おばあちゃんは、真っ白な子猫と一緒にお昼寝をしました。
海の見える公園で、年老いた三毛猫に寄り添って真っ白な子猫がお昼寝をしているのを見かけた人達は、猫はのんびりしてて良いなぁと羨ましく思いました。