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aotohana  作者: aotohana
8/9

高3*秋*冬


あの日の夜…思いきり泣いた


しばらく会わないって…いつまで?

別れたいってことなのかな。


泣きすぎて…心がぐちゃぐちゃになった

自分が悪いのに…。


今さら気づいても遅いよ。





秋が深まる…もう涙はでない。

公園のベンチ…先生がくるまでの時間、私はここでぼんやりする。


1人…あの日みたいに隣に彼はいないけど。





私の回答を採点中の先生。


「花ちゃん、彼となんかあった?」


「何もない…です。ただ…お互い勉強に集中した方がいいって…」


一瞬私を見て、また答案に視線を戻した。


「まぁ、確かに試験もうすぐだけどね。けど…これ簡単なミスばっかしてる」


答案を返された。ほんとだ…計算ミス多い。


初めてみる先生の厳しい表情。


「ごめんなさい…」


先生はため息をついた。呆れられたかも…。

自分がみっともなくて泣きそうになる。


「花ちゃん、別に俺怒ってないよ、心配してるだけ」

いつもの笑顔だ。


「たださ、別に受験だからって離れることがいいとは限らないからね、一緒に頑張れることだってあると俺は思うよ」


……。

けど、蒼叶は離れたがってた。

私は頷くしかできなかった。





模試の結果は、相変わらずC判定のまま…。

さすがにこの時期でヤバくないか?


あれから…花とは学校以外で会ってはいない。

俺…あのままだと感情ぶつけて、花をまた傷つけてしまいそうだった。

だから、花から逃げた。

試験が終わるまで…お互い離れた方がいいって思ったんだ。


花は小さくうなずいただけだった。


1番前の席…花のふわふわ揺れる結んだ先には、光るビーズがついている。


俺があげたやつ…今でも毎日してきてる。

胸が苦しくなる。


ビーズをつけてる花を見て、俺は毎日どこか安心してる。自分から離れたクセに、最低だな。



片瀬と笑い合う、花をみて、せつなくなる。

笑ってるのに…なんでなんだ…。

離れたこと、間違いじゃないって思えるのに。





C判定…この時期にヤバイ…。こないだやっとB判定まであがったのに。


隣町のS女ではなくて、K大に行くことをはっきり決めた。蒼叶とこうなったからではない。

その前から…やっぱり自分の意志で決めなきゃなって思ってたから。


蒼叶に甘えないで、私もちゃんとしたいって。


頑張らなくちゃ…。





あの日から、3ヵ月…もうすぐ冬…。

日があっという間に落ちて、夕方はもう薄暗い。

放課後の教室…



「ねぇ、花…田崎となんかあった?」


心配そうにユミちゃんが聞いてくる。


「ごめん、ユミちゃん…うまく言えないや」


さすがに蒼叶の話題が、私から出てないからユミちゃんが不思議に思うの、当たり前だよね。


それとも…ハセくんから聞いたのかな…。


「そっか…ハセくんも田崎が変だって心配してたんだけど、何にも言わないんだって」


…蒼叶。


「でも、田崎、志望大こないだD判定とったらしい、ヤバイってハセくんが心配してた」


なんで…?あんなに頑張ってたのに…。

離れてから、ひそかに彼を見ちゃってた。

気づかれないように…ただ見るだけ。

休み時間も、蒼叶はずっと勉強してた。


平気?だよね。





「花ちゃん、こないだ模試A判定だったって?頑張ったな。あ…でも油断はするなよ」


……。


「先生…離れてるのが辛くなったら…どうしたらいい?」


先生はメガネを外す。

休憩って合図だ。


「何?つらくなったの?」


優しい瞳で私をみる。お兄ちゃんいたらこんな感じなんだろうな。


「わからないけど…蒼叶に…会いたい」


「花ちゃん…分からないって言うけど、それつらいってことだから…」


涙がポタポタとスカートにおちる。

なんかとまんない…。


「つらいのよく我慢したよね、花ちゃん。その気持ちさ、正直に彼に言ってみれば?」


「でも…彼の迷惑になるから…」


「迷惑?彼がそう言ったの?」

私は首を横に振る。


「そう…言ってないでしょ、蒼叶くんは優しい子だから、きっと受けとめてくれるよ」


そう…彼はいつも優しい。

たくさん傷つけているのに…


「優しいから…だから私甘えて…」


頭ぐちゃぐちゃにされた。

「先生?」


「そう、甘えてたんだ?だったら、今度は花ちゃんが頑張る番なんじゃないの?」


頑張る?私が…?


あ…


「やっと笑ったね、涙ふいたら、続き始めるよ」


ありがとう、先生。

背中を押された気がした。






花のことを考えなくてすむように

ひたすら勉強した。

けど、なかなか結果はついてこなくてD判定。


正直だな…。結局忘れようとしても、心の奥にはいつも花がいる。






雪がしんしんと降り積もる。


月日はあっという間に流れた。

来週末が試験…



最後の模試はやっとB判定がもらえた。

推薦が決まったハセのスパルタ指導のおかげか…。

でも、やっとB判定って…正直焦る。自信ねぇ。


「蒼叶…やったな、俺のおかげだ、感謝しろ」


いいよな…決まった奴は…ノー天気で。


「合格できたら感謝してやってもいいけど…」


「マジ冗談…ふざけんなよ、お前」

ハセと俺はふざけ合う。





俺はハセとふざけてて…そんで…

何が起こったんだ?



「あ…蒼叶…試験頑張って欲しくて…」


目の前に花がいる。

学校なのに…みんな見てんのに…。


「わ、わたしも…負けないように頑張る…から、それで…あのこれ…ごめんなさい…」


最後の「ごめんなさい」はもうよく聞こえない。

声震えてる。


スカートを両手でくしゃくしゃになるまでつかんでる。手ふるえてっし…


あれ?前にもこんな花…


そうだ…初めてちゃんと話した時…


恥ずかしがりのくせに…ほんとな…


「花…ちょっと来て」





言いたいことたくさんあるのに…声が震えて言葉にならない。


うまく伝わらない…



「花…ちょっと来て」


蒼叶は私の腕を引っ張り教室から連れ出す。


遠くの方で、ハセくんと遊びにきていたユミちゃんが意味深に目を合わせ、笑った…ことを私たちは知らない。





屋上近くの階段…息が苦しい。


蒼叶にキスされてる。

「なんで…あんな…」

彼の瞳は揺れている…そして抱きしめられた。


やっぱり…離れたくないよ。

私も蒼叶を抱きしめる。


「花…」


またキスされた。キスの嵐だ…とまんない。

ドキドキ…心臓爆発しそうだけど…


すごく嬉しい。ずっとさみしかった…。


さみしかった?

そうだずっと私…蒼叶に触れて欲しくて…さみしかったんだ。


涙があふれて…こぼれ落ちる。





ひたすら…キスしまくって…そんで…


すっげ今恥ずかしい…

花も俺も…気持ち落ち着いたら…顔見れなくなった。



「あのさ…ごめんな…俺勝手すぎて」


「違うよ…私が甘えてたんだよ…」


「いや…だって俺あいつに勝手に妬いて…ガキすぎて」


「あいつ?」


「…先生、なんか大人だろ…あいつ。また離れてくんじゃないかって…」


蒼叶の本音…聞けた気がした。


「先生は先生だよ」


「うん…ごめん…俺…」


蒼叶の瞳が揺れる。





「私も…アヤって…」


アヤ…久しぶりに聞く名前に驚く。


「え?…俺、名前言ったっけ?」


「やっぱり…元カノだよね」


花の声、また震えてる…。また不安にさせてたのか…俺。


「噂またなんかあった?」


「違う…前に…教室で寝言で言ってた」


え?…寝言って…俺、ほんとアヤのこと考えたりなんて…


……。


「あ…いや、俺、アヤに大学生と浮気されたから、それで…花もって不安になって…だから…アヤに気持ちとかないから」


花が驚いて俺を見る。


あん時、好きな奴にフラれたことは言ったけど、大学生と浮気したからっては、そういや言ってなかったっけ…。


「私たち…なんかやっぱ同じだね」

花が今度は吹き出す。


同じ?


「だって、お互い、言えずにもやもやして…どうしていいか分からなくて…」


あぁ、そう言うことか…


「けど、やっぱ離れらんないんだよな」

俺がそう言って笑いかけると…


「うん」

花も笑い返す。


もう1回だけ…花にキスした。




教室に2人で戻ると…ひやかしが待っていた。

勢いで行動したけど…


恥ずかしくて…顔が赤くなる。


「蒼叶…なになに?長谷部からコクられたの?長谷部おとなしそうなのに、意外と大胆」


1人の男子がからかうと、まわりも笑い出す。


もうヤダ…

かけよってきてくれたユミちゃんが…怒ってる。


「あのね~」

ユミちゃんが発したその時だった…


「うるせぇよ、俺が花に告ったんだよ。隠してたけど、俺ら付き合ってっから」


クールな瞳で彼は言う。

周りがその発言にどよめく…。



恥ずかしい…けど…


「田崎、マジかっこいいね」

ユミちゃんが小声で私に言ってくる。


どよめきの中、彼と目が合う。

彼はいたずらな瞳で無邪気に笑った…。



恥ずかしい…


私の中…気づかないうちに彼に染まってしまう。

好きすぎてこわいぐらい…。




蒼叶の部屋…


久しぶりだ…ここ来るの。色々話したくて…今日はすぐに2階へ上がってきた。


「今日、学校で俺…ばらしちゃったけど…平気?」


私はうなずく。


「蒼叶は…学校では話さないの…内緒にしてるの嫌だった?」


揺れる瞳で私を見る。


「嫌っつーか、花が恥ずかしがりなの知ってたし、いいかなって思ってた」


「ただ…少し…学校でも話したいってことはあったけどな」


「ごめん…私、蒼叶といるとドキドキして…私じゃないみたいで…恥ずかしくて」


優しい瞳の蒼叶が頭を撫でる。


「分かってっから、大丈夫だし。俺がガキなだけだから…」


違うよ…蒼叶は優しいんだよ…。



「それより、教室で渡されたの、中ピアスだったけど、どうして?」


あの時…教室で渡したのは…ブルーのピアス。

蒼叶に渡せなかった誕生日プレゼント。


似合っていた左耳のピアスは気づいた時には

外されていたんだけど…


「蒼叶って名前、私の好きな色…これはね、前のピアスみたいに深いブルーではないんだけど、なんかね…すごく優しい色で…蒼叶に似合いそうって思ったんだ」


気づいたら蒼叶に抱きしめられていた。

蒼叶…少し震えてる…。



「すっげ嬉しい…ありがと…花…」




彼の左耳にはピアスが光っている

優しい彼とおんなじ色…空色のピアス。






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