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aotohana  作者: aotohana
7/9

高3*夏



「蒼叶…キスしてほしい…かも」


顔まっかにして、くりくりな目で俺を見上げる。


俺は彼女の唇をふさいだ。


吐息がもれる…けど、やめれなくて…

もっと欲しくて…





「蒼叶…」

彼女の腕がそっと、優しく俺を抱きしめた。


花…


俺、また…


間違ってない?






夢…


俺は何を願っているんだろうか…


無意識にため息がこぼれた



少し曇る…


そんな俺の朝…。







「今日うち来る?」


「いいの?」


やった~、嬉しい。

あれから、蒼叶のうちに遊びに行くことが増えた。


なぜなら…



タタタタタッ



「にいに、おかえり~…あっ、はなちゃん!」


「ママ~はなちゃんきたよ~」


健叶くんが、私のことをカナさんに教えに行く。

可愛い!!


「花…すっかりなつかれたな」


健叶くんの様子を見て、蒼叶が吹き出す。

呼ばれてカナさんも出てきた。



「はなちゃん、これ…」

健叶くんの手には、さっきまでなかった汽車のオモチャ。



「あ…健叶、花ちゃんに見せたかったのね。これね、蒼叶くんからもらった誕生日プレゼントなの」


「今日、これで遊ぼっか?」


ぱぁっと目が輝き笑顔になる。可愛い!!






健叶くん可愛かったな…


リビングで遊んで、落ち着いた頃、カナさんにバトンタッチして、私たちは2階に上がってきた。



「なぁ、保育科あっとこ、調べた?」



テーブルに参考書を出しながら、蒼叶が聞いてくる。

夏になり、そろそろ進路に向けて決めなくてはいけない時期になってたりする。



私は保育科のある学校へ進学したいって思うようになった。きっかけは、健叶くんだった…。

実際は、すごく大変で可愛いだけじゃ甘い考えなのかなって思うけど…



せっかく見つけたやりたいことだから、頑張りたいって思ってる。



「ん…まだ悩んでる。近くだとK大にあるけど、レベル高くて…。短大だと隣町のS女子かな…」



「蒼叶は?」


あ…ちょっと表情が曇った。


「俺は…家出たいって思ってる」


え?


こないだまで、まだ決めてないって言ってて…

初めて聞く彼の進路にびっくりする。



「とおく…遠くにいっちゃうの?なんで?」


慌てる蒼叶


「別にそんな遠くってわけじゃ…ないけど…ただ、やっぱさ…俺いると、カナさんと親父に気使わせるじゃん」



……。



「"叶"…俺と健叶っておんなじ一文字名前に入ってんだ。俺の…母親…ってか、そう言うのも嫌なんだけど…そいつがさ…俺の名前つけたんだ」


…蒼叶?


「で、再婚してやっと親父…苦労してたからさ…あいつとつながり切れて…幸せになったのに…俺に気を使って…弟とつながりができるようにって、カナさんと話合って一文字同じにしたんだ…」



笑ってるけど、なんか泣いてるようにみえる…。

胸が苦しくなる…。

そんな顔して笑わなくていいよ。



「切れたあいつとのつながりが…健叶までつながったようで…俺、自分の名前嫌い…」



「蒼叶…」


「そんな顔すんなって、別に仲が悪いわけじゃなくて…俺今の家族は大事に思ってる。でも、ちょうどいい距離に離れて、自分で頑張ってみたいんだ」



蒼叶が私の頭を優しく撫でる。

蒼叶の方がつらいのに…



なんでこんなに彼は優しいんだろ…。

なんだか泣きそうになる。




花は進学することを決めた。保育科…先生になりたいらしい。



なんか合ってる気がする。

子どもみたいな花は…子どもたちに囲まれて慌ててそうだけど…


芯はしっかりしてる…頑張れるやつ


俺はそう思うから…


彼女の決めた道を応援したいなって思う。







あ…蒼叶の瞳、優しい色に変わる


顔が近づいてきて…


キスされた


ほんと触れたのか分からないぐらいの


キス


……。


「送る」


すぐ彼は私から離れて、パーカーをはおる。


「うん…ありがと」



あれ…変なの…なんか…さみしい?






公園…噴水の音が暑さを和らげる。



「あのね…来週から、知り合いの先生が数学教えてくれることになったの」


「知り合いの先生?」


「うん。T大生で、母親と同じ職場の方の息子さんなんだって」


……。


「毎日?」


「あ…ううん、毎日じゃなくて…月水金だけ」


「そっか…いい人だといいな、T大ってマジ頭いいじゃん」



花は数学が苦手だ。他の教科は平均はこえてると思う。K大を目指すって決めた花は、苦手な数学をなんとかしなくてはならなくなった。





校舎裏…


「俺…好きなやついるから」


俺の発言に、目の前にいる子の表情が曇る。



こういう時、なんか俺も気持ちが曇ってしまう。



最近、なんか告られること増えてね?

あんな噂たってんのに…

色んな女と遊んで…やって飽きたら捨てるだっけ?



「どうだった?」


ハセが意味ありげに聞いてくる。

さっきハセといる時に、あの子に声かけられたから、バレたか。



「どうって何が?」


「お前、相変わらず涼しい顔してんな…。この顔が実は彼女のことしか見えない一途な男だって…知ったらみんな驚くだろうな」



ハセは楽しそうだ。真実を知ってるから…余計噂が楽しいらしい。



「なんで…俺なんかいいんだか…」


ため息をつく俺に


「さあな…まぁ、お前顔はムダにいいからな。自分だけは特別になれるんじゃないかって思うんじゃねぇの。遊んでるってことは、本命いないってことだろ?」



ムダにとか言うな…自分では好きじゃねぇし、別に。


「よくわかんねぇな」


女心というやつは…いつもよく分からない。

俺と花は今でも付き合っていることを、学校のやつらに知られていない。


だから…告られたからと言って


「花と付き合っている」


とは…言えない。


「好きなやつがいる」

それが嘘ではない、伝えられること。


「ハセ…花に変なこと言うなよ」


俺はハセと片瀬から、このことが漏れないように釘を指した。







「先生…教育学部なんだって…でね、実習の話とか…」


「蒼叶?」


ぼんやりしている俺に気づき心配そうにのぞきこむ。



家庭教師の奴は…いい奴らしい。

厳しい感じではなく、間違っても優しく何度も教えてくれるから、緊張しないって。

確かにスパルタだと花はびくつきそうだ…。


俺もそんな話を聞いて安心していた


はずだったのに…。



きっかけは土曜のデート。

久しぶりに映画みて、駅をぶらついていた。


人混みから花がある男を見つける。その男も花に気づき…



「先生…買い物ですか?」


先生と呼ばれた男は大きな紙袋を持っていた。長身で眼鏡をかけ、どこか落ち着いた雰囲気だった。優しそうな印象を受ける。


「あ、花ちゃん…これ?実習で使う資料買いにね」


あ…俺に気づいたその男は


「花ちゃんも友達と買い物?」



は!?

休みに2人で遊んでて普通そうは思わないだろ…



「あ…はぃ」


顔を赤くしながら、曖昧な答えをする花。


正直ちょっと面白くなかったり…する。





蒼叶…話をしていても…どこか上の空。


心配になって聞いてみる。



「蒼叶、なんか元気ない?」

私の問いかけに…


「や、ちょっと眠いだけ。別に平気だし」

柔らかく笑いかける。


ほんとだ、ちょっと目が赤い。蒼叶は隣町にあるF大に進路を決めた。そこは学生寮がある。

でも、それだけじゃなくて…なんか医療の分野に興味があるらしい。リハビリとかの理学療法とか。



初めて聞いた時は寮に入ったら、会えなくなるんじゃないかって不安だけが込み上げてきた。

電車で1時間、乗り換えて1時間半…バスでさらに1時間の距離にある。

彼はそんな遠くないって、言うけど…なんかさみしくなった。



私も隣町にあるS女にすれば、だいぶ近くなる。けど…K大はさらに多くのことが学べそうで、今はレベル高いけど頑張りたくて…


迷ってる。



「花…」


ふいに呼ばれて、軽くキスされた。



「お互い、受かるように頑張ろうな」


頭をくしゃくしゃって撫でられて…


無邪気に笑う蒼叶が…なんかせつない。






月水金は例の先生がくるから、放課後は会えない。


学校では基本話さないから

そうすると1日話さないわけで…



花と話す時間はだんだん減っていった。

俺も勉強しなきゃいけねぇし…。



花の中に「先生」の話題がでてくることが徐々に増えていった。

久々に2人になれた時に、あいつの話題が出てくると、俺の心の奥…嫌な感情がわきあがる。



花が頑張ってんのに…すげぇガキくせぇ。

こんな感情、知られたくない…。






「あの人は大人だよ。優しいし。蒼叶みたいに、つまんなそうじゃないし…蒼叶は…私に手ださないじゃない。キスばっかで…あの人は違うもん」



花が俺に言う。

違う…お前がそんなん望んでない…から…。



「大学生と遊んだの」



なんで…信じてたのに

今度は違うって…



「蒼叶…別れて」


いやだ…なんで…俺…


あ…違う、これ花じゃない。


「アヤ…」




月曜日、今日は先生が来るから早く帰らなくちゃいけない。蒼叶と会えない日。



蒼叶は私よりずっと大人だ。

色々悩んだりすることってあると思うのに…

弱音吐かない。


家族にも、好きだった人にも…自分を悪くして周りに優しい。


進路もしっかり自分で決めて前を向いて歩いてる。

私みたいに、彼と離れたくなくて進路を迷ったりしてない。


私も頑張らなきゃって思う。


放課後、早く帰らなきゃだったのに、進路のことで担任に呼び出されてしまった。


教室に戻ると、蒼叶が窓際、後ろの席で寝てる…。

風に吹かれて、机にだしたままの参考書がパラパラめくられる。


「蒼叶…」


返事はない。

偶然できた、2人きりの時間がすごく嬉しい。



「アヤ…」


え?

いきなり名前を呼ばれてびっくりした。

蒼叶はそのまま寝息をたてていて…。



私はそのまま教室から離れた。





アヤ…って元カノの名前かな…。


もうそういう気持ちはないって言ってたもん。

大丈夫…信じてる…。


けど…


「…なちゃん、はなちゃん?」


「あ…ごめんなさい、先生」


問題解かなきゃいけなかったのに…。

解答欄は真っ白で全然進んでない。


「花ちゃん、少し休憩しよっか」

先生はメガネをテーブルに置いて軽く伸びをする。



「花ちゃん、夏少しは遊んだりしてもいいと思うよ。息抜きっていうかさ」


「はい…」


やっぱ先生、優しい。


「あ、この前の友達とは何して遊んでたの?ほら、駅で会った…」


あ…蒼叶のことかな


「映画みたり…とか…あ…あの友だちじゃなく…て…か…彼氏…です」


言ったら、恥ずかしくなってきた。彼氏って誰かに言うの初めてだ。


「あ…ごめん、そうだよなぁ、あ~ごめん。だったら彼氏怒ってなかった?」


怒る?なんで…?


「いやさ、俺けっこう男女問わず高校ん時遊んでたから、その感覚で言っちゃった」


先生は申し訳なさそうに言うけど…

意味がよく分からない。



「何を言ったんですか?」


「ほら、花ちゃんの"友だち"ってさ、彼のこと俺言っちゃったよね…」


あ…そう言えば、そう言われた気がする。

あの時も、彼氏って言うの恥ずかしくて言えなかったんだ。



蒼叶…怒ったりしてないと思う…けど。


「平気みたい…です」


「ならよかった。確かにクールそうな子だったよね

、彼氏かなりカッコいいからモテるでしょ」


「はい…モテます」


「いいな、俺高校ん時彼女…他校だったから、放課後しか一緒にいれなかったんだよね、学校でも一緒にいれるんじゃ、花ちゃん今楽しいな」


昔を思い出し懐かしそうに、笑顔で先生は言う。



……。


「学校では蒼叶と話さないから…」


私のこの発言に先生は驚く?


「なんで?」


なんでって…。


「は…恥ずかしいから」


私、蒼叶の前だとすごくドキドキして…

自分じゃなくなっちゃって…恥ずかしくて


毎日蒼叶のことばっか考えちゃって…

みんなに、そんな姿見られたくない…。



こんな子どもみたいな私と、付き合ってるなんて

蒼叶もきっと恥ずかしい思いする…。



先生はポンって優しく頭を叩いた。


「俺にはよく分かんないけど…、花ちゃんがそうしたいって言って、怒らないでちゃんと向き合ってくれる彼…蒼叶くんだっけ?いい子だよね」


……。


「あ…ヤバイ、休憩終わりにして、ここだけ最後やろう」



どういう意味?






模試の結果…C判定。

最近けっこう勉強してたつもりでいたけど…冬までなんとかできっかな…俺。



「ハセ、お前どうだった?」


ハセは堂々と見せてくる…


模試の結果の用紙には

AA…Bの文字。そもそも、ハセは推薦で体育大希望だが。頭も普通にいい。



「お前、部活あんなにやってたのに、すげぇよな」


夏で引退したけど、野球部でキャプテンだったりする。


「女遊びばっかしてる、お前とは違うからな」



「別に遊んでねぇし、最近…花とも、ちゃんと会ってねぇしな」


無意識にため息が出てしまう。


「たまに…充電してみたら?そろそろ、お前限界なんじゃねぇの?」


こういう、いたずらめいたハセは…

ムカつく…マジで。


「お前こそ、そろそろ行動起こせば、硬派なハセくん」


ハセの顔が一瞬赤くなる。

長年の付き合いだ、俺のことが全てハセにばれるなら、ハセだって俺に隠せる訳がねぇんだよ。


「ほら、片瀬きたぞ」


……。



片瀬は隣のクラスだけど、しょっちゅう花んとこ遊びに来る。

まぁ、花に…ってだけではないんだろうけど。

マジメで野球バカなこいつが、最近意識しだして…俺はそんなハセの反応を1人楽しんでいる。





「花~、なんかハセくんと田崎笑ってるよ、楽しそう、何話してるんだろうね」


ユミちゃんが今日も私のクラスに遊びに来てる。


窓際の席…ほんとだ笑ってる。

なんだか楽しそう。学校で蒼叶と話せないけど、こういう姿見れるから、一緒の学校、同じクラスは嬉しい。



昨日先生が言った意味…


付き合ってるのに、

学校で話さないのって、やっぱ変なのかな…

恋人同士って普通は自然に一緒にいられるのかな…


みんなどうなんだろ…


あ…蒼叶と目が合う


3秒…

強い瞳…意思を持ったクールな瞳


すぐに蒼叶は私からめをそらす

そして何事もなかったかのように、ハセくんと笑いあっていた。





「ねぇ、ユミちゃん…もし…もしさ、ハセくんと付き合ったら、学校のみんなに言う?」


突然の質問にユミちゃんの頬がピンク色に染まる。

可愛い…。

ユミちゃんは、高2の時からハセくんに片想いしている。蒼叶にも言えない2人だけの秘密。



「付き合うなんて…こと…ないって思うけど…」


ユミちゃんの声のトーンは低くなってしまった。


「でも、もし…もしだよ…そうなったら、自分でははっきり言わないかもだけど、周りに知られてもいいって思うよ。別に悪いことしてるわけじゃないし」



「あ、でも、もし言ったら、ハセくんに言うなって怒られそうだけど…ハセくんマジメすぎるからな」



そう言ってユミちゃんは笑う。

飾らないユミちゃんが遠く感じて…キレイ…。


「じゃ…学校ではいつも通りにしてって、お願いされたら?」


「ハセくんに?ん~、そしたらそうするかも…。けどすごくショックだな、それ言われたら。私が思うほど、ハセくんは私のこと好きじゃないんだって思っちゃうもん」


表情がみるみる曇る私にユミちゃんは慌てる。



「あ…まぁ、想像の話だから。花と田崎は2人のちょうどいい距離ってあるよね。田崎も知られたくないって感じなんでしょ。まぁ、あいつ、クールだしね」


ユミちゃん…あのね…


私からお願いしたんだ「恥ずかしいからって」

「学校で一緒にいれないって」…


蒼叶は「分かった」って言ってくれたけど…

蒼叶の気持ちは聞いてなかった。


私からお願いして、いつも私に合わせてくれて

優しくて…



私…ひどいことしてた。




「はい、花これ」


可愛く包装された小さな袋をユミちゃんが渡す。


「少し早いけど、休みの日だと渡せないから。おめでと」


袋から出てきたのは、リップグロス…優しいピンク色…。


「ユミちゃんありがと~、可愛い色だね」


今週日曜日が私の誕生日。

日曜日…先生との勉強が夕方からある。都合で金曜日ができない分だった。

蒼叶と約束してたから…断りたかったのに…母親がお願いしてるのに悪いからって許してくれなかった。




「たまに…充電してみたら?そろそろ、お前限界なんじゃねぇの?」


充電ってハセは言うけど、今花に触れたらもっと欲しくなる。


最近ちゃんと会ってないから余計にだ…


感情を吐き出すように、俺は大きくため息をついた。






日曜日…蒼叶がうちに来ている。

母親が色々質問するから…蒼叶…どうしていいか分からなくて「はい」とか「いえ」とかしか言えてない。



…私の部屋。なんか部屋を見られるのってすごく恥ずかしい。変じゃないかな…。


部屋に入った蒼叶の表情はいつもと違ってかたい…


「マジ…緊張した…全然話せなかったし」


やっとほっとした表情に変わる彼がなんかおかしい。


「お前…なに笑ってんだよ」


「だって…母親が部屋に入る前に


『とっても静かな子だけど、いい子ねって』」



そっぽをむくけど、蒼叶の耳真っ赤。

可愛い…。




ケーキ食べてたら、ラッピングされた小さな箱を渡された。


箱の中には、たくさんビーズがついたゴム。

ブルーやグリーンでキラキラきれい。

涼しげだ。公園の噴水みたい…。


「可愛い…ありがと、蒼叶…」


「別に、たいしたもんじゃないけど…」


笑う蒼叶の瞳が優しい。


蒼叶の手が私の頬に優しく触れて…

私たちはキスをする。


いつもより少しだけ長めのキス


ドキドキする…


でも、蒼叶は途中でキスを止めた。

彼は唇をぬぐう。そして指で私の唇も…。


「つけたまま、勉強すんなよ…」


私の頬はみるみる赤く染まる。

今日はグロス…ユミちゃんからもらったの…つけてたんだ。


気づいてないって思ってたのに…。




軽くって、思ってたのに

花の笑顔が可愛くて…


花の唇は色づいている。なんかつけてんだよな…

似合ってるけど…


夕方…もうすぐあいつが来る時間だ。


俺は花の唇を指でぬぐった。

あいつには見せたくない。






時間より早めに来たあいつと、帰ろうとしていた俺は玄関で会うことになる。


「あ…俺タイミング悪かったかな…」


俺は軽く会釈する。


「あの、これよかったら、はなちゃんと食べて下さい。今日誕生日でしたよね?」


白い箱を花の母親に渡す。


「まぁ、先生…気を使わなくていいのに…」


母親とあいつは自然に笑い合ってる。母親も信頼してるって感じだ。


「あれ、花ちゃんの頭可愛いね」


花の髪の毛には、俺があげたゴムが光っていた。


「花…そんなキラキラしたのつけて学校行ったりしないでよ…もうほんと子どもっぽくて困っちゃうんですよ、先生…」


「でも…僕は似合ってるし、可愛いと思いますよ」


……。


2人は笑い合ってる。

こんな感情嫌だ…


「花も早く準備しなさい」


「あ、そうだ蒼叶くんもよかったら、これ持ってって」


なんで俺の名前…花があいつに言ったのか。


「いや、平気です、じゃ失礼します。お邪魔しました」


「あ…蒼叶…」


花は何か言いたそうに俺を追いかけてきたけど、


「勉強頑張れよ…俺も頑張るから」



心の奥から感情があふれでそうで…

笑ってそう言うしかできなかった。





お母さんのバカ!!


蒼叶からもらったゴムすごく可愛くてキレイ

私すごく嬉しかった…


なのに…蒼叶の前でひどいこと言った。




学校…休み時間。

蒼叶はいつも通り、ハセくんたちと笑いあってるけど…。


昨日のこと…謝らなくちゃ。

でも、今日も先生との勉強の日…。


「花~頭可愛いね」


ユミちゃんが蒼叶からのゴムに気づく…


可愛いよね…

なんか泣きそうになった。




火曜日までがすごく長く感じた。

公園のベンチ…夕方は肌寒い。


もうすぐ夏が終わる…


「蒼叶…こないだ、ごめんね」


「別に気にしてねぇよ」


優しい蒼叶は私に笑いかける…

私…いつも彼の優しさに甘えてばかりだ。



「あの、蒼叶…学校で…」


話かけてもいい?


「あのさ…俺たちしばらく会うのやめない?」



私が悪いんだ…

自分のことばかりで、甘えてたから。

彼が私から離れていく…。


涙がでるのを…私は必死にこらえた。


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