高3*aotohana
☆
部屋に入ったら涙とまらなくなった。
すごくこわい
会ったら「別れよう」って言われそうで…
蒼叶に会いたくない。
朝…起きようと思ったけど、起きれなかった。
寝れなかったせいかなって思ったけど…
なんか身体あつい…
そのまま高熱を出して私は寝込んでしまった。
☆
学校を3日も休んでしまった。37°2…まだ熱っぽい。
彼と会わなくてすむのは、正直心のどこかでほっとした。でも、時間が経つと、余計にどうしていいか分からなくなってしまう。
ほっとしたり、悩んだり…いっそ考えるのをやめてしまいたいのに…
彼の優しい瞳を思い出して…
会いたくなる…
矛盾してる。
最後に見た、彼の揺れる瞳は…どうして?
何を考えてたの?
あれぐらいで、泣くなんて
蒼叶は呆れたのかも知れない。
私が子どもすぎて…。
☆
夕方…熱このまま下がらないといいな…。
心が不安でいっぱいなる。
「花にも俺ってそういう奴に見えるんだな…」
私ね、蒼叶を好きになって、付き合うようになったら…キスしてた彼女にやきもち妬いてた。
あ…違うや…蒼叶がキスした事実が悲しかったんだ。
私と付き合う前のことだから、しょうがないのに。
慣れてる蒼叶が悲しかった…ぎゅって苦しくなるんだ。
やっぱり、蒼叶のこと信じきれてなかった。
噂を聞いて…分からなくなった。
蒼叶が怒って当然だ。
ちゃんと、彼に聞けばよかったのに、勇気がなかった。
彼のこと、ちゃんと知ろうとしなかった。
スマホを無意識に触ってる。
何を期待してるんだろ…
彼からのメールはない。
☆
身体が熱をもってて…うとうと…考えることができなくなった時…
スマホが鳴った。
一気に現実に戻る。あわてて画面をみると…
ユミちゃんからのメールだった。
「具合どう?なかなか熱さがらないんだよね、心配だよ ( ノД`)今日お見舞い行っても平気?」
「心配ごめんね。お見舞いいの?ありがと(^_^)v」
ユミちゃんにホントは相談したいけど…
やっぱダメだ…。なんか、相談しちゃったら、蒼叶と戻れない気がする。自分で考えなきゃ…。
☆
「花~入って平気?」
数回のノック、ユミちゃんの声が聞こえた。
パジャマ姿だけど、いいよね…カーディガンだけはおる。
ベッドから立ち上がり、ドアをあけると、ユミちゃんがいた。
「花~平気?まだ熱あるの?あ、ゼリー買ってきたから食べてね、食欲ある?」
「熱はまだちょっとだけ、でも元気だよ~、あっ、ゼリーありがと」
どれがいい?これ?ユミちゃんと選んでいると…
「おい、片瀬、俺たちいつ入ればいいんだよ」
ハセくんが顔をのぞかせた。
「ハセくん!?え?ユミちゃんと来てくれたの?」
ユミちゃんとハセくん、いつの間に仲良くなったんかな…。
「あ~そうだった。ねぇ、ハセくんと田崎も部屋入れてもいい?嫌なら帰らせるから」
田崎?…今、ユミちゃん、蒼叶のこと言った…?
まだ、心の準備できてないのに…
どうしよ…私がうつむいて答えないでいると…
「なぁ、やっぱ蒼叶帰るって」
あ…待って…違う
「入っていい…入っていいよ」
★
学校…花の姿はない。風邪をひいたらしい…。
今日ちゃんと話そうって思ってた…
けど、次の日も花は休みだった。そして次の日も…。
軽い風邪だと思っていた俺は、心配になった。
片瀬に聞いたのが間違いだった…
「え?田崎、花に連絡もしてないの?」
怒られた。冷たすぎるって。
で、見舞いに行くから一緒にこいって言われた。
半ば強引にハセと俺は連れてこられた。
正直心配してた。
けど、あんなことしたから…
家にくるとか、さすがに…どうかと思うんだけど。
あいつの具合がよくなったら、直接話すつもりでいたのに…
★
俺がいることを知った花は…
やっぱり会いたくない様子だった。
だよな…
当然なのに…胸が痛む。
まだ熱っぽいみたいだけど、顔を見てほっとした。
早めに切り上げて帰ろうとした…のに…
「あ…、蒼叶…」
花の声が聞こえた。
☆
気づいたら呼び止めていた。
蒼叶と目が合う…まだ瞳揺れてる…
「片瀬、帰ろうぜ」
ハセくんがユミちゃんを連れて部屋を出てった。
パタン…ドアが閉まる。
……。
私たち黙ったままだ…。
だって、何て言っていいか分からない…
★
花の瞳がなんだか熱っぽい…
「なぁ、寝てた方がいいんじゃねぇの?」
「平気、ゼリー食べる」
「蒼叶はどれがいい?私はぶどう」
俺はコーヒー、花はぶどうのゼリーをゆっくりスプーンですくい食べる。
「おいしい…」
花が言ったのはそれだけで、後は黙ったままだ。
気まずいはずなのに…
小さなテーブルに向かいあって、無言でゼリーを食べている…なんかダメだ…
「ちょ、蒼叶、なに笑ってんの?」
「だって…お前、どう考えたって気まずいだろ、なんで俺たちゼリー食ってんだよ」
「だ…だって、ゼリー好きだし…」
笑う俺と、そんな俺に戸惑う花の目が合った。
☆
あ…蒼叶の瞳が優しい…
私が好きな瞳…
「花…俺のこと、こえーって思う?やっぱ、あんなんして許せないよな…」
声優しい…。
こわくない…。今はこわくない…けど、あん時は…
こわかった。
「俺さ…花と…」
こわい…別れたくない…
「別れる気ないから」
え?
…彼をみたら
「許してくれるまで、待ってる…」
笑った。優しすぎて…涙がこぼれた。
「わ、わたしだって…わかれ…たくない」
「ごめん」
★
花は泣いた…。
ほんとは…涙ふいてやりたいけど、抱きしめたいけど…さわれない。
怖がらせるような気がするから…。
「花、横になっていいよ」
なんだか顔が赤い気がして…
ぜってぇ、熱上がってると思うんだけど
でも花はイヤだと言う。俺が帰るからだって…
はぁ…
「花、俺いるから、とりあえず、布団はいって」
話さないと何にも変わらねぇから…
花が布団に入ると…花から離れて俺はドアの近くに
座り直す。
「花…俺さ…」
☆
別れる気ないって言ったよね…
でも、蒼叶は私から離れる…
距離をとろうとする…
また少し不安になった。
こわいって思ったのに…
あの時はこわいって思ったのに、今はぎゅってして欲しい…
私…変だ。
★
花は黙ったまま…俺の話を聞いていた。
「俺さ、昔…好きな奴いてさ…」
気持ち分かってやれなかったことで、傷つけていたこと。
別な子と付き合っても、どこか自分が中途半端だったこと。
そして…花をちゃんと好きになったこと…。
「ねぇ、その子のことまだ好き?」
「…もうそういう気持ちはない」
「そっか…」
☆
蒼叶の話…彼が好きだった子の話。
ほんとは、聞きたくなかった。
ちょっぴり悲しかった。
けど…やっぱ聞けてよかった…。
そして…
「遊んでる奴」…そんなことなかった。
彼はクールでそんな風に見えないけど…実は傷つきやすくて、不器用なのかも…。
同じ…。
私たちの恋愛…おんなじだ。
違ってなかったんだよね?
★
「蒼叶…こっちきて…」
…?
花に呼ばれて、近づく。
「あ…あの…」
顔まっかにして
「キ…キス…して…ほしい…かも」
は?
……。
「私も…してほしいこという…た…たまには」
あー、もうっ…こいつ自覚あんのかな…。
今どんな顔して言ってるかって。
俺は彼女の唇に触れた。
軽いキス…
瞳が重なる…なんか照れてしまう。
「なぁ…もいっかいだけしていい?」
恥ずかしそうに、小さく彼女はうなずく。
☆
2回目のキスはすこし長めのキス。
ドキドキが聞こえちゃうんじゃないかって…思う。
あ…、コーヒー…?
キスが終わると、彼は無邪気に笑う。
「マジ…ぶどう味」
蒼叶の発言に、私の体温はさらに上がった気がした。
きっと…明日も休みだ…。




