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aotohana  作者: aotohana
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高3*春


蒼叶は優しい…


最初は…あんなにこわいって思ってたのにな。


黒髪の奥にのぞく、するどい瞳も今は優しい瞳に変わる。


付き合ってからも、前とあんまり変わらない関係。


いろんなことに、ドキドキしっぱなしの私には…


ちょうどいい関係だったはずなのに…。


彼の恋愛と私の恋愛…違うのかな…。






高3、春。


俺とハセ、花は1組、同じクラスになった。

片瀬は2組になり、残念がっていたけど。


ちなみに友也は3組…俺は心底ほっとしている。



ホームルーム。

1番前の席に座る、花の後ろ姿を俺は眺めていた。

ひとつにまとめられたふわふわな髪。



あいつと一緒の教室にいるって、変なかんじだ…。





花と俺は付き合っている。


けど…


学校ではほとんど話すことはない。

付き合う前とたいして変わらない関係。


俺は別に知られても気にしねぇけど…

花のやつが、うるさい。


恥ずかしいらしい。


ったく…まぁ、らしいっちゃ…らしいけど。




公園、花を待つ。

俺をみつけると、急いでかけてきて…第一声


「一緒のクラスになれたね」


そして無邪気に笑う。


……。


俺のタイプってこんなだったんかな…。

こいつのこういうとこ…すげぇ可愛い…。


俺は平静を装う。


「あぁ、でも学校では話せねぇし、前とたいして変わんなくね?」


「ん…そうだけど、でもなんか嬉しいよ」


自覚あんのか…。




蒼叶と同じクラスになれた。すごく嬉しい。

ユミちゃんと離れたから、それはすっごく悲しいんだけど…でも、ユミちゃん、ハセくんいるから、毎日遊びにきてくれるって。


私じゃないんだってつっこんだら、笑ってた。


やっと名前で呼べるようになった…蒼叶との関係が少しは近くなるんじゃないかって…思うんだ。


だってまだ彼のこと、全然知らないから…。





「よかったな…一緒のクラスで」


ハセがちらっと花を見た後、意味ありげに言う。


「お前とか?高校3年間一緒って、ある意味すげぇよな」


ハセは俺たちのことを知っている。あと…片瀬も。

なんつーか、付き合うきっかけをくれたやつらだ。

分かってて、こいつは言ってくるんだ。



「でもさ…長谷部、笑うと可愛いよな、これ結構まわりのやつ、言ってる。野球部のやつらも。」



知ってる…前はほとんど男と喋ってるとこなんか見たことなかったのに…。



最近は俺で慣れたのか、男とも自然に話せるようになっていた。まぁ、自分から話しかけることは、ほとんどねぇんだけど…。


「でも、お前もな」


「は?意味わかんねぇし…」


「いや…な、西女の1年夏帆ちゃんと野球部で噂になってっぞ」



夏帆…?

あぁ、あいつか…マジかよ。


「俺、別に夏帆には、手だしてねぇよ」





あいつと別れてからの帰り道で、夏帆が声をかけてきた。


「蒼叶、久しぶりだね、元気だった?」


俺は一瞬みただけで、そのまま無視して歩く。


「ちょっ、蒼叶…ひどくない?」


「うるせぇ…お前と噂になってんだよ」


「あ…怒るってことは、新しい彼女できたとか?」


…めんどくせぇ。

俺が答えないでいると、夏帆はさらに話続ける。


「ねぇ、彼女とはもうHしたの?」


は?お嬢様学校が何いってんだか…。


「お前には関係ねぇじゃん」

俺は夏帆をにらみつけた。


俺の苛立ちを感じとったのか、


「まぁ、あれだよ、心変わりされないようにね」



…夏帆の意味を含んだ発言に、ピリッと俺の周りの空気が変わる。


言うことだけ言って、あいつは去っていった。






土曜日…初めてのデート。

電車で1時間…。

進学校…北校の近くにある、大きな公園。



桜が咲いててすごくキレイだった。

いつもの公園とは違って…造られた小さな滝の中を通れたり、子どもが水遊びできるような小川もあった。



ひと通り園内をまわって、ご飯を食べる頃…ポツリポツリと降りだした雨。





「けっこう降ってきたな」


隣接するファーストフード店で昼を済ませているうちに…やむかなって思ったけど、


期待ははずれてしまった。


電車のホーム…ベンチに座って待つ。

さっきまであったかかったのに…風が吹くと肌寒さを感じた。



「花…寒い?これ着てれば…」


グレーのパーカーをかけてくれた。


蒼叶の方を向くと目が合い…

優しい瞳に変わる。


この瞳をみると、私はすごくドキドキしてしまう。

そして、やっぱり彼が好きだなって思う。


「ありがと…蒼叶、あの…すきだよ」


今度は蒼叶が私の方を見て…そのまま…キスされた。


初めてのキス…。





!?


学生の笑い声。北校の集団が階段をのぼってきた。


私は慌てて、蒼叶から離れる。今になって恥ずかしい…顔が赤くなる。




「俺…飲み物買ってくっから…」


蒼叶は自販機に行っちゃった。





あいつ顔まっかだし…


すげぇことした気分になる。俺までなんか恥ずかしい気持ちになってきた…


マジか…



「心変わりされないようにね」


ふと、夏帆の言葉を思い出す


花はあいつと違って、そんなん求めてねぇんだよ





眠ろうと思うのに…


はぁ…


なんかドキドキがとまらない





昨日まで、あんなに幸せな気分だったのになぁ…


また、蒼叶の噂を聞いちゃった。


私の他に、遊んでる子いないかな…

私と付き合うの嫌になったりしないかな…


不安になる。



公園…


「蒼叶…あの…」


「…なに?」


…やっぱり怖い…。


「ううん、何でもない」




「なぁ、蒼叶…余計なお世話かもしんねぇけど…

長谷部、不安になってるみたいだぞ」


ハセからの思いがけない言葉



「は!?何が不安?俺なんかしたっけ?」


あきれた様子でため息をつくハセ。


「お前の、女遊びだろ、原因どう考えても」



最初にこみ上げたのは、怒り…


なんでだよ…


不安なら直接俺に言えばいいのに…。



「あ…お前、キツくあたんなよ、長谷部が悪いわけじゃないだろ」


俺が不機嫌になったことで、あわててフォローするハセ。





花は笑ってる。クラスの男と…

俺だって不安にならない訳じゃない。


同じはずなのに…


無邪気に笑う花を見ると…







今日は、公園じゃなくて駅で待ち合わせ。

彼のうちでテスト勉強するから。


前々からの約束だった。私は数学が苦手、彼は国語と英語が苦手だ。得意科目と苦手科目がお互い反対で、教えあう。




彼の家に向かって歩いている。

……。


蒼叶黙ったままだ。



「ここ、俺んち…」


シンプルな外観のおうちだった。

ヤバイ…なんか緊張してきた。


玄関の鍵をあけると、リビングから、お母さんがでてきた。優しそうな、笑顔の素敵なお母さんでほっとした。


「はじめまして…あの…これよかったら…」

クッキーを渡した時だった…


タタタタタッと走ってくる音


「にいに~お帰り」


え?にいにって?


「あ~健叶、兄ちゃん今日は遊べないから、後でな」


蒼叶が目の前にいるちっちゃな男の子に話かけてる。


「健叶、お姉ちゃんから、お菓子もらったから、食べようか」


蒼叶と遊べないことに、ぐずる健叶くんを、お母さんはなだめていた。


お菓子と聞いて、目を輝かせた、ちっちゃな男の子

お姉ちゃんにありがと言ってねとママに促されて

「ありがと」


可愛い!!


「じゃ、カナさん、俺たち上で勉強するから」


カナさん…?



蒼叶に呼ばれ、私も階段をのぼった。






「蒼叶、弟いたんだね」



「あぁ、言ってなかったっけ、親父が再婚して、今あいつ3才…なんか俺になついてんだよな…」


笑顔で言う蒼叶。

そうだったんだ…再婚か…知らなかった。


「健叶くん、可愛いね」


「いや、大変だぞ。毎日あれしろ、これしろっ…ってさ。共働きだから、夕方は俺が子守りだし。」


……なんか意外。だって、優しい顔してる。

お兄ちゃんの顔だ。





蒼叶の部屋は、きれいに片付いていた。

余計なものがまったくない…。


勉強も一通り終わり、ちょっと休憩。

弟くんの話をした時は、普通だったのに。また黙ってしまった蒼叶。



「なぁ、お前不安になってるって?」


「え?」


突然の質問にビックリした。


「なんで、俺ハセから聞かなきゃなんねぇの」


低い声…怒ってる…するどい瞳がこわい。


「ん…ごめん。ユミちゃんにちょっと相談して。

あの、噂聞いて…」


「噂って、夏帆との?」


夏帆って彼が呼んだことにドキッとする。だって、私が聞いたのは、西女の1年の子ってしか…。


黙っていると…


「俺、夏帆に手だしてねぇよ、花にも俺ってそういう奴にみえるんだな…」


するどい瞳がこっちを見る。



「だって…」


元カノとのキスとか見ちゃってて…信じてるけど…

なんか不安で…


蒼叶は、私とはなんか違って…


……。






蒼叶の顔が近づく…


キスされた…


苦しくなって息がもれる…


変?だって蒼叶のキスとまらない…から。



もうムリ…心臓爆発する。


少しずつ、長くて深いキスになる。



蒼叶の手がいつのまにか、制服から中に入ってきて…私の肌に触れる。


こわい…やめて…


「やめて、蒼叶…お願い…」


泣き出した私に、彼の怒った表情はもうなくて…


彼の瞳が傷ついたように揺れていた。




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