高2*冬
☆
田崎くんってよく分からない。
告白?
ううん、違うよね。
だって、そういうのめんどくさいって言ってた…。
それに…
キスしてた…泣かせてた…浮気したって笑ってた…次々と私の頭に浮かんでくる彼の姿…。
わかんないよ。
★
公園…すっかり葉が落ちてしまった木々がどこか寂しげだ。
それに…噴水も冬のあいだはとめられてしまう。
寂しさを増した公園にくる人は、秋に比べ一気に減ってしまった。
相変わらず、この公園に俺は来ている。
あいつに会うために…。
「長谷部…俺と付き合わね?」
彼女は何も答えなかった。しばらく黙ったまま。
そして一言…「わからない」とだけ答えた。
あれから、長谷部は公園にきていない…。
☆
どうしていいか分からなくて…
私は公園を通って帰るのをやめた。
かなり遠回りになるんだけど、毎日ドキドキするよりはずっといい。
★
「蒼叶、最近おちてんな…」
ハセが俺の前のイスに座る。
俺は答えず、雑誌をパラパラめくった。
「彼女とケンカしたとか?」
「いねぇし、いつの話してんだよ、ハセ」
「まっ、お前は女に不自由しないし、やったら別れての繰返しだもんな」
ハセの嫌味だ。ったく…うるせぇよ。
「ハセは、そんな俺とよく一緒にいれるよな」
ふざけて聞いてみる。
「まぁ、俺はおまえのことよく知ってっからな」
ハセは爽やかに笑いやがった。
☆
1組と合同の体育。
女子は教室で筆記の方…筋肉やら…しくみやら…難しい。
窓の外を眺める。
男子はマラソンなのかな…大変そう。
走る集団の真ん中の方…久々にみた彼の姿に、心の奥がまたぎゅってなる。
私は視線を黒板へ戻した。
授業が終わる頃…外がなんだか騒がしくなった。
水道の近くのとこで、なんかもめてる?
★
「そいや、長谷部にフラレたって」
「ちげぇよ、俺は別に好きじゃねぇし、ちょっと面白いかなって思っただけだって」
「だっせ~」
友也の仲間たちの笑い声。
「あいつ、俺が自分のこと好きだってマジにとってっかと思うとこえーよ」
……。
「な…なんだよ、田崎…なんか用か」
ガンッ
俺が胸ぐらをつかんだ途端に、あいつが勝手にビビって倒れ、水道のコンクリートに頭をぶつけた。
「いってぇ…田崎、お前…ふざけんなよ」
俺が冷たい視線を送ると、周りはビビって静かになった。
「お前はフラレたんだよ」
つるんでる奴等の前で恥をかいたのか、俺の発言にみるみる顔が赤くなる友也。
「は!?…なに言ってんだよ、意味わかんねぇ…あ、あ~そうか、お前の次遊ぶ女…長谷部か」
何いってんだ、こいつ。どこまで最低なんだよ…。
「は、はは…でも、長谷部やらせてくんねぇぞ」
バンッ
俺が蹴ったバケツが倒れ、座り込んでいた友也の方へ入っていた水が勢いよく流れていった。
★
雪がちらついてきた。公園はすでに誰もいない。
マジ寒い…
「お前はフラレたんだよ」
…何いってんだか。俺も同じだ…。
無意識にでたため息…目の前が白く曇る。
曇りがとけた、俺の瞳にうつるのは…涙をためた女の子。
「ユミちゃんから聞いた」
彼女は震える声でつぶやく。
ハセか…。
「なぁ…長谷部、俺と付き合って」
5秒の沈黙…そしてくりくりな瞳が俺をみる。
「うん…」
彼女の目から涙がこぼれた。




