プロローグ1
リハビリ用の中編小説を目指します。
恐らく全10話くらい。これくらい長さなら完結させれると思うのです……。
日本一。
これあたしのパパンの名前ね。
"にっぽんいち"って思った?
残念ッ!これ"ひのもとはじめ"って読むんだよ。
んでね、わたしのパパンのはじめちゃんってば、名前の通り豪快な人でさー。
うちのママンが私を身ごもっちゃった時にさ
『男だったら大和にするぞ!!
日本大和。男らしいいい名前じゃねぇか!!』
とか言ってたらしいんだよ。
女の子の可能性とか最初からガン無視wwwwあたし涙目wwww
普通さこういうこと言う時って『男の子なら○○、女の子だったら○○だな』『まーアナタたら気が早いんだからウフフ』みたいな展開がテンプレだよね?
なのにはじめちゃんったら最初から男の子一本に絞ってんだもん。「俺の子なら男に違いねぇ!!」とか自信満々で言ってんだもん。
ちょww産み分けってのは聞いたことあるけど、産ませ分けとか聞いたことないってのwww
何その自信wwどんだけ自分の遺伝子に自信持ってんのよパパンwww
そんな訳だからさ、あたしが産まれた時、はじめちゃんったらちょっと凹んじゃったらしいのよ。
でも凹まれてもこればっかりはしょーがないじゃない?それこそ神様のさじ加減だと思うのよ。
だからそんな昔を懐かしむようにあたしの出産秘話を語られてもさ
『股に余計なもんついてなくてゴメンねパパンwww女の子だけど引き続き可愛がってちょーだいねwww』
ぐらいしか言えないわよあたし。
ってか確かに話をねだったのはあたしだけどさー、だからって人の顔見て泣きそうな顔で溜め息吐くの止めてくんない?
ホント失礼しちゃう。なんか暗くなりそうな話題だったから、場を盛り上げようとピエロを演じた娘を少しは慮って欲しいもんだわ。
『でも、翌日には嬉しそうにアナタの名前を考えてたのよお父さん』
ママン。助け舟が若干遅い。どうせならあたしがピエロになる前に欲しかったよそのセリフ。
今更そんな微妙なフォローで、あの頑固一徹なはじめちゃんの態度が軟化するわけ――
『おう!可愛い我が子だ!男か女かなんてスグにどうでもよくなっちまった!』
はじめちゃん単純すぐるwwwwww流石はあたしのパパンだわwwwwww
『でもお父さんったら、大和って名前にどうしても未練があったみたいで、音だけでも似せた名前にするんだって張り切っちゃって……』
そんであたし纏なんて難しい名前なのねママンwwww
パパンが一で、ママンが雪子で、あたしの名前どこからつけたんだろって思ってたけど、長年の疑問が溶けちゃったわwwwwww
まさか"やまと"の"まと"をとって"まとい"になったとは思ってもみなかったよwwwwww
ってかはじめちゃん『男か女かなんてスグにどうでもよくなった』とか言って、未練バリバリじゃないっすかwwww
あ、しかもあたしスゴい事に気がついちゃった。
もしかしてマイスウィートシスターの和子ちゃんの"和"って"大和"の"和"なんじゃないかしらwwwww
ってことはもし三女が産まれちゃったら、まさか名前は大子ちゃん?
もし大子ちゃんが大きくなって、息子とか産まれちゃって、その子が『バーブー』とでも喋った日にゃあたしどんなリアクションとるか自分でも分かんないわwwwwwwwww
実際問題。ピッチピッチの17歳、花も恥じらう女子高校生のあたしに今更妹が増えるとは思いにくいですけどねwwwwww
それに増えるんだったら男の子にしてあげて神様www今度こそ正真正銘の大和くんを二人にプレゼントしてあげてwwww
ねぇ神様ダメかしら。
きっとこれがあたしのさいごのお願いだからさ。
『他に聞きたいことはない?』
『小っ恥ずかしいの我慢して喋ってやってるんだ!遠慮なく言えよ纏!』
ママンは優しく微笑んでるってのに、はじめちゃんは完全に泣き笑いの表情だ。
ホンットにこの親父ときたら最後までダメなヤツだった。
頼んでもないのに『最期は笑って見送ってやる』とか豪語しておきながら既に泣いちゃってるんだから。
それに比べて、あんたの愛した雪子って女はスゴい女だぞ。
宣言通りいつも通りのニコニコ顔で、右手であたしの手を包み込んで、自分の膝に置いた左手は血が出る程握りしめんてんだぜ?
ちったー見習えよはじめちゃん。
まぁ、泣きながら無理やり笑おうとするそのガッツだけは認めてやってもいいけどな!
ホントならここでガツンとダメ親父のはじめちゃんを叱ってあげるところなんだけど、今日のところは勘弁してやる。
――だってそろそろ時間切れみたいなんだもん。
『んー……もう特にはないかなー。それにしても予想通り恥の多い人生送ってるのね我が家ってばwwwww』
突然襲ってきた強烈な眠気。これはつまりそういう事なんだろう。
二人の幼い頃の話。
二人が出会った頃の話。
二人が結婚した時の話。
私が産まれた時の話。
ゆっくりと沈んでいく意識の中で、短い時間で語られた二人の話がグルグルと回る。
こんな時でもなけりゃ聞けなかった話。なんてたってあたしってば反抗期真っ最中のピッチピッチ女子高校生だかんね。
『『纏ッ!!』』
ガタッと椅子が動く音と同時にあたしの名前を呼ぶ二人の声が聞こえた。
でも半開きの目じゃ二人がどんな表情してるかまでは分かんなかった。
『あーそう……だ、和子ちゃん……に気にすんなっ……て言っといてね』
まだまだ大丈夫だと医者に言われ、泣きそうな顔で学校へ通ってる妹への伝言を頼む。
あの子が来るまで待っててあげたいけどどうやら無理くさい。急変したあたしが悪いのかもしんないけどそれでも言いたい。このヤブ医者め。
『あり……とうね……』
どうやらもう満足に喋る事もできないらしい。ほんの数分前に出来ていた事が出来なくなる。急速に終わりが近づいてくる。
『『纏ッ!!』』
あたしの手を握り締める2人の手がブルブルと震えている。
もう何も見えないけれど、きっと2人はすごい顔で泣いてるんだろう。
親不孝な娘でごめんね2人とも。
決して言葉に出せない思いが胸の中で弾ける。
だって最期の言葉が『ごめんなさい』なんてあんまりにも寂しすぎる。
それにあの日本一の娘として、そんな後ろ向きな言葉、口にするのも憚られる。
だから『ごめんなさい』の代わりに、あたしは何度だって言うの。
『あ……とう……』
言葉にならなくてもいい。相手に届かなくたっていい。
あたしがやりたいからやるの。あたしが伝えたいから伝えるの。
だって幸せな人生だったもの。
はじめちゃんが居て、ママンが居て、和子ちゃんが居て、あたしが居て。
だって幸せな人生だったもの。
愛する家族に囲まれて、愛に包まれて生きてこれたのだから。
特定の個人名を貶める意図はありません。
が、話の流れ的にちょっと不適切な表現となっている箇所がありますのでこの場を借りてお詫びいたします。
全国の大子さんすいません。悪気も悪意もございません。
あとギュッと内容を縮めすぎたため、少々展開が急になっております。
次話からもこのテンポが続くと思いますので「展開速ぇよ!」と思われる方は、諦めていただくかブラウザバック推奨です。