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ミッションズ・ゼロ  作者: 春夏冬
DISASTER GHOST ‐災厄の亡霊編‐
3/3

Episode【Ⅱ】 ‐NGC‐

 目を開けると、そこは高層ビルの立ち並ぶ大都市にある大きな交差点の車道だった。


「シティエリアか……」


 大都市だが、カオル達以外の人の姿はない。

 ここは、『VR仮想空間』またの名を『バーチャル空間』。現実世界にありそうな地形、建物を忠実に再現した世界。

 この世界に、意識をダイブさせる先ほどカオル達が被っていた機械。『脳神経接続システム(Cranial Nerve Connection System)』通称『CNCS』。この機械が、感覚、運動神経と接続し、神経内を流れる電気信号を読み取る事で、自分の思った通りの動きをすることができる。また、感覚神経に直接接続しているため、五感が精密に再現されてるのだ。


〈よし、全員問題ないな〉


 ジムの声が、感覚神経を通じ、脳内で再生される。


「「「はい」」」


〈それでは、ミッションを開始する。ただし、難易度はこちらで決めさせてもらうからな〉


「「「了解」」」


〈じゃあ、レベル1からだ〉


 ジムがそう言うと、さっきまで誰もいなかったカオル達の周りに、多数の男が現れた。

 VR仮想空間内の、仮想人間だ。その1人ひとりが、コンピュータ制御され、誰ひとりとして同じ行動をしないため、実戦に近い体験が出来る。


「ざっと100人くらいか……」


「これくらいなら、ジェニファー1人で十分でしょ?」


 ラクスは、ジェニファーに向かってそう言った。


「仕方ないわね……わかったわ」


 ジェニファーは、前に出て目を閉じ、精神を研ぎ澄ます。


〈それでは、ミッションを開始する〉


 ジムが淡々と言うと、カオル達の前に青文字で『‐3‐』と表示された。

 しばらくすると、カウントダウンが開始され、数字が『0』になると、ミッションが開始された。

 ジェニファーは、ミッション開始のアラームが鳴ると、鋭く目を開けた。


それは一瞬の出来事だった。

 

 まわりの男は―――残酷な冷気を放つ氷で固められていた。

 氷と化した男は戦闘不能となり、その場から一瞬にして消滅する。


「さすがジェニファーだね。ちょっと寒いけど」

 

ラクスは凍えたような声で言った。さすがに、タンクトップの彼女には寒過ぎたようで、腕を組み、二の腕を摩っていた。


「このくらいなら問題ないわ」


〈次行くぞー〉


休む暇もなく、ジムの声が聞こえてくる。

すると、次はさっきよりも遥かに多い男が出現した。


無能力者ノーマルなら、何人かかって来ようと変わらねーよな?」(カオル)


「当たり前」(カエデ)


「そんなの当然でしょ!」(ラクス)


「愚問ですわよ、カオル」(ジェニファー)


「じゃあ、とっとと片付けますか」


ミッションの開始とともに、4人は別々の方向に走り出した。



―――VRMSルーム。


ソウマは、真剣にモニターを見つめていた。他の生徒は、後ろで話している。


「どうだ、ウチのエースチームは?」


ソウマは、後ろから話しかけてきたジムを見るが、すぐに視線をモニターに戻す。


「すごいです……………。同い年とは、とても思えません」


「まあ、そうだろうな。あいつらは『NGC』と呼ばれる化け物じみたやつらだからな」


「『NGC』?」


ソウマは、顔をジムの方に向ける。


「『Next Generation Children』。世界でも、ごく僅かしか存在が確認されていない、能力ランク『S』の超能力を持った。10代の少年少女のことだ」


「えっ!」


思わず驚きの声をあげるソウマだが、すぐに正気を取り戻し、ジムに聞く。


「彼らの説明を求めても構いませんか?」


「ああ。―――じゃあ、まずはあいつ」


ジムが指さしたのは、モニターに映る戦闘中の黒髪少女だった。


「彼女は、この学園のNo.4『3Dブレイカー』浅比奈カエデ。空間を破壊し、破壊した空間上の物質の破壊。また、慣性などの力学的な力を全て無にできる能力の持ち主だ」


カエデの説明を終えると、次にジムが指さしたのは、左上のモニターに映る金髪の少女だ。


「次に、さっきのおてんば娘。この学園のNo.3。『スーパーハッカー』ラクス•フルシェン。コンピューターなどの、電子機器はもちろん、人間の脳にまでアクセスし、詮索することができる。脳の精神にアクセスし、精神操作マインドコントロールを行うというのが、やつの戦い方だ。」


ソウマがモニターを見ると、ラクスの周りの男が跪き、頭を押さえているのが見えた。


「あんな風にな……次は―――って、もう終わってるか」


モニターの右上では、一見すると北極の氷の上をのような場所に立つ、銀髪の少女が映っている。


「あいつは、ジェニファー•ウォーカー。『氷姫』の異名を持つ学園No.2の『アイスロッカー』だ。強力な能力、さらに例え地球が滅ぶとしても決して崩れる事のない冷静な判断力を持ち合わせている。チーム『ZERO』の副リーダーだ」


「そして最後に、チーム『ZERO』のリーダー。学園最強の能力者―――瀬野カオル」


ジムはモニターの左上を指さす。

だが、そこに映っていたのは、素手と拳銃で男達と戦う。カオルの勇ましい姿だった。


「カオル君って、能力を使わないんですか?」


「あいつは、特別なんだ」


「特別?」

 

 ソウマは、首を傾げる。


「ああ。普通、能力者はその天性の超能力を主力の戦力として扱うんだが―――あいつは、そのズバ抜けた身体能力を活かした素手や武器を使った戦術を主力としているんだ」


「え!? でも、カオル君って、ランク『S』ですよね?」


 ソウマは、体ごとジムの方を振り返る。


「確かにそうだ。つまり、ふたつの超強力な武器を持ったあいつは、まさに化け物というわけだ」


 ソウマがモニターを再び見た時、もうすでにカオルは最後の1人を蹴り飛ばしていた。



――――VR空間。


 戦闘が終わると、全員が交差点に戻って来た。


「大丈夫だった? カオル」


 カオルの後ろから、ジェニファーが声をかける。


「ああ。余裕だぜっ!」


 カオルは、親指を立てた拳を突き出す。


「何言ってんの? 一番遅かったくせに」


 カエデが、柄にも似合わず皮肉を口にした。


「なんだとっ!」


「BY ラクス」


 カエデに対して怒ろうとしたカオルは、メッセージの差出人の名を聞いた瞬間、怒りの標的ターゲットをラクスに移す。しかし、ラクスはカエデの肩にもたれかかり、グッタリとした様子だった。


「ラクスは、どったの?」


首を傾けながら、カオルは聞いた。


「能力の使い過ぎで疲れちゃったみたい」


「疲れた? このおてんば娘がか?」


「カオル!」


〈よし、ミッション終了だ。アクセスを解除する〉


 カエデの言葉をかき消すようにジムの声が聞えると、また眩い閃光にカオル達の視界は包まれた。



――――再びVRMSルーム。


〈お疲れ様でした。システムを終了させますので、少々お待ちください〉


女性の電子音声が聞こえ、目を開けると、カオルの意識は、現実世界に戻ってきていた。

視界には、純白の明るい空間が広がり、『Please wait』の文字が浮かんでいる。

しばらくして文字が消えると、視界は暗闇に包まれた。カオルはCNCSを外し、カプセルのガラスが開くのを待っていた。


数秒後、ガラスがスライドして開いた。それと同時にカオルは体を起こす。


「お疲れ様だったな」


ジムが全員に言う。だが、視線はフラフラとしているラクスに向く。


「ラクスは大丈夫か?」


「とりあえず、保健室に連れていきます」


肩を借していたカエデは、そう答える。


「ああ。じゃあすぐに連れていってくれ」


ジムは冷静な表情を見せる努力をするが、少しばかり動揺しているようだった。


ヨロヨロと歩くラクスを、カエデが連れて行こうとした時だった。


VRMS室の純白の壁に、不吉な音色のアラームが響きわたる。


「な、なんだ!?」


部屋中に戦慄が走り、冷静さを忘れた生徒が、騒がしくなる。


〈只今、ゲートセキュリティが強行突破されました。非戦闘教員、及び生徒は、直ちに緊急避難シェルターに避難してください。ISO研修生、及び戦闘可能教員は、直ちに状況に対処してください〉




「マジか……………」



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