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天孫降臨  作者: 針鼠
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    :第十八話




かつてやたかと呼ばれていた少年は、闇の中で目を開けた。

黒一色の世界に自分だけが色を持っている。

火が灯る。道を作るように赤い暖かい色が灯っていく。

映し出されたのは黒石が、敷き詰められた部屋。

いや、部屋というよりは広間と言ったほうがいいだろう。

__________天風あまて・・・・天風・・・・おいで・・・・

声がする________燭台の火が揺らめく。

低い声_________優しげな声・・・・・・・・

天風と呼ばれた少年は、燭台が灯す道を歩き出す。

そして、跪き頭を垂れる。

「我が主君_______」

天風の前にはまるで主と僕を隔てるように水が流れている。

黒石の色を映して真っ黒な水が流れている。

主は、簾が掛かっていてどのような顔をしているか分からない。悲しい顔を為さっているのか怒っていなさるのか_____________長年仕えている天風にも分からない。


_________影を、琥珀のもとへ送ったが・・彼奴め・・・すんでのところで逃げおったわ


くくくと笑い声が聞こえる。

炎が揺れる。暗闇の中から怯えた声が聞こえる。

ふっと暗闇から現れたのは、三つの影________青白い顔を浮かべ頭から顔だけ残し漆黒のマントを被っている。

三つの影たちは明らかに怯えている。


_____________蛇骨、蝙蝠かわほり)火尾かび・・八咫の鏡、を手に入れそこなったそうだな


闇に浮かぶ無数の影たちの怯えた声が聞こえる。

蛇骨は、慌てて言った。


「お許しを・・・ですが、あの娘・・八咫の鏡の力を使いまして・・・私どもでは歯が立ちませぬ・・・それに琥珀の僕らしき者が邪魔をしてきまして・・・」

ほおと、感心したように声が聞こえる。



___________・・では、その娘・・・・新たな八咫の鏡の器・・ということか


天風が、はっと驚いたように顔を上げる。

天風の主は笑い始めた。心から楽しんでいるように奥底から声をだして笑っている。

くくくと余韻を残し男は言った。


__________面白い・・・・・未熟な小娘が・・我に歯向かおうというのか・・・まぁ、良い・・琥珀の手の者が娘の近くにいるとすれば彼奴とも時期決着がつくだろうよ




影たちに下がれと男がいうと影たちは消えていった。気配が無くなる。

天風は、何の感情もない瞳を主に向けた。



______________私はこれから宮へ行く・・・・儀式の件滞りなく進めるのだぞ・・・・天風・・・




「御意」

天風は、立ち上がると突然起こった突風と共に消えた。

しんと静まり返った広間は、まるで墓の中のようだ。

簾の向こうにいる男は、急に胸を押さえると苦しみだした。

漆黒の肩で切り揃えた髪がさらさらと肩から落ちて顔に被さる。

どくりどくりと心の臓が脈打つ________自分の体の中にいる化け物が全てを食らい尽くす音。この音が止まれば、自分はきっと死ぬだろう。

だが、後もう少し_______後もう少しで・・・・自分の使命がようやく終わる。


「三種の神器は、私の元に・・・一つに集まる_______その時・・・・世界に変革が起こるのだ」


くくくと笑う。真っ白い顔に浮かぶは狂気の瞳_________


「小娘よ_______・・・・次ぎ会う時はこの黒椿が、貴様の相手をしてやろう」


そう言うと黒椿はばたりと倒れた。漆黒の着物と髪が辺りに広がる。男は、面を被っている。

真っ白な面_______冷たい_____無表情な人間の顔が模ってある。

すると闇が、生きているように黒椿を包み込んだ。深い_______深い闇・・・・・・・ずぶずぶと闇に飲み込まれていく。

黒椿は、深い____深い__闇へと消えた。





鉄格子の檻が、すべての自由を奪うように規律を守るように並んでいる。

天風は、ある牢屋の前で足を止めた。

そこには、不可思議な格好をした少年がいた。

少年は、天風を見つけると嬉しそうに声をかけてきた。

「やぁ、天風________黒椿は?」

天風は、少年に笑みを向けると言った。

「主は、今日は此処には来ない。宮へ出かけているんだ」

そう天風がいうと少年は残念そうに項垂れた。

「心配するな・・もうすぐだよ」

もうすぐ____という言葉を聞いて少年は呆然としたように顔を上げた。

「そうか・・・長かった。やっと私は______死ぬことが出来る・・・」

少年の淡々とした言葉に天風は、何の感情もない漆黒の瞳を少年に向けた。

しかし、顔にはしっかりと笑顔を貼り付けたまま言った。



「そうだね・・・もうすぐだ________ミクニ・・・」



そう____もうすぐ______もうすぐでこの卑しき命は終わりやっと自分を許すことが出来る。惜しいとも思わない___________でも、何故だろう?胸がざわざわと波立つ。

夢か現か・・・・あの少女の言葉が、やけに耳について仕方がない。

「出してあげる・・・・逃げましょう、ここから・・・」

涙で潤んだ瞳が美しい。

逃げる________自分から進んでこの牢に入ったのに?

わたしの為に泣いてくれるあなたは誰?

名が______どうしても思い出せない。

思い出したいような思いだしたくないような・・・・もどかしい・・・

あの影たちからは逃げられただろうか?



幻のように消えてしまった少女__________そうだ・・・・その名は・・・







「まぼろ______」






胡蝶の声ではっとまぼろは振り向いた。胡蝶は、怪訝な顔をしている。

「何考えてんだよ・・・大丈夫か?・・まぼろ・・・」

まぼろは、にこりと笑った。

「平気、ただ・・・・朝日を見ていただけよ」

そうか_____朝日か・・・・そう言うと胡蝶は、朝のすがすがしい空気を吸いながら伸びをした。

まぼろは、大丈夫と胡蝶に言ってみたものの不安で胸が一杯だった。

急がなければならない。何故だか、そう思う・・・・・今やることは、大帝に復讐することでもなく、王として三種の神器を見つけることではなく、ミクニを助けることなのだから・・・・

都に行けばきっと何もかもが上手くいく。

ミクニを助けてからそれからいろいろと考えればいい・・・・病気なんかじゃなかった・・・きっと何か理由があって閉じ込められているんだ。

まぼろは、首飾りを取り出し日に当ててみた。きらきらと赤い石の光がまぼろの顔を照らした。








これで、前半は終わりました。よく、分からない部分も多々ありますがよろしくお願いします。只今話を強引に進めております。

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