:第十七話
「全部話す、覚悟決めて聞くんだぞ」
まぼろは、頷いた。
胡蝶は、神社の上に降り立つとまぼろを神社の中に入れた。
「大丈夫だ、結界を張った。奴らには見つからない」
蝋燭に火をつけながら胡蝶は言った。狐が蝋燭の光に照らされて不気味に見える。
「お前は_____八咫の鏡の器として正式に選ばれたんだ」
「_________八咫の鏡?」
胡蝶は、頷いた。
「そうだ、お前は八咫の鏡の器_____」
「器・・・」
まぼろは、目を伏せた。あの時だ______あの時の光・・・・
「大帝がまぼろの里を襲うことを危惧した俺の主は、俺に見張るように言ったんだ」
「じゃあ・・・胡蝶は・・・」
里が襲われるのを見ていたというのか。まぼろが、黙っていると胡蝶はつと眉を上げた。
「俺の力でどうこう出来る問題じゃなかったんだ、まぼろ頼むからそんな顔するなよ」
まぼろは、俯いた。
「御免・・・」
胡蝶のせいではない。私だってもし胡蝶の立場だったら何もしないのが一番だと思うから・・・
「案の定、大帝は動いた。里を襲い鏡を奪った________だが、それはまっかな偽者・・・・」
まぼろは、頷く。
八咫の鏡をすり替えたのはやたかだ_____今一体・・・どうしているのだろう。
胡蝶は、話を続ける。
「俺は、あの時お前は光の中で消滅したと思った。だが、まぼろ・・・お前は生きていた」
まぼろは、頷く。
「主は、お前を屋敷に連れてくるように言ったんだ。お前に宿っている不安定な八咫の鏡の力を取り出す為に・・・・」
胡蝶は、頭をかく。
「これから、話すことは今の状況だ。武家屋敷の庭で話している途中で俺消えたろ?あの時ちょうど主の屋敷覆っていた俺の結界が破られたんだ。そんで、俺とばっちり食らって力ほとんど取られちまった」
「だから、消えちゃったんだね」
まぼろは、合点した。
「まぼろが、俺の名呼んでくれて良かった。言霊っていってな、言葉には力が宿ってる。特に名前とか強く力が宿るもんなんだよ。そのおかげで少しは力を取り戻した俺が登場って訳」
「胡蝶、御免ね・・・私のせいで怪我して・・」
胡蝶は笑った。
「いいんだよ・・・そんなことより、まぼろは選ばれたんだ。八咫の鏡の器に____」
まぼろは、頷いた。そして、悲しそうに笑う。
「もう、あそこにはいられないね・・・お銀さん、婆様・・皆は巻き込みたくはないから・・・」
「そうだな・・・俺もまぼろ以外の人間を守る義理も無いしな」
胡蝶は、暫し考える素振りを見せた。
「そんで、それからどうするつもりだ?」
「ミクニを助けに行くわ」
そうか、と言うと胡蝶は立ち上がった。
「まぁ、俺の主は死んだかもしれないし、今俺は晴れて自由だ」
まぼろは、はっとして顔を上げた。そうか、胡蝶は主に言われて私を助力するように言われていて・・・・まぼろは、顔を俯いた。これ以上、関係のないことにつき合わせられない。
「なんてな、言っただろ?誇りにかけて助力するって、とことん付き合うよ、まぼろの行く所全部」
それに面白くなりそうだし胡蝶はけけけと笑った。
「胡蝶・・・」
まぼろは、出てきた涙を拭いた。
「ありがとう・・・」
まぼろが、礼をいうと胡蝶は笑った。
「安心するのはまだ早い、影を操ってお前を襲ったのは大帝じゃない。もっと恐ろしい奴がお前の力を狙っているんだ」
____________その者の名は黒椿
________________闇に囚われし影を操る者