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魔神と”私”が溶ける刻  作者: 美雷
第1章:当代の魔神は家を欲す
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05:魔神の観察

そのまま特に変わりなく朝を迎え、そして今は昼だ。3人と1匹が代わる代わる魘されるので、結局延々と誰かしらに付く羽目になった。

貫徹の看病でも疲れは全く感じないので問題はない。魔神は本来、魔素の食事以外は通常の食事どころか睡眠も必要としないので、付きっきりの看病にはもってこいの体質と言えるだろう。

それよりも目を覚ました時に暴れられると困るので、全員がある程度落ち着くまでは目を離したくない。


彼らは順調に回復しているようで、全身の切り刻まれた傷は概ね塞がり、重ねに重ねられた傷痕も消えつつある。浄化を掛けて、不要になった瘡蓋や古い皮膚を取り除けば、彼ら本来の肌の色が判別できるほどきれいになった。

髪も、連れてきたときには色が抜けたぱさぱさの白髪だったのに、それぞれの色彩と艶を取り戻しつつある。

ちなみに、骨格からそうだろうと推測はしていたが全員男だった。

ただし霊獣は傷が治っても性別が分からないが…いや、そもそも雌雄の区別はあるのだろうか。まぁ霊獣は総じて知能が高いので、目覚めたら聞いてみるとしよう。


さて、そんなわけでようやく彼らの外見が分かる状態になってきたので、看病の合間に観察してみることにした。


まずはエルフ。

初めに見たときには、その尖った耳だけが彼がエルフであると判断できる唯一の特徴であったが、今では、美しい萌黄色の髪がより印象深い特徴として彼を彩っている。この世界のエルフは皆、緑系の髪色をしているらしいが、彼の髪色はくど過ぎずなかなかに私好みだ。

肌は乳白色で、色白だが僅かに黄みがかっており、元日本人としては馴染み深く親しみがわく。

体型はエルフの平均通りといった感じで、やや華奢で背もそこまで高くはなく、拾ってきた3人の中で一番小さい。


次に獣人。

一人はおそらくネコ科系統の獣人であろう。頭部に大きめの三角形の獣耳があり、耳の先端にはカラカルやオオヤマネコのような房毛がついている。尻尾がヒョウやチーターのように長い。

髪は色素薄めの金色だが所々に黒のメッシュが混ざっており、地球のネコ科猛獣を思わせる色合いだ。

肌は非常に特徴的で、褐色というには透明感が高く、まるで蜂蜜のように透き通った美しい色をしている。美味しそうな、思わず舐めてみたくなる色である。無論、だからといって寝てる間に舐めはしないが。

体型は細身だがしなやかな筋肉がついており、エルフのように華奢な印象は皆無だ。所謂細マッチョというヤツだ。


もう一人はイヌ科系統、おそらく狼の獣人だ。ネコ科の彼よりも肉厚で少し小さめの獣耳がついている。尻尾はブラッシングしがいのありそうな見事なふさふさ具合である。

髪は輝くような灰青色(はいあおいろ)で、まぁ平たく言えば銀髪だ。

肌も血が通っているのか疑いたくなるほどに白いので、全体的に寒そうな色合いだ。きっと雪原にいれば雪に紛れて見つけにくいだろう。もしかしたら寒い地方に住む種族なのかもしれないな。

体型は一番大柄でがっしりしており、筋肉質という言葉がぴったりくる。


霊獣も回復に伴い驚きの変化を見せた。

白だとばかり思っていた鱗は-…いや確かに白は白なんだが、見る角度によって虹色に輝くようになった。

まるでオパールのようだ。まさかこんなにも美しくなるとは思いもしなかった。きれいに再生された鱗はまさしくさらさらすべすべで、いつまでも撫でていたい気持ちになる。

角も白だと思っていたら、こちらは琥珀色というか-…色の変化とともに透明感が出てきて、今では透き通るまでになったので、もはや琥珀そのもののようだ。


それにしてもこれだけ見た目が変わるなら、あの時、霊獣の特徴から検索を掛けても該当する種が見つからなかったのも頷ける。

改めて検索してみると今度はすんなりと結果が出た。

竜の一種で、何とも安直な名前だが、鱗の輝きからシャイニードラゴンと呼ばれているようだ。

生息場所は主に森林らしいので寝床はこのままウッドチップで構わないだろう。

だが、カナヘビのような蛇っぽい蜥蜴の一種かと思っていたのに、まさか竜だったとは…

一目見てみたいとか撫でてみたいとか、昨日さんざん心の中で騒いでハイテンションになっていたのに(03:魔神の家造り参照)、意識していない間にすでに大半達成しているじゃないか。何だ、この脱力感…


しかし検索結果を確認するうちに、再度、激しい怒りが沸きあがった。

このシャイニードラゴンは、かなりの大きさに成長するドラゴンであり、こんな2mほどしかない個体はまだ生まれて半年も経たないような幼体だというのだ。

だが、いくら幼体とはいえ、霊獣であるドラゴンだ。本気で抵抗すればヒューマンなど一瞬で蹴散らせるだろう。本来、捕獲して実験動物にすることなど到底不可能なはずだ。

なのにこんな事態になったということは、このドラゴンは卵の状態で(さら)われて、孵化後、抵抗する間もなく力のほとんどを封じられたのだろう。

あとでこの子を攫った者について調べておこう。

卵の正体を承知の上で、私利私欲のために攫ったというのなら、私の次の食事にしてやろう。そう決めて今のところは怒りを鎮める。


それにしても、この世界は外見のレベルが高いのだろうか。派手な感じではないが、皆なかなか整った顔立ちをしている。

エルフは地味だが良く見ると整っているタイプ、猫系獣人は釣り目が特徴的な中性的顔立ち、犬系獣人は切れ長の瞳がやや強面な印象を与えるこれぞ美丈夫といった感じだ。

見事に全員タイプが違うが、種族的な特徴によるところが大きいのだろう。


そういえば、かなり今更だが私は魔神に転生してから自分の姿を見ていない。

自分の容姿になど興味はないが、気付いてしまえば気にならないこともない。


私は鏡を求めて洗面所に移動した。

そこで鏡に映ったのは、腰まで届くまっすぐな漆黒の髪と、僅かに黄緑が滲んだような金の瞳を持つ男だった。前世で飼っていた最愛の黒猫を思い出す色合いだ。

しかし、心持ち釣り上がり気味の切れ長の瞳で、彼女のような愛らしさなど一切感じられない顔立ちである。

服装はなぜかアオザイ風。

発生したときから着ていたので気にもしなかったが、これが魔神のデフォルトの衣装なんだろうか。まぁ、好みなのでこのままでいいか。

だが屋敷の雰囲気に合わせて生地は着物に使われるようなものにしよう。


「着替え」


言葉とともに着ていた服が別のものに変わった。

先ほどまでは光沢のあるサテンのような生地だったが、私のイメージに従い着物を思わせる正絹に似た質感の生地になった。黒の地の所々に桜の花弁が散っている。

まるで振袖のようなアオザイになってしまったが美しいので気にしない。


ちなみにこの魔神の服は魔力で作られた魔神専用の特殊繊維だ。

通常の服だと、至近距離で発せられる強力な魔力に耐えられず、消耗が激しいのだとか…

買いに行く面倒がなくて本当に助かる。

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