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魔神と”私”が溶ける刻  作者: 美雷
第1章:当代の魔神は家を欲す
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01:魔神の思考

私は魔神として、いわゆる転生というものをしてしまったらしい。

なぜ魔神である私がこんなことを考えているかというと、私が前世の記憶を持つからだ。

別に何から何まで詳細に覚えている訳ではない。私は前世での名前どころか性別だって覚えていない。

だけども、この世界が前世ではファンタジーと呼ばれる魔法の存在する世界であるとか、私の存在がまるでテンプレな転生物語のようだとか、そんな無駄な知識ばかりがある。


ちなみに、普通は魔神であろうと前世の記憶など持たない。むしろそんなもの邪魔である。何故、邪魔だと言い切れるのかというと、今現在、私が前世の記憶に非常に困らされているからだ。


私は腹が減っている。

つい先ほど生まれたばかりなのだ。それはもう壮絶に腹が減っている。

魔神の食事というのは、生物の体内に存在する魔素を得ることだ。魔素とは魔法の元ともなるエネルギーで、食物連鎖を通じて生物の体内に蓄積されていく。

―…うん。四大公害病の一つを引き起こした水銀と同じだな。


それで、生物の体内の魔素を得るためには当然ながら生物を殺す必要がある。

今、この世界のバランスを崩しかけているのはヒューマン種、平たく言えば(平たく言わなくても同じだが)人だ。

つまり、魔神としてはさくさくっとこのヒューマンたちを殺して魔素を得ればいいわけだが…ここで前世の記憶が邪魔をする。

殺人に忌避意識が芽生えるのだ。

私の前世は日本人だ。そして、私は罪のない人を殺すことに対し、罪悪感を抱く人物であったようだ。

人でなくとも、生物を殺せば魔素は得られる。しかしそれは殺人よりも厭わしい。

私は前世、同種の人よりもそれ以外の動物を愛していたようだ。

自宅では猫と犬を飼い、研究室でも様々な生き物を大切に飼育していた。


あぁ、研究室… そうだ、私は研究室で何を研究していたのだったか。

あの子たちは無事だろうか。

気にはなるが、今考えても仕方ない。

そのうちもっといろいろ思い出すかもしれない。

今はこの耐えがたい空腹をどうにかするのが先だろう。


というわけで考えよう。


腹は減っているので、食事をすることは決定事項だ。

対象はヒューマン、うん、決定だ。大丈夫だ。

他の生物を殺すくらいなら、ヒューマンを狩ろう。そもそも今、狩るべきはヒューマンなのだ。最初はキツイかもしれないが、これでも魔神だ。魔神としての感性では全く問題がないのだ。要は慣れれば良いのだ。


さて、覚悟は決まった。

ここで私が気にしていることは、罪のない人を殺すことに対してだろう。

食物連鎖という観点からすれば、私は自分が存在するためにヒューマンを食べるとも言えるので、私の前世の倫理観からも問題ないといえばないのだが…

どうも前世の感覚が強いのでなるべく避けたい。

となれば話は簡単だ。

殺されても当然と思える人物を殺せばいい。

前世でも、悪人に対しては割と冷酷な感情を抱いていたようだし、そういう人物であれば殺すのはやぶさかではない。


良し。意外と簡単に方針は決まってしまった。

では検索をかけよう。

魔神とは便利だ。大抵のことは魔法で実現できてしまう。

私が「検索」と魔力を乗せた言葉を紡ぐと…

――うん。ちょっと予想外だった。

半透明のパネルに見慣れた検索画面が出てきた。前世でお世話になりっぱなしだった某検索サイトだ。

なるほど。検索に対しての私のもっとも強いイメージがこれだったのだな。

入力は思念で可能なので、非常に便利だ。類似語もOKだし、私の脳内イメージから勝手に補正して検索結果を表示してくれる。

大変高性能で素晴らしい。


早速「悪人」で検索をかける。

検索結果は、タイトルと要約、それらにサムネイルの動画が添えられて表示された。

表示順は、私基準で許せない行為の順であるようだ。

トップに表示された内容に、怒りで脳の神経が焼き切れるかと思った。


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「自分の欲求のために亜人や魔物を使って研究を行うヒューマン」

不老不死を最終目的とし、長命な種や、生命力の強い(再生力の強い)種を実験にかけ、その身体機能を研究している。

ヒューマン至上主義で、実験対象への敬意は欠片もなく、実験は残酷な内容である。

-----------------------------------------------------------------------


ははは…

こういう輩は大嫌いだ。ただ殺してやるのも勿体ないが、何分初めてだし、力の加減も良く分からないし、空腹も限界だ。

早いとこ片付けて一息つこう。

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