表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔神と”私”が溶ける刻  作者: 美雷
第2章:揺れる魔神は世界を巡る
27/28

24:魔神の買い物準備

無事に情報の漏洩対策が終わったので、アスとレウムが戻ってくるまで3人でのんびりと寛ぐことにして、茶の間に移動した。

初めの頃、靴を脱いでの生活や畳の感触に不慣れな感があった3人だが、今ではすっかり馴染んでいる。

中でもリュイは、畳を甚く気に入ったらしく、お茶を飲む時には一人であろうと必ず茶の間に移動しているようだった。ちなみに台所は掃除の都合で板の間だ。


「ところで、リュイは空いている時間はだいたい森を散策しているようだが、何をやっているんだ?アスとレウムの戦闘訓練には参加しないのか?」

「僕は剣を使いませんので…

弓なら狩りをやっていましたので多少使えるのですけど、あまり戦闘は得意ではないのです。使える魔法も戦闘向きではないですし…

だから森をただ見て回っているだけです。ここの森には見たことのない植物がたくさんあるのでとても楽しいです。」

「そういえば、リュイはいつも森で果物やら芋やら、いろいろと採ってくるよな。どうやって見つけているんだ?」

「精霊たちに聞いているのですよ。ここにはシルフもドライアドもたくさんいますから。」


シルフは風の精霊、ドライアドは木の精霊である。

それらの精霊たちの大半は手のひらサイズの小さな姿で、ここ深魔(しんま)の大森林にはかなり多くの精霊が存在する。

森を歩けば風に乗ったシルフたちの楽しげな笑い声が通り過ぎてゆき、樹上からはドライアドたちの穏やかな歌声が降りそそぐ。

勿論、万人がその姿を見れるわけではない。むしろ見ることができる者の方が少ない。

だが、精霊との親和性が高ければ、姿を見るだけでなく会話することも可能なのである。


「リュイは森の精霊たちに気に入られているのだな。」

「受け入れてもらえて嬉しいです。皆、かわいいですよ。」


精霊たちのことを思い出しているのか、穏やかに微笑みながらそう答えるリュイからは、精霊たちへの親愛の情が感じられる。

森とともに暮らしてきたエルフたちにとって、森に住まう精霊たちは愛すべき隣人なのだろう。


「他に何かやりたいことや趣味はあるか?

せっかくこれから買い物に行くんだ。欲しい物や必要な物があれば遠慮なく言うといい。」

「そういえば、ノワール様はヒューマンの通貨をどうやって用意したのですか?」

「今ある分は、私が壊滅させた盗賊団や奴隷商や組織が持っていたものを失敬してきた金だ。

まぁ、あまり気持ちの良い金ではないから、今後は森の資源なり鉱物なり還元できる物を用意するのも手だな。」

「それなら私も貢献できそうです。ここの森には貴重な薬草も多いですし、私は少しなら調合もできます。」

「そうか、なら頼もう。そうとなれば、調合用の器具を買うか?」

「そうですね、お願いします。

あと、畑を作ってもよろしいですか?薬草の中には栽培可能なものもありますし、ドライアドたちに手伝ってもらえば作物を育てるのも比較的簡単です。」

「あぁ、それはいいな。じゃあ農具と種か苗も買おう。」


それからリュイと、購入する植物の相談や栽培したい森に自生する植物、畑を作る場所など、いろいろと話し合った。

もともと植物が好きなのだろう、リュイは始終楽し気で、とても生き生きと多くのアイデアを出してくれた。

時折琥珀を交えつつ3人でわいわいと話し込んでいると、あっという間に時間が過ぎた。


「ただいまー。あれ、リュイもノワールも戻ってるのか?」

「アス、レウム、おかえり。今日もズタボロだなぁ。治癒。」


アスとレウムは、物理衝撃と魔法衝撃、ともに8割以上を防ぐ衣服を着ているくせに、擦り傷、切り傷、火傷、凍傷など、いずれも大怪我ではないけれど細々と多種多様な怪我をして帰ってきた。

全くどんな鍛錬をしているのか、服に魔法がかかっていなかったらとっくの昔に彼らの服はボロ屑になっているだろう。

まぁ魔法がかかっているからこそ彼らもここまで無茶苦茶なことをしている、とも言えるのだが。


「おー、ありがとう。何度見ても、ノワールの魔法は常識外れだなぁ。」

「暢気に感心してないで、さっさと身形を整えてきてください。2人ともあちこち汚れが付いてますよ。」

「わかった!わかったから押すなって!」

「…着替える。」


リュイによってぐいぐいと脱衣所に追いやられる2人を、またかと苦笑しながら見送った。

まるで手のかかる子供と母である。いや、面倒みの良い長男とやんちゃな弟たちの方が適切だろうか。


しかし、いくら状態保存の魔法を掛けているとはいえ、魔法は万能ではない。受けた衝撃によって少しづつ劣化が進行していく。

彼らの服は元が何の変哲もない綿などの素材であるから、こんな過剰な負荷を掛け続けていては耐久性に不安を覚える。

もっと丈夫な素材でオーダーメイドできないか、服屋の主人に打診すべきだろうか。

私の勝手な希望ではあるが、彼らには無骨な防具ではなく、お洒落な服を着ていてほしい。


だけど防具はともかく武器は揃えてやりたいし、木剣を使うにしても剣を固定するためのベルトは欲しい。

あの服屋のデザインは気に入っているが、はたしてそれに合うベルトが武器屋に置いてあるだろうか。

いや、あの服屋は革製品も置いてあった。相談すれば特注で武器固定用のベルトも作ってくれるかもしれない。


私は、街ですべきことを脳内にリスト化して整理しながら、激しい運動をしてきたであろうアスとレウムのためにレモン水を用意しに台所へ向かった。

今回の買い物は、前回と比べものにならないくらい盛り沢山となりそうだった。

やっぱり進まない…もう少しさくさくっと話を進めたいところですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ