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2話 前章3

異能殲滅会。

それは言葉が所属する文字通り異能者を殲滅するための組織である。政府の特務機関でもあるが、その実内部には政府高官などは存在しない。

「私が作り上げたんだ、余計な異物なんて入らせるわけない」

「なんの話ですか」

「いやいや、独り言さ。そこにかけたまえ、私もそっちにいく」

革製のソファという値段も予測がつかないものに尻を預けるのは不安。そんなこと思っていた中学時代が懐かしい。今は気にすることもなく背もたれに体重を預けている。

「ふふ、君は毎回気持ちよさそうに座るよね」

「気持ちよさそうに座らないとこのソファに失礼ですよ」

片手に持っていた2枚の書類を言葉の方に向きを変え、千里は言葉に向かい合うようソファに座る。

「さて、話をしようか」

片方の書類には修多羅の情報が書かれてあった。そこにはプライベートも無視したような個人情報が幼少の頃からずらりと並んでいる。

そして、もう片方にはあるのは修多羅に関しての俺の報告書だった。

「まず、これの弁明はあるかい?」

千里は言葉のあげた報告書の一文に指を刺しながら、言葉にまっすぐ問いをかける。

「弁明も何も書いてある通りですよ。修多羅砕破は異常系の異能者ですよ」

そう、白々しく言葉は宣う。

「そうか、認めないのなら私は君を追い詰めなきゃいけない」

ポケットからリモコンを取り出して、後ろの壁に向かってスイッチを押す。

「異能は大前提として三種類に大別される。それは君もわかっているはずだ」

「異常、異質、異形ですよね」

「そうだ。異常というのは、何かのエネルギーとかを増幅したり、身体能力などの備わっているものを大きく向上させたりするものを指す」

「…………」

「次に、異質。これに関しては自身以外の物体の性質を変化させるものだ。まぁ発現させるものが少ないため、その多くは謎に包まれているが」

千里の後ろにはでかいスクリーンが出現し、そこには修多羅の顔がドアップで映し出される。

「そして、異形系。これは己の在り方を別生物へと変える、いわば存在置換がある。そして、その証明として、身体的特徴が体に大きく出てくる」

千里はスクリーン上の修多羅のツノを指差して、再び言葉に聞く。

「弁明はあるかい?」

「……ないです」

ここまで証拠を突きつけられてしまっては、言い訳する余地などないだろう。そして、それを認めてしまうということは。

「そうか、では聞こうか」

「……はい」

悟るように目を伏せて、言葉は千里の言葉を待つ。

「なぜ、殺さなかった」

千里の冷たい双眸が言葉を見つめる。

言葉は冷や汗をかきながら、両手を握りしめる。

その膠着が数分。

千里は言葉を待ち続け、ただ無言を貫く。

「あ…、ち…」

殺せなかった。殺したくはなかった。

いくら異能者であろうとも、修多羅は中学時代からの友達だ。記憶喪失の俺からすれば幼馴染のようなものだ。

だが、それはここでは通じない。

「あいつが学生で、俺も学生だからです」

搾り出したのは、その言葉だった。

「同じ立場だったら、殺しやすいじゃないですか。異能だって使えないように言霊で封じましたし、あいつが暴走してもいいようにマーキングだってしました。ここから銃を撃ってもあいつの眉間を貫けますよ」

つらつらと、言葉を吐く。

思いついた言葉をつなぎ合わせ、無理やり整合性をつける。それが正しいと己に言い訳するように。

「………で?」

ソファに肩肘をつき、千里は冷ややかに問いかける。

「君の言いたいことはわかった。なかなかできた言い訳じゃないか。私じゃなければ、じゃあそうしようかと言ったかもしれないな」

千里は足を組み替えて、ため息を吐きながら天井を仰ぎ見る。

「それは後始末の話であって、私が聞いた質問の答えじゃない」

「………」

「自分がしでかしたことに対してケツを拭くと言っている。高校生にしてはなかなか言えない責任能力の重さだ。だが、私が聞いたのは問題の発生後の話じゃなくて、問題が発生した要因の方だ」

「それは…」

「君の人格を知っている。仕事に対しての貢献度も知っている。だからこそ、あえて聞いている。なぜ、彼女を殺さなかった」

「………殺したくなかったから」

言葉は千里の詰問に耐えきれずに白状をした。

「ここが異能者を殺すための組織で、俺が異能者を殺すための存在ではあると理解しています。でも、俺はまだ友達を手にかけたくはない」

千里は無言で立ち上がり、言葉の横へと座る。

「4年間言葉君を見て何度も思うよ。やはり、君にこの仕事は向いていない。そう確信できるほど、君は致命的に甘い」

言葉はただ俯き、握りしめる手には冷や汗が滲む。それを見た千里はそこに手を添える。

「だが、その甘さを知って私は君を受け入れている」

「それって」

「あぁ、修多羅君は殺さないよ」

「ありがとう…ございます…」

なんとか最悪は避けられたようだ。

場合によっては、今日殲滅会は地図から消えることとなったろう。いや、元々地図には載っていないが。

「ということで、この議題は終了」

パンと千里は手を叩き、所長の席へと再び戻る。

「うん?この議題"は"って、まだなんかあるんですか?」

「仕事だよ仕事。私が君を糾弾するためだけに呼び出したとでも?」

「ええ、過去に百回ほどありましたから」

スクリーンの映像が切り替わり、ニュースへと切り替わる。

『血人豪雨災害から5年。未だ山には被害が残っており、森は赤黒く……』

「あ、チャンネル間違えた」

再びリモコンを操作して、別のニュース番組を映し出す。

『昨夜21時。再び飛び降り自殺が起きました』

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