第一部前半 エピローグ
翌日。
死闘に次ぐ死闘。
まさしくそんな日だったのに、次の日はど平日だった。
つまり、学生は学校に行かなければならない。
「まぁ、授業を受けなきゃならないってのはないよな」
屋上で大の字になりながら、青空を見上げる。風で流れゆく雲を見つめながら、ただ時間が流れることをぼうっと待つ。
「へー、サボる時はここにいるんだね」
「気持ちよさそうね、ここ」
「え?」
聞き覚えのある声に視界を向けると、そこには修多羅と走が立っていた。
「な、なんで」
「白水先生の命令よ」
「連れ戻してこいって言われちゃって」
そういう2人はすぐさま言葉の足へと移動して、それぞれ片足ずつ持ち上げる。
「え、まさか」
「うん、どうせ自分から来ないだろうからこれでって」
「ほら、行くわよ」
そのままずりずりと、俺は校舎へと引きずり込まれる。抵抗をしたところで、説得されるため、何をしても無意味だろう。
俺はそう思って、大人しく引きずられることにした。
教室に帰ってからはもちろん爆睡して、目覚める頃には放課後となっていた。
放課後にはすでに2人の姿はなかったため、俺は用事のために1人でそのまま私立恵愛病院へとバイクで向かう。もちろん、母の見舞いもあったが、それとは別にあった。
「椎原先輩、大丈夫ですか?」
そう、俺不在の最中、戦線に出たという先輩の見舞いだ。
「あぁ、お前のおかげで腕はなんとか生えたが、血を大量に流しすぎたせいで数値が悪かったみたいでな」
異能での回復は間に合ったものの、さしもの言霊も万能ではなかったため、先輩を完全に復調させることはできなかった。
「何、そんな顔するなよ。僕は君のおかげで生きてるんだから」
「先輩、俺は」
申し訳なさを感じ、謝罪を口にしようとすると、ポンと頭に手を添えられた。
「ならこれでチャラだ」
「……はい」
「さて、僕はもう寝るよ」
「え?まだ朝の10時ですが」
「昨日徹ゲーしたから少し眠いんだ。ほら、さっさと出ていく」
その声に急かされ、俺は見舞品だけを置いて部屋を出た。
「はぁ、気を使われたな」
病室を背にして、深くため息をつく。
「まぁ、あんまり気にするなってことだよな」
そのまま受付を済ませて、駐車場のバイクへと向かう。
「なんでいんだよ」
バイクの上では、鏡を見ながら化粧を直していた銀鏡鈴鹿の姿があった。
「決まってるじゃないですか、先輩いるところに私在りですよ」
「あってたまるかそんな法則」
辟易しながらもバイクに跨ると、さも当然のように銀鏡が腰に腕を回す。
「行きましょう先輩。今日も張り切って仕事をしましょう」
「はぁ、今日もか」
落ち込む言葉。
元気な銀鏡。
正反対な2人を乗せながら、バイクは道を走っていく。
短い隙間の平穏に向かって。




