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3章 中章3

そのままバイクを飛ばし、廃工場へと向かう道を爆走する。

「法定速度なんて完全に無視ね」

「そんなこと気にしてる場合かよ」

バイクのメーターは140キロを指しており、もうじき150キロへと到達しようとしていた。

「速くいかなきゃ行けないからな」

深夜ということもあり、車通りは少なく、トラックが2台ほど前を走るだけだ。

「三時ともなるとこんなもんか」

「この時間に運転してるなんて、普通は運搬トラックぐらいなもんよ」

「いや、それはど偏見だろ」

ビル群を抜けて、住宅街を抜けようとする。

すると、後ろからサイレンの音がする。

「まぁそりゃ出てくるだろうな」

「私、警察に追われるなんて初めてよ」

「まぁ追いかけっこする時間なんてねぇからな。このまま突き放す」

さらに速度を上げ、メーターは200キロを表示する。

「スポーツカー並みね!」

「普通はこんな速度バイクで出ねぇよ!」

貰い物でこんな事をやれば、空中分解は避けられなかっただろうな。

「無駄技術に感謝するべきだな」

警察を突き放し、サイレンの音が消える頃には周囲は山でぐるりと囲まれていた。

「廃工場まであと数百メートルか。あとは歩きだな」

「そうね。バイクで突っ込んでもあいつらからしたら狙ってくださいと言ってるようなものだからね」

バイクをそのまま止めて、山道をそのまま歩く。

「ハハッ、深夜の山道とか嫌な予感しかしねぇな」

「やめてよ。怖いんだから」

廃工場まで一本道。

迷いようなどなく、ただひたすらに歩くだけ。

「まぁ、そりゃそうだわな」

「どうしたの?」

「いや、指が落ちた」

指が綺麗な断面で切り落とされている。

間違いなく、もう一人の方の異能者だ。

「警戒しろよ、油断ならねぇぞ」

視界不良の最中、的確に指を切り落としたってことは、夜目が効くってことだ。

「……ッ!?」

ゾクリと嫌な予感が全身を襲い、咄嗟に言霊を吐く。

「『止まれッ!!』」

言霊によって、上からのナニカが止まる。言霊の効力が切れてそれが手元へと落ちてくる。

「糸…ね」

それは目を凝らしてやっと見えるほどの、細長い透明な糸だった。

「あらら、仕留め切れると思ったのに。どうやら無理だったようだね」

夜闇から一人の男が姿を現すと、その十指の先には糸がだらりと垂れ下がっていた。

「わかりやすく糸使いね」

「お嬢さん大正解!いやぁ、瞬殺できなかった時点で暗殺者としては終わってるからね」

「そのまま観念してくれると助かるんだけどな」

「残念だけど、暗殺者としては不出来でも、殺し屋としては仕事しなきゃ行けなくてね」

やばい。こいつ強い。

修多羅に任せられるほどの人間じゃない。

「修多羅、逃げろ」

「嫌よ。というか、言葉は先に行きなさい」

「何を」

「こいつは私がやるって言ってるのよ」

「異能もなしに何言ってんだ」

「異能?これのこと?」

修多羅が振り返ると、額から2本のツノがすでに生えていた。

「え?お前、異能を制御して」

「できるようになったのよ、さっさと行きなさい。そんなに私が信頼できない?」

「……わかった。頼んだ」

「ええ」

言葉は修多羅に背を向けて、廃工場へと走っていき、それを見届けた修多羅はぐるりと振り返る。

「待たせたわね。糸使い」

「僕のこと?せっかくだから名前で呼んで欲しいな」

「敵のくせに馴れ馴れしいわね。まぁいいわ、名前はなんて言うのよ」

「僕?僕の名前は夜臼(ゆうす)だよ。冥土の土産に持っていくといいよ」

「残念ながら、まだ死ぬわけには行かなくてね」

修多羅全身に力を込めて、異能を全身に侵食させ、体には赤い痣が浮かび上がる。

「君の名前はなんていうんだい?」

「私の名前は修多羅砕破よ。そして」

構えを取り、地面を勢いよく踏み砕く。

「異能『修羅』の異能者よ」


「異能の開示までしてくれるなんてね。ならば、僕も教えてあげようじゃないか」

両手を広げて、指先の糸をふわりと浮かせる。

「僕の異能は見ての通り《操糸》。糸を指先から出すことができて、操ることができるだけの異能さ」

「どこぞのアメコミヒーロー見たいね」

「そうそう、まぁそのヒーローと似通ったことしかできないのが難点だね」

「随分と応用が効きそうだけれどもね」

「お、高評価だね」

三分。三分だ。

私が異能を制御し切れる時間は。

それ以上を過ぎると、私は過去の怒りに飲まれることになる。

「おしゃべりはいいわ。さっさとかかってきなさいよ」

「焦っているねぇ。嫌だねぇ、余裕がないのはさぁ!」

「……ッ!」

修多羅が咄嗟に身を屈めると、周囲の木々が鈍い音を立てながら倒れていった。

「いい動きだね」

「チッ、ヒーローとは程遠い使い方ね!」

「同じことはできるから嘘は付いてないよ。まぁ、しないけどね!」

「くっ」

修多羅はそのまま森の中へと向かい、そのまま身を隠そうとする。だが、夜臼はそうはさせじと次々と糸の斬撃を繰り出し、修多羅が足場にした木々を次々と細切れにする。

「めちゃくちゃ過ぎる」

「すごいすごい、よく避けているよ」

このまま避け続けてもジリ貧だ。どうにかしなきゃ。

「このまま嬲り殺しにしてもーー」

笑顔の夜臼の目の前には、勢いよく迫る木が出現した。

「ご丁寧に切ってくからね、有効活用させてもらうわ!」

「すごいね、倒し甲斐があるッ!」

迫り来る木を瞬時に細切れにして、すぐさま反撃に移ろうとすると、そこには修多羅がいた。

「二段構えかッ」

「やっと近づけたわね。非天無獄流・二牙白胴(にがびゃくどう)ッ!」

右足で鳩尾を蹴り、折り曲がった体に対して、体を瞬時に翻して左足の踵で顎を蹴り上げる。

「ぐあっ」

たまらず夜臼は噴水のように血を吐く。

だが、その目は死んでいない。

「先に木を持ってきたのは失敗だったね」

夜臼が両手を一気に引くと、修多羅の四肢に糸が巻きつき、一切の動きが封じられる。

「形成逆転だね」

「くっ」

周りを見ると、糸の先には木片が付いており、それを重しに、近くの木々に巻き付けてあった。

「さて、僕がこの手を引けば君はバラバラになるわけだけど、何か遺言はあるかな?」

「遺言?殺し屋が命乞いを聞こうっての?」

「それもそうだ。それじゃあ、死んでもらおうかな」

両手を引き、修多羅の体は細切れになる。

夜臼のイメージはそうだった。

ブチブチィ。

現実はイメージ通り行くわけなく、糸は修多羅によって引きちぎられていた。

「なっ、何ぃ!?」

「残念だったわね。私の異能はただ身体硬度を上げるためのものよ」

「き、君の異能は身体能力を上げるためのものだろう!?さっき木を蹴り飛ばしていたじゃないか」

「安心しなさい、それは私の素の身体能力よ」

「ば、化物ーー」

「うるっさいわね」

「ガハッ」

夜臼の胸部を掌底で突き、一気に吹き飛ばす。

「久々の実戦。それに殺してもいい相手なら試していいわよね」

修多羅は飛んでいく夜臼の両足をそのまま掴みかかる。それは、非天無獄流という拳法において亜種になる投げ技の準備だった。

「行くわよ、非天無獄流亜式・風車」

全身に力を込めて、縦に向きに回転をしながら森の中を駆け巡る。その道中で罠に仕掛けていたであろう糸をも巻き込む。

「遺言は聞かないわ。このまま殺すッ!」

先ほどまでいた山道まで戻り、そのまま地面へと投げつける。乱回転しながら夜臼は地面へと向かい、鈍い音を立てながら地面へと叩きつけられる。

「や、やるな。お嬢ちゃん」

「まだ息があったのね」

「心配ない、もうすぐくたばるさ」

ぐちゃぐちゃになった体を震わせながら、夜臼はニヤリと笑う。

「僕は殺し屋だ。だから、言っておくけど」

「何よ」

「背負うなよ。これはあくまで殺し合いだ。それを、肝に銘じておくんだね」

「………」

そう言いながら、夜臼は笑顔のまま死んでいった。

「わかっているわよ。でも、言葉を殺してから、私はすでに人殺しよ」

修多羅は目を閉じて、その場で尻餅をつき、廃工場の方へと目を向ける。

「ハァハァ、限界か」

制限時間も来てないのに、思ったよりも消耗が激しい。これが殺し合いか。

「頼んだわよ、言葉」

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