第一話 悪夢の始まり
この世界では、神から命を授かると同時に、一つ、言葉を授かる。言葉を授かった人間はその言葉の”能力”を使えるようになる、例えば授かった言葉が火、だったとしよう、すると言葉をもらったものは、火を出せるようになる、これはその神が司会者の、ある男の地獄のような物語。
クラスの扉を開け、いつもどうりに挨拶する。
アキラ「グッモーニング!!エブリデイ!!」
ナイト「ハハハッそれじゃ、おはよう!毎日!になるぞ、アキラ!」
アキラ「分かってて言ってますー!わかんなくて言ってる訳じゃないですー!」
いつもどうりに友達の笑いをかっさらい、窓際の席に着く、いつもどうりに綺麗な青空が見える、いつもどうりに授業が進む、いつもどうりに授業が終わり、いつもどうりに部活もして、いつもどうりに家に帰る、そんな毎日、それがいいんだ、身近にある小さな幸せを見つける、それが本当の幸せ。別にそれ以上の、名声とか富とか、そういうのは求めない、好きなこと出来ればそれで良い。
ただまぁ、手に入れられるのなら、少しは気になるよね、道を通るだけで皆からの視線を浴びる、何かをすれば褒められたり、そういうのを求めてしまう、それはやっぱり傲慢だろう、でも、そういうのが人間だからなぁ。
アキラがそんな気取ったような事を考えていると、長いローブをまとった人とぶつかる。
アキラ「ッ、すいません、大丈夫すかッ?」
???「あーごめんごめん私が悪いよ、ごめんね、君、名前は?」
男は右手を立てて謝罪する。
アキラ「えっと、アキラです」
???「あー違う違う、フルネームで!」
立てた手を左右に振り否定する、質問の意図が分からず困惑するアキラ。
アキラ「?白神っすけど」
???「白神アキラくん、かぁ、いい名前だね、もう絶対忘れないよ」
ちらっと見えた白い髪に赤い目、男は怪しいまでにニヤリと笑う。
アキラ「???はぁ」
邪言「私は邪言、今後はよろしくね」
???「邪言!あくしろ早く行くぞ!」
邪言「そういう事で、ばいばーい」
アキラ「???ばいばい…?」
オレンジ色の夕陽を見ながら顎に手を当てて考える。
アキラ「なんだったんだあの人たちは?邪言さん?と、大柄の怖い人、他に二人居たな、全員ローブしてたし、怖っ、あ、着いた。」
ガチャリと家のドアを開け、いつもどうり自分が帰還したのを伝える。
アキラ「ただいまー」
しかし静寂が続く。
アキラ「ん?…たーだーいーまー!」
家には自分の声が響くだけ、他の誰の声も、微かな物音も聞こえない。
アキラ「あれ?誰も居ないのか?」
そんなわけない、いつも家族はこの時間には全員居る、俺の帰りを待って。
なんか気持ち悪くて、いつものみんなの顔を見て安心したくて、急いで靴を脱いで、玄関に上がってリビングへのドアを開ける、そこは地獄絵図だった。
俺の家族は全員居たし、みんな俺のことを待ってた、だから死んだ、父は喉を斬られ、苦しそうな顔をして死んでた、母は腹に小さな穴が3つ空いてて、沢山吐血して死んでた、妹と弟は剣で生首を壁に突き刺されていた。
理解出来なかった、この光景がやけにリアルな夢としか思えなかった、馬鹿みたいに自分のほっぺをつねってみるが、痛い...痛い.......痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
アキラ「おぇぇ、なんだよこれ……なんだよこれ!!!」
家には相変わらずアキラの声と嘔吐した不協和音だけが響く、だが、割れた窓からローブをまとった人がパリパリとガラスを割る音を立てて入って来る、邪言だ。
アキラ「何でここに?」
邪言「間に合わなかったか、さっきローブをまとった人が出ていくのが見えて、来てみたらこの有様か、君は大丈夫かい?、アキラくん」
アキラ「だいじょふじゃない、なんだよこれ、今まで...生まれてからずっとここで過ごして来た、なのに…急に…壊された!!大丈夫な訳ねぇだろ!!!」
アキラは涙ぐんだ目で邪言を睨み、胸ぐらを掴む。
邪言「落ち着いてアキラくん、冷静になるんだ」
アキラ「落ち着けねぇよ………こんなことしたやつは絶対ぶっ殺してやる…!」
邪言「...あんまり教えたくないけど、心当たりがないわけじゃない」
アキラ「誰だそいつは!!」
邪言「だから落ち着いてってば、君も知ってる天下の”悪滅平和作協会”ってやつだよ」
アキラ「は?」
(そんなことありえない、だって俺の父は平和協会の職員、なのに平和協会に殺される?在り得ない。)
アキラ「んなわけねぇだろ!俺のお父さんだって平和協会の職員だぞ!」
邪言「幹部ではないでしょ?知ってるわけがない、ちょっと長めの説明をさせてもらうね。悪滅平和作協会は、神の祝福を受けた人間が、その力で悪事を働くのを阻止する、それがモットーの協会、ここまでオッケー?」
アキラ「んな義務教育知ってるわ、バカにしてんのかよ」
邪言「悪滅平和作協会。平和協会と敵対してる組織、魔王軍、この組織は一般的には悪の権化のような伝え方されてるよね、でもそれは全部真っ赤なウソ、みんな騙されてるんだ、この惨事も、平和協会の仕業」
アキラ「は?何言ってんだ?平和協会がそんなことす」
アキラが強い口調で否定しようとすると、邪言は口元に人差し指を指す、
邪言「しー、まだ話してる、私は魔王軍の幹部、邪四の一人、平和協会からは”言うことすべてが嘘”とかだったかな?」
アキラ「魔王軍!?邪四の一人って、極悪人じゃねぇか!やっぱり嘘ついてんだなてめぇ!」
邪言「だからそれが騙されてるんだって、わざわざ自分で嘘ついてる噂在りますよって言う訳ないでしょ?本題入るよ?平和協会はね?魔王軍が気に入らないんだ、元々平和協会がしている活動は魔王軍を丸パクリしているんだ、だから本当は魔王軍平和協会と同じ立ち位置にいるはずなんだ、魔王軍はそれを
世間に訴えかけているけど、すべてもみ消されてる、それが現状」
目を真ん丸にして唖然とするアキラ
アキラ「.........」
邪言が人差し指を立てて提案する。
邪言「それで提案があるんだ、アキラ君、君も魔王軍に入らないかい?」
アキラ「は?」
少し強い口調で邪言は言う。
邪言「復讐するんだろう?ならうちに来い、この番号に電話しろ」
ローブの中から紙を一枚取り出し、テーブルにそっと置く、
邪言「来るのにどれだけかかっても構わない、来てくれるのを楽しみ待っているよ」
アキラ「え、いや」
アキラが止めようも、無視して窓から外へ出ていく、そして上へ飛んだ、後を追うが、姿はもう見えなくなっていて、どこかへ消えてしまった。家へ戻り、テーブル上にある邪言が置いて行った紙を取り、部屋を見渡す。
アキラ「なんだよこれ」
一か月後
アキラ「もう一か月だぜ、いまだに信じらんないよ、」
しゃがみこんだ状態で家族の墓石に手を合わせ、語り掛ける。
アキラ「あれからはもうそれはそれは大変だったんだからな!?お母さん居ねぇから飯は作れねぇし、お父さん居ねぇから金もねぇし、やっぱりお前らいないと寂しいよ、ナツミ、ダイキ」
家族のことを考えていると眼から涙が溢れる、
アキラ「寂しいよ...皆」
涙を拭き、立ち上がる。
アキラ「敵。取ってくる」
歩き出し、ポケットからスマホを取り出す、渡された紙に書いてある電話番号へと電話を掛ける、1コール、2コール。待っていると、誰かが電話に出る。
邪言「待ってたよ。アキラ君♪」