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紅葉-くれは-  作者: 菊池まりな


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第74話 風の中の声

美奈はスコップを握る手に力を込めた。掘れば掘るほど、土の色が少しずつ変わっていく。湿った黒い層の下に、何かが埋まっている──その予感が、確かに胸を締めつけた。


 カツン、と固い音がした。

 美奈は息を呑む。手袋を外し、土を払いのけると、そこには古びた木箱があった。雨に晒された跡があり、金具は錆びついている。


 「……紅葉、これ……あなたの、なの?」


 呟いた瞬間、風が吹いた。木々の間を縫って通り抜ける秋風は、まるで誰かの声を運んでくるかのようだった。

 ──見つけてくれたのね。

 耳の奥で、紅葉の声が微かに響く。


 美奈は震える手で箱を開けた。

 中には、小さなノートと、乾いた花弁が挟まった手紙、そして赤い組紐が入っていた。どれも、二人が中学時代に大切にしていたものだ。

 けれど──最後のページに書かれた一文が、美奈の心を凍りつかせた。


 > 「この丘の下に、私の“もう一人”が眠ってる。だから、もし誰かが見つけたら……」


 その先の文字は滲んで読めなかった。

 「もう一人」──それはどういう意味? 紅葉が言っていた、“見えない友達”のこと? それとも……。


 美奈はノートを胸に抱きしめ、立ち上がった。

 「紅葉……あなた、何を残したの……?」


 風がざわめく。木々が軋み、秋の空がゆっくりと朱に染まっていく。

 そのとき、丘のふもとに並ぶ古い祠のひとつから、カラン……と何かが転がる音がした。

 視線を向けると、そこに落ちていたのは、小さな鈴のついた赤いストラップだった。

 紅葉が中学の文化祭のとき、美奈とお揃いで買ったもの──いつもは使わず、机の引き出しにしまっていたはずの記憶の品。


 ──風の中に、かすかな声が響いた。

 「……まだ、終わってないよ、美奈。」


 彼女は唇を噛みしめた。

 次に向かうべき場所が、ようやく見えた気がした。


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