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ヴィランってかっこいい〜ダーク・トライアドの心理学

 ヒロアカやツイステの影響か、「ヴィラン」という言葉が定着してきましたね。誰しも皆、推しの悪役がいるのでは無いでしょうか?


 私たちがヴィラン・ピカレスクヒーローの魅力に惹かれるのはなぜでしょうか。それは人間の内面には、「闇」が存在するからです。その代表格とも言えるのが、「ダークトライアド」と呼ばれる3つのパーソナリティ特性です。

 ・ナルシシズム(narcissism)

 ・マキャベリアニズム(Machiavellianism)

 ・サイコパシー(psychopathy)の総称です。


 心理学者であるポーリーン・ジョーンズとデルロイ・ポールハスによって2002年に提唱されたこの概念は、いわゆる人の「悪い」部分を表す性格特性の集合体と言えるでしょう。アニメや漫画のキャラクターはこの特徴が非常にわかりやすく描写されています。


 ナルシシズムは、自己愛が極端に強く、自分を特別で重要な存在だと考える特性です。自信家で注目されたがり、他者への共感性に乏しいのが特徴と言えます。


 ナルシシズムの傾向が強い人間をナルシストと呼びますが、一般的には「ブルーロック」の蟻生十兵衛のように、美意識が高く自分に陶酔するような性格を想像する人も多いのではないのでしょうか。しかし実は、同じく「ブルーロック」の馬狼照英のように、自らをキングと称し、他人を支配しようとする強い欲望や強烈な自信をもつキャラクターも当てはまります。

 また、「ベルセルク」のグリフィスもこの分野に当てはまるでしょう。自身の野望と理想を徹底して追求するために、愛する仲間すら犠牲にすることを厭いません。


 次に、マキャベリアニズムは、他者を操作したり、欺いたりすることを厭わない特性を指します。


 目的のためには手段を選ばず、時に非情な決断を下すことができます。「マキャベリアニズム」という言葉は、『君主論』で知られるイタリアの政治思想家、ニッコロ・マキャヴェッリの名前に由来しています。

「コードギアス 反逆のルルーシュ」のルルーシュ・ランペルージのように目的のためには手段を選ばない策略家、といえば想像しやすいのではないでしょうか。


 サイコパシーは、良心や罪悪感が欠如し、衝動的で反社会的な行動を取りやすい特性です。


 Robert Hare (1980)の定義によると「良心の呵責を覚えず、感情に奥行ないため、他人を思いやることができない。利己的で、自分の利益を優先にする。周囲の人々と長期的に友好な関係を築けず、結果的に集団や社会から排除されることが多い」となります。決して精神異常性を指す言葉ではないということを留意してください。「サイコパス」という言葉は一般にも広く浸透していますが、その多くは差別的で不適切な使われ方をしている点には注意が必要です。


 サイコパシーは漫画アニメ作品では徒花と呼ばれる存在かもしれません。例えば「サイコパス」の槙島聖護は、犯罪を芸術と捉え、狂気じみた思考と行動で社会を混乱に陥れます。「僕のヒーローアカデミア」の死柄木弔の悲痛な運命と、その圧倒的な残虐性とパワーには心が揺さぶられるでしょう。読者の大切な人の命を奪い続ける「呪術廻戦」の真人の絶対的な悪には、憎しみと無力感に打ちのめされます。


 お気づきの通り、この3つの特性は、それぞれ独立したものではなく、相互に関連し合っていると考えられています。例えば、「デスノート」夜神月は三つ全てを兼ね備えているようにも感じられますね。


 またダークトライアドを持つ人は、対人関係や社会生活において問題を引き起こしやすい一方で、多くの魅力を備えていることも事実です。

 例えば、本人の努力や才能という確かな基盤の上に成り立つ、自信に満ちたナルシシズムは、カリスマ性を感じさせます。マキャベリアニズムは非道な判断を下すことで、多くの命を救うリーダーシップを発揮することもあるでしょう。サイコパシーの悪は、その背景には複雑な過去や価値観がある場合が少なくありません。やるせなさと共に、救済を与えたくなる声も上がります。


 もちろんダークトライアドの特性だけで、キャラクターを語ることはできません。悪にも多様性があるのです。ただ彼らの存在は、人間性の多面性と社会の闇を浮き彫りにしていることは確かでしょう。私たち一人一人の内面にも多かれ少なかれ存在するものかもしれません。いずれの特性も行き過ぎれば、自他ともに傷つける結果を招きかねません。自分の内なる闇と向き合うと、アニメや漫画をより深く楽しめるのではないでしょうか。

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