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1. 「!」がいっぱい付いてる婚約破棄宣言

「イリューシア・ローアン!お前との婚約は破棄すると、この場で宣言する!

 そして、私はカーリン・ユリアーク男爵令嬢と婚約する!

 私とカーリンは真実の愛で結ばれている!!!!」


王都にある、貴族子女が必ず通う学園は15歳から3年間の学び舎で、この学園の卒業と同時に貴族社会への本格的参加が可能になります。逆に卒業出来ないと貴族名鑑に名を連ねることなく、「準貴族」止まりになってしまいます。そのような状態だとお仕事をするにも大変なので、皆必死に勉学に励んで卒業するのです。それはどんなに高位貴族でも卒業出来なければ「貴族」と呼べない者となってしまいます。


公爵令嬢である、わたくし、イリューシア・ローアンも無事3年間の勉学を経て現在卒業パーティーの最中なのですが、パーティーも盛り上がって最高潮であろう時に空気を読めない婚約者であるパトリック・エル・ヴァイタル王太子が意気揚々とわたくしに指を指して婚約破棄宣言をしてきました。

人を指で指すなんて、なんて下品なのでしょう。

でもパトリック様ならしょうがないですわね。

右手はわたくしを指さして、左手にはカーリン・ユリアーク男爵令嬢を抱き寄せています。

カーリン様は不安な様子でパトリック様の腕の中で震えているようです。

彼女は最近まで庶民として生活していたらしいですが、ユリアーク男爵と昔の恋人との間に出来たお子様だったらしく、慌てて引き取って貴族籍に入れたらしいです。

小動物を思わせるような可愛らしい容姿に、ピンク色のふわふわな肩くらいに揃えた短い髪に黒みがかったルビーの瞳。ロイヤルブルーの髪にターコイズ色の瞳の殿下と合わせると、ちょっと(色んな意味で)目に痛いカップルです。

ちなみにわたくしは、ホワイトブロンドの長髪にアメジストの瞳です。瞳は少しきつめでしょうか。

これはあれですね? 異世界〔恋愛〕のテンプレ展開ですね?

まあ、わたくし、もしかして「悪役令嬢」?


「イリューシアはカーリンに対してさまざまな嫌がらせをしていた!

 教科書を破いて裏庭に捨てていた!

 カフェテリアでは嫌味の連続!!聞くに堪えなかった!!!

 パーティーでは嫉妬からか、カーリンに足をかけて転ばそうとしていた!!

 カーリンが男爵令嬢だと嘲笑い、虐げた!!!目撃者だって大勢いる!!

 こんな女が将来国母になったら、国が混乱するだろう!!!

 私はそんな未来を思い描くと恐ろしくなる!!

 だからこそ、イリューシアとの婚約を破棄する!!!」


・・・・頑張って声を張り上げて「!」付きのセリフを言っているんだけど大変そう。

のど飴を差し上げた方がいいかしら。

いえ、そんな事したら「毒入りか!!!」とか、また「!」付きセリフを言いそう。

扇子を広げて口元を隠し、のほほんとそんな事を考えてぼーっとしていたら、その態度が気に入らないのか、今までの鬱憤を吐き出すようにわたくしに対して文句を言い出しましたわ。


「イリューシア! 聞いているのか!!

 貴様はいつもそうだ! 何を考えているのか分からない顔でお茶を共にしても全く面白みがない!!

 公爵令嬢だからと言っていい気になるなよ!

 お前が【淑女の鏡】と言われているのはその公爵という身分からではないか!

 公爵令嬢で淑女の鏡といわれている癖に、婚約者を立てることもせず、自分勝手に私をないがしろにするその態度が気に食わない!!!!!」


前から思っていたのですが、本当にパトリック様は元気が良い方ですね。

それになんでしょう。【公爵令嬢】になにか個人的な恨みでも持っているのでしょうか。


わたくしには幼い時に覚醒した前世の記憶がございます。

結構な妙齢の女性だったのですが、パトリック様の成長期及びいつまでたっても治らない中二病に呆れて構わなくなったのも事実です。

だって、相手をしていても、わたくしが話している途中、遮ってなにもかも反対意見を言われて話が通じないのだもの。反抗期の人間など相手をするのは無駄ですわ。

もしわたくしが前世の記憶のない、普通の令嬢だったならすでに精神的に思いっきり病みそうですもの。


もう18歳になるのに、右目隠して「くくく」って言っているような思考回路ではいけないと思うのよ。

いえ、「くくく」はわたくしのパトリック様のイメージなので、実際にはやってはないですが、反抗期が未だに続いているのは問題だと思うの。

わたくしが脳内でいろいろと考えている最中にもパトリック様の「!」が続く。

ホント元気な方ですけど、そろそろ耳が痛くなってきたわ。

はっきり言ってうるさいです。


「イリューシア! なにか反論出来るなら云ってみろ!!!」


「馬鹿じゃないですの?」


にやにやといやらしい顔で叫ぶ殿下の言葉に脊髄反射の様に出たわたくしの言葉によって、会場が一瞬にしてお通夜のように静まり返ってしまいました。

まあ、静かでいいわね。






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