012 俺の知ってるゴブリンがこんなに大きいわけがない
(サイズ的にオーガというかトロルだと思うんだけど外見は確かにゴブリンなんだよなぁ)
子猫をただ巨大化させたところで虎にはならぬように、確かにソレはゴブリンという外見をしていた。子供のような体格、頭身はそのままに全長3メートルに巨大化していたのだ。
もっとも迫るゴブリンたちには大きさ以外にも魔力の結晶体である魔力結晶が全身の至る所から生えているという特徴もあった。それは潜雲病の症状と似ていたが、個体によっては魔力結晶を剣や棍棒などのように、或いは盾や鎧などのように防具として扱う個体もいる。
(一体一体は脅威ではないにせよ、あの数でまとわりつかれたら厄介か)
ルッタがどう攻めようかと思案している横でナッシュが『早速僕の出番だね』と言いながら前に出る。
『ここは最初にやらせてもらっていいかな?』
「俺は問題ないけど、リリ姉」
『良いよー』
ルッタとリリの返事にナッシュの機体が先行し、まもなく接敵……というところでナッシュの乗るノーバックのバックパックウェポンであるショルダーマシンガンが前面にせり出した。
『撃ち終わったら一気に攻め込む感じでよろしくッ』
ナッシュがそう言った直後にショルダーマシンガンが火を噴き、左右に広がるように撃ち続けていく。その間わずか二秒。左右合わせて八十発の魔鋼弾はすべて消費され、十体を超えるゴブリンがその場に崩れ落ちた。
「一気に仕留めたねナッシュさん」
『僕のショルダーマシンガンは雑魚専用だけどね。こういう数が多い相手には有効だろう?』
ナッシュが得意げにそう返しながら、魔導戦斧を振り上げたノーバックをゴブリンの群れに突撃させ、ブルーバレットとフレーヌもそれに続いていく。
「ジャッキー流剣術『独楽斬り』」
『シルフ、殲滅して』
ルッタが自機をまるで独楽のように回転させて二刀で斬り刻み、リリの呼びかけに反応してフレーヌの背部に付いていたパンケーキ型の四つの円柱が離れるとタレットドローンへと変形して距離を取ろうとした個体を潰していく。そしてフレーヌもアン、ドゥ、トロワ、キャトルと名付けられている四機のタレットドローンと共に魔導長銃で的確にゴブリンを仕留め始めた。
『おぉ、これがオリジンダイバーか。凄まじいな』
「リリ姉は右の群れをお願い。こっちは左の群れを叩くよナッシュさん」
『オッケー』『了解だ』
右の魔導剣を腰のアタッチメントに戻すとルッタは腰部の魔導散弾銃を取り出して構えた。また同時にブルーバレットの頭部の二本ツノが重なって一本角へと変わる。それは索敵モードから戦闘モードへと切り替わった証であった。
索敵モードでは出力不足により召喚弾の再装填が行われないという問題があるために、戦闘時は切り替えないと弾薬不足になってしまう。そのために魔導散弾銃やショルダーカノン使用時は再装填のために戦闘モードへの切り替えが必要となるのだ。
(とはいえ、今ある弾数で終わりそうだけどね)
そんなことを考えながらルッタは魔導散弾銃の散弾で一度に複数のゴブリンを仕留めていく。その横ではナッシュも魔導銃で撃ちながら間合いに入ったゴブリンを魔導戦斧で容赦なく排除していた。
「さすが序列一位。見事な戦斧捌きだね」
『それに勝った君が言うとなぁ。まあ魔導銃の腕は大したことないんだけどさ』
そう言いながらナッシュはフライフェザーのホバリングで器用に動きながら魔導銃で牽制しつつ、魔導戦斧でゴブリンを次々と仕留めていった。
数が多く、また巨大化し、武装化もしているとはいえ、ゴブリンの全長は3メートルほどだ。それはアーマーダイバーの半分ほどでしかなく、今のルッタたちにとって雑魚であることに変わりはない。
そしてルッタたちは瞬く間に巨大ゴブリンの群れを殲滅し、すぐさまノートリア遺跡に向かって移動を再開するのであった。
生身で戦うならヤベーヤツら。
けどアーマーダイバーはゴブリンの倍のサイズで機動力も上で飛び道具持ちなので勝負にはならなかったり。