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006 空賊襲撃

「空賊? それは……珍しいね」


 ナッシュがガレージの外の竜雲海を見ながら、難しい顔をしてそう口にする。ルッタも外へと視線を向けてみたがまだ空賊たちの姿は視認できなかった。


「やっぱりそうだよね。空賊って普通ハンターには仕掛けてこないって聞いてるんだけど、違うの?」

「いやー、僕も連中とは護衛依頼以外でやり合ったことはないなぁ」


 空賊とは竜雲海上で略奪を行う犯罪集団の総称だ。もっとも彼らが狙うのはもっぱら商業船がメインである。

 そして空賊はハンターたちと同様にアーマーダイバーや雲海船を保有していることが多いのだが、彼らの実態は低ランクのハンターがドロップアウトした者たちの集団だ。総じて技量は低く、また整備も行き届いていない、ガタがきている機体に乗っていることがほとんどであった。

 当然ながら戦力としては三流の彼らが、弱ければ旨みが少なく、強ければ手痛いしっぺ返しを食らう可能性が高い現役ハンタークランの船に襲撃をかけるような真似をすることは本来ないはずなのだが……


「それだけ腕に自信があるってことなのかね。けど今俺たち出れないんだよなぁ」


 そう口にするルッタの視線が向けられたのはコクピット部分のハッチが開いて何かしらの処理がされている途中のブルーバレットとノーバックであった。


『ルッタ、機体の方は今出せないんだな?』


 ハンガーに吊るされている黒い機体から声が飛んできた。

 声の主はジェット・リスボン。タイフーン号では飛獣や空賊、ゴーラ武天領軍などの襲撃に備えて最低ひとりは乗り手が機体に待機しており、現在はジェットがその役割を担っていたのである。


「うん、ジェットさん。ブルーバレットもノーバックも今はシールド処理の途中だから無理だよ。まあ最悪、引っ剥がせば出せるけど予備がないんで依頼が遂行できなくなるね」


 深海層は人体に悪影響を及ぼすほどに魔力濃度が高く、そのまま潜ると潜雲病にもかかりやすくなる。そのため、濃い魔力の接触を防ぐために二機のコックピットのシールド処理を行っている途中であったのだ。

 なお、いっしょに遺跡に向かう予定のリリが操縦するフレーヌは宇宙空間でも活動可能なほどに密閉率が高く、そうした処理は不要であった。


『一応準備はしておけ。出し渋って死んだら依頼も何もないからな』

「了解」

『頼むぞ。それでギア、連中の状況は?』

『アーマーダイバーの数は十一体。ホームの雲海船は見えないがハイドラッグボートを使って移動してるから動きが早い。アレならこっちをやれると勘違いするのも仕方ないか。ひとつ前の仕事が大当たりしたんだろうさ』


 ギアが吐き捨てるようにそう言った。


「ハイドラッグボート?」

「暴走させて超加速させた小型雲海船のことだよナッシュさん。俺が試合の最初に使ったフライチャージを常時かけてる感じのヤツ」

「え? そんなことしたら船導核が保たないと思うんだけど」

「保たないから今回だけの使い捨てで考えてるんだと思う」


 ルッタが苦々しい顔をしながら、ようやく姿の見え始めてきた空賊たちを睨みつける。まだ豆粒程度にしか見えないが、空賊たちのアーマーダイバーはハイドラッグボートにワイヤーアンカーを繋いで引っ張られる形で接近してきているようだった。


「元手がただなら、ああいう使い方もできるってわけだ。ホント勿体無いことするよなぁ」


 どういった経緯があったのかは分からないが、件の空賊たちはひとつ前の仕事(強奪)で小型雲海船を使い捨てにできるほどの戦果を上げたのだろう。或いはアーマーダイバーもほとんどがその際に鹵獲したものかもしれない。


『あのまま突っ込まれても面倒だ。ギア、俺は先に出るぞ』

『分かった。頼んだジェット』


 ギアの言葉にジェットが『応』とだけ口にすると、ツェットを拘束するハンガーのロックボルトが外れ、機体がスルリと船底側に開いたゲートに向かって沈んでいった。

 そしてツェットの姿はすぐさま緑の霧の中に消えていったのである。

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― 新着の感想 ―
[一言] 勢い付いてる空賊程度なら蹴散らすのは容易いですがタイミングが良くないですねー
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