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029 報酬

 ガレージには銀鮫団から回収したものが並べられており、それらは今回の騒動の賠償金代わりに奪った……もとい接収したものだ。中でも目立っているのが完品のフォーコンタイプであった。


「あのフォーコンタイプ、確か最初に絡んできた時にノーコンくんが乗ってたヤツだろ」

「うん。フライフェザーは修理済でしたし、普通に乗れるよ。ノーコンの人はあれを普段乗りにして、高出力型を勝負パンツにしてたみたいだね」


 ルッタの勝負パンツの言葉にシーリスがプッと笑った。


「あー、あの高出力型なぁ。ボディだけどっかで手に入れたのか、手足は壊れて使えなくなったのか、えらいゲテモノだったな」


 高出力型の機体を維持するのは非常に難しい。量産型と違って生産量が少なく、八天領と直接、或いは代理店を通じてオーダーメイドで発注することになる。特に乗り手に合わせて設計される専用機と呼ばれるものは八天領の天領軍か、従属天領軍でなければそもそも造ることができない。

 少なくとも田舎天領に居を構えるところで満足していた銀鮫団では得られようはずもなく、結果として頭部や四肢に量産機のものを使わざるを得なかったのだろうとルッタたちは考えていた。


「頭部も別の系統のものだったし。あ、あの頭部と、フォーコンタイプのショルダーカノンはブルーバレットにもらうからね」

「別にいらないけど、ショルダーカノンは分かるとしてあの頭部って使えるの? なんか量産機のものじゃないよね」


 ショルダーカノンは装弾数二発の魔鋼砲弾二式という通常のモノよりも威力の高い砲弾を射出するバックパックウェポンだ。砲弾の構築に時間がかかるため戦闘中に再装填はできないが、高威力なのに重量もコストも軽く、量産機でも装備しやすいのが特徴だった。一方で頭部は妙な突起物が伸びていて通常のものとは違うようで、量産機でも使えるのかとシーリスが疑問に思った。


「あー、アレは一応量産機で使えるパーツなんだよ」


 コーシローが若干苦笑いでそう返す。


「あれもまたどこで手に入れたんだか、高出力型ではなく、量産機仕様で使えるカスタムパーツでさ」


 それは高出力型パーツよりも珍しくはあるが、生産工場(プラント)にオーダーすれば対応は可能だ。


「広域レーダー搭載なんだけど、戦闘時には出力回せないから非戦闘時にしか扱えないんだよ」

「戦闘時には使えないってこと?」

「全く使えないわけじゃなくてさ。戦闘時は機能の一部が制限されるから通常より若干良い精度のレーダーになる感じだ」

「ねえルッタ。ジャッキー流剣術に加えてまた操作が複雑になるけど、大丈夫なの?」

「索敵モードと戦闘モードで分けると考えれば問題ないよ」


 ルッタが満面の笑顔でそう返す。索敵能力についてはこれまでも随分と不満には感じていたのだ。それが非戦闘時でも解決できるのであれば嬉しいことだった。ちなみにシーリスはバックパックウェポンに積んでいる照準器があるためにそこまで必要とはしていない。


「ふーん。ルッタがいいんならいいんだけど。で、フォーコンタイプは誰か乗るわけ?」

「んー、メイサに使わせるか、ツェット用のパーツ取り用に使うかだなぁ」


 突然出た知らない名前にルッタが首を傾げる。少なくとも現在タイフーン号内にいるクルーの中にはいない人物の名前であった。


「ねえ、メイサって誰?」

「途中で合流予定のメンバーのひとりだよ。乗り手候補なんだ」

「合流予定のメンバーなんているんだ?」


 その話はルッタには初耳だった。


「あれ、ルッタは知らなかったか。ヘヴラト聖天領との繋ぎに向かってるメンバーがふたりいるんだよ。タイフーン号はゴーラが邪魔してくるせいでルートを迂回し続けてるからな。別経由の高速雲海船を使って向かってもらってる」

「そうなんだ」

「もうひとりはアーマーダイバー乗りは引退したけどあたしの師匠のジャヴァって言ってね。今はあたしの妹弟子であるメイサを連れて動いているの」


 ジャヴァにメイサ。初めて聞く名前にルッタが頷く。


「なんの話をしてるの?」

「あ、リリ姉。うん、今船にいないクルーもいるんだなって」

「ジャヴァとメイサのことかな。メイサはいい子」

「そうなんだ」

「あの子、リリを崇拝してるからね。まあ、会えばどういう子かは分かるわよ」


 その言葉に何か嫌な物を感じたが、ルッタは特に何も言わなかった。


「それよりもリリはルッタの活躍が見たかったな」

「それを言ったら俺もリリ姉の戦いを見てみたかったよ」


 あのゴーラ武天領軍の戦力をひとりで圧倒したのだ。普段セーブしている実力をフルに発揮したのだろうことは想像に難くなく、ルッタとしても是非とも目に入れたい一戦だった。


「それにシーリス姉も今回大活躍だったよね」

「あたしの戦果はルッタが暴れてくれたおかげだけどねえ」


 シーリスが肩をすくめるが、倒した銀鮫団のアーマーダイバーの半数以上はシーリスの乗るレッドアラームのスナイプによるものだ。シーリスの本来のスタイルが今の形であることが明らかとなった一戦だった。


「シーリス姉は今の装備にしてからワンランク上がった感じするよね」

「元々あたしはこっち専門だったもの。ただリリは単独で動いちゃうしタレットドローンあるからサポートする意味なかったし」


 横でリリが自慢げであったが、フレーヌには四機のタレットドローンがいるために一機で一部隊として運用できる戦力がある。シーリスのサポートはあまり必要ではなかった。


「ジェットは船の守り専門で、新人は前衛を任せるには厳しかったからね。ま、今はルッタがいてくれるからこっちに戻れたってわけ」

「なるほど」


 ルッタが頷く。ルッタとしてもシーリスのサポートのおかげで存分に暴れることができる。背中を預けられる仲間がいるというのは心強いものだった。


「しかし、荷物が増えたわね」

「だね」


 シーリスが奥の倉庫を見てそう言い、ルッタも頷く。

 ドラゴン、ロブスタリア、ビッグジョーの素材に加えてフォーコンタイプ、高出力型の機導核。今回銀鮫団からも場所の取らない宝石やインゴットだけの回収で済ませたのも今のタイフーン号の積載量の問題が大きかった。


「まあ、早いとこ次の天領で処分して身軽にしないとね」

「次はラダーシャ大天領ですよね。闘技場のある島か。楽しみだなぁ」


 生まれて初めての闘技場、そこで戦う剣闘士(グラディエーター)たちは竜雲海ではなく、地に足のついた戦いのエキスパートだ。


(ああ、楽しみだ。アサルトセルじゃあ本格的なロボットの近接戦なんてなかったからなぁ)


 そしてルッタはこれから出会うであろう未知のライバルたちとの戦いに思いを馳せ、不敵な微笑みを浮かべるのであった。なお浮かべた1秒後にリリにほっぺをフニフニされた模様。

ルッタは索敵モードと戦闘モードを手に入れた。

今章はこれにて終わり。評価等いただけますと励みになります。

明日の10時に登場人物等紹介、22時に次章更新ですがストック尽きてきたんで隔日更新になります。

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― 新着の感想 ―
[一言] リリを崇拝…リリに気に入られてるルッタに強い当たりで絡んできそうな予感。
[一言] 着々とブルーバレットを自分好みに仕上げていってますねえ ルッタがオールラウンダー的に戦えるタイプですから取れる手段が増えると戦いの幅も広がりそうで早くも索敵モードの活躍が楽しみですわ!
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