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006 魔導散弾銃という選択

 ルッタの視界に淡い赤い光が三つ映っている。それはアーマーダイバーの頭部にある水晶眼が認識した魔力反応を、仲間は青、飛獣などは赤、それ以外は緑色に色分けしてコクピット内にあるバイザーに表示しているためだ。


「来るか」


 ルッタが目を細めてアームグリップを操作し、魔導銃のセーフティを外しながらフットペダルを踏む。


『ルッタ、飛獣があんたに集中してるよ』

「三体程度なら大丈夫です」


 シーリスの警告にルッタはそう返す。

 その直後にボフッと竜雲海の雲が散り、ブルーバレットのいた場所にV字のブーメランのようなものが飛び出してくる。けれどもブルーバレットもすでにフライフェザーの出力を上げてその上空へと飛んでいた。


「うん、甘いよね」


 フライフェザーは魔力に反発して空を飛ぶための魔導具で、出力を上げれば短時間なら竜雲海よりも高く飛べる。そしてブルーバレットの銃口から連続で銃弾が放たれた。一発目は外し、二発目で翼に穴が開いて動きが鈍り、三発目でブレイドバットの胴体に穴が開いて即死となった。


「三発目でヒットか。射撃精度も改善点のひとつだな」


 竜雲海に落ちていくブレイドバットを見ながらルッタがそう呟く。テオの元にいたときには魔導銃などはほとんど扱えなかった。昔取った(アサルトセル)杵柄(時代の経験)で、ある程度照準を合わせることはできてもブランクの長さと現実とのすり合わせがまだできていないルッタの射撃の腕はそう大したものではない。もちろん、それはアサルトセルの世界ランカー基準で言えば……だが。

 それからルッタは続けて飛び出したブレイドバット二匹を捕捉すると空中でターンしながら一匹を落とし、機体を竜雲海上に着雲させながら最後の一匹が空中で旋回しようと動きが遅くなった瞬間を狙ってさらに撃ち落とした。


『飛び出た飛獣を全部撃ち落としたか。やるねぇルッタ』


 一方でシーリスの目にその手並みは鮮やかと映った。彼女基準で言えばルッタの射撃精度は高い。高速で動くブレイドバットに通常の魔導銃での射撃は当たらなくて当然、弾数で勝負というのが一般的な認識だ。


『シーリス、そっちにも来た』

『了解ってね。ほらよ』


 シーリスの機体レッドアラームがズドンと筒の大きな銃を放つ。それは魔導散弾銃。射程距離は短いものの弾がばら撒かれて面でダメージを与えられる魔導銃の一種で、その攻撃は防御力のないブレイドバット相手には適したものだった。


「散弾銃もいいなぁ。シーリス姉、スラッグ弾ってあります?」

『スラッグ……って何?』

「弾をばらまくんじゃなく、一発の大きな弾を撃つタイプのヤツですけど」

『あ、重弾ね。それならあるわ。でも散弾もそうだけど、あんま飛ばないわよ?』

「十分です。火力が欲しいんですよ」


 先のノワイエ戦では火力が足りぬと感じた。ロケットランチャーだけに頼るよりも戦闘中に補充が可能な火力を考えると魔導銃ではもの足りず、スナイパーライフルに近しい性能を持つ魔導長銃を使うかどうか考えているところだった。


(ただ魔導長銃は火力と射程距離こそ高いけど連射は利かないし、一発一発が強力な分、装弾数はひとつのマガジンに6発。紐付けできる予備弾倉はひとつだけだから補充なしでは12発だけなんだよな。ゼロ距離射撃も俺じゃあ難しいし)


 魔導長銃は銃身が長く近距離での使用が難しい。アサルトセルでは「スナイパーライフルは近接武器」などとのたまい小銃のように扱う変態プレイヤーもいたが、ルッタの前世である風見一樹はそういう類ではなかった。本人曰く嗜む程度の使用頻度であったのだ。


(魔導散弾銃の選択もありだな)


『こっちも全部仕留めたし、回収終わったらさっさと島に上陸しよう』

「了解です。さっさと集めますね」


 シーリスも自分に向かってきたブレイドバットはすべて仕留め、また残りはリリがタレットドローンを展開して壊滅させていた。

 それからルッタたちは竜雲海へとぷかぷかと浮かんできたブレイドバットたちの亡骸を回収してワイヤーアンカーで結ぶと、それらを運びながら無人島へと上陸したのである。

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― 新着の感想 ―
[一言] 求める水準が高すぎますねえ 流石元チャンピオン
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