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014 正しい序列上位への挑み方

「行っちゃった。なんか嵐みたいな人だったね」

「嵐っていうには貧相でしょ。つむじ風程度よ。よーするにヤッカミじゃないのさ」


 シーリスが過ぎ去った方角へと中指を立てながらプリプル怒りながら言う。


「ルッタは大丈夫ですの?」

「大丈夫? 何が?」

「いや、あんなことを言われて。怖くないんですの? 試合だって組んでもらえなさそうじゃないですの?」

「んー。いや、特には」

「メイサ。ルッタにそういうことを言っても無駄だよ。ドラゴンにだって突っ込むヤツだし、それに」


 シーリスが目を細めて、ルッタの腕へと視線を向ける。すでに手は魔弾散弾銃を引き抜こうとする形を解いていた。

 ケープに隠れてギンナたちには見えなかったようだが、ルッタがその気なら制圧されていたのはギンナたちの方だっただろう。いや、相手が近距離の多数である時点でルッタの選択は腰に下げた非殺傷弾を撃てるガンソードではなく、隠し持っている魔弾散弾銃一択だったのだから、結果は制圧ではなく殲滅になるはずだった。

 またそうなればアンとタラも同時に動いていたのだから、どうあってもギンナたちがルッタを傷つけることは不可能という状況の中で、ルッタが怯える理由は何もなかったのである。


「命拾いしたのは連中の方だっただろうしね」

「?……ああ、テオ様のお弟子さんですものね」

「テオ爺? そう言えばメイサ姉もテオ爺とは会ったことあるんだったっけ」


 テオの動向については、ルッタも昨日にジャヴァの口から聞いていた。なんでもここに向かう途中で彼らはテオと遭遇し、その後にテオはヘヴラト聖天領に向かうと言って別れたとのことだった。


「はい。一度お会いしましたわ」

「テオ爺、元気だった?」

「元気? んん……そうですわね。お元気ではあったのですが」

「何かあったのかい?」


 首を傾げたシーリスに、メイサは少し遠い目をしながら口を開いた。


「それがですね。テオ様とお会いした時にわたくしたち、飛獣の群れに襲われまして」

「え? それじゃあ」

「いえ、無傷ではあったのですが……その、あの方はワイヤーを巻き付けたスパナを投げて飛獣に取りついて飛び移って、ドリルドライバーを使って次々と仕留めておりましたのよ。生身で」

「生身で!?」

「ああ、テオ爺。元気そうだなー」

「ルッタも受け入れてる!?」


 シーリスは驚いているが、メイサの報告はルッタにとってはおかしな内容ではなかった。生身で飛獣とやり合える人間はそう多くはないが、それでもいるところにはいるし、テオもそうした人間のひとりであることをルッタは知っていたのだ。

 ちなみにテオの使ったというドリルドライバーは、アーマーダイバーの装甲にネジを打ち込むための工具であり、当然のことながら本来戦闘に使うものではない。


「まあテオ爺がヘヴラトに行くって言ってたんならヘヴラトで会えるでしょ」


 若干嬉しそうな顔でルッタがそう返す。


「それとギンナさんだけどね。あの人も俺に対して怒ってたわけじゃあなかったしね。最初はそうだったのかもしれないけど、どちらかというと怒りを向けられてたのはシーリス姉だったし」

「はん。悪い大人が才能ある子供を神輿にして騒いでるように見えたのかもね」

「それはあるかもねー。ルッタくんがクソ生意気だったんなら別だっただろうけどさー。大人しくしてたしねー。表向きはー」


 マリアはシーリスの言葉に首肯する。もちろん、魔弾散弾銃については気づいていたし、何かあれば先んじて止めるつもりではあった。

 マリアとしては公の場で、闘技場序列二位の有名人を、話題の子供ハンターが射殺するような状況は流石に容認できなかったのでホッとしていたのである。


「どうあれ、ルッタがこの天領で序列上位と戦うのは難しそうですわよ。こうなるととっとと別の大天領に向かうか……ここはわたくしの叔父様が治めている天領ですから、最悪そちらから手を打つという方法もあるにはありますけど」

「んー。いや、そういうのはいいかなー。それこそギンナさんの言う通りに剣闘士(グラディエーター)を舐めてるって話になるだろうしね」


 権力で強引に従わせるのはルッタとしても望ましくはない。それは人としてどうこうというよりも、余計なことで貴族に貸し借りを作りたくはないという判断がある故に。

 またギンナの言葉の中には耳の痛い部分があったことも確かで、何よりも自分が剣闘士(グラディエーター)としての経験をまるで積んでいないことをルッタも気にしていた。そう考えれば、先ほどのギンナの提案は彼にとっても都合の良いものだった。


「だったら、どうするルッタ?」

「まあ、ギンナさんのいうことももっともだからね。順位もちゃんと順に積んでいくべきだと思うし」


 そう口にしたルッタの視線の先にはボロボロのモワノータイプがあった。


「せっかくだから教えてもらった通りにやってみるよ」

ギンナ「ボロボロの機体使って40試合勝てば認めて戦ってやんよ」

ルッタ「出来らあ!(ポジティブ)」


 ギンナさんの態度はともかく、流石にルッタも闘技場の経験ちゃんと積まないと不味いからね。ルッタが頑張って戦うとなるとこのぐらいの数は必要かなって。

 そして機体乗り換えは2クール目のお約束。


 第九章前半終了。ようやく戦いが始まる後半再開まで二週間ほどお待ちください。

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― 新着の感想 ―
試合のレギュレーションで連戦とか集団線に対する規定とかあるのかな?無いなら下から片っ端にやっていけば良いだけだしね。
1日10試合すれば4日でOK 5日後にやってやるぜ!(序列二位を)
PVE用の機体のままとはいきませんよねえ 今度はどんな感じの機体で来るのか楽しみですわー
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