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004 リプレイ

 立体映像はボリュメトリックビデオ技術で作った映像を3Dで投射しているような感じだと思えば大体合ってる。

「なーんで断っちゃうかなー。うちの娘は」


 一通り話をして区切りがついた後、ルッタたちはタイフーン号へと戻っていった。そして第五兵団の面々だけとなったブリッジでミーアが眉をひそめながらそう口を開いた。


「だーかーらーさー。ムーリだって言ってるじゃんかママー」


 対してマリアは口をすぼめながらそう返す。

 結局ルッタとマリアの模擬戦はマリアの拒否でなくなり、推薦の話はルッタの不戦勝としてミーアがそのまま引き受けることとなった。

 ルッタの実力を直に確認したかったミーアにしてみれば、娘への愚痴が溢れるのは仕方のないことではあったが、対して娘のマリアは首をブンブンと横に振っている。


「うちのヴィーニュちゃんに怪我させたくないしー。ほらほら、これ見てよー」


 そうマリアが言うと彼女のパイロットスーツのポケットから這い出てきた機械の鳥がパタパタと飛んで天井のパイプのひとつに止まり、その瞳からブリッジ中央に光を放って立体ホログラムの映像を投射した。


「これは……」


 この機械の鳥の名は『アエロ』マリアのオリジンダイバー『ヴィーニュ』のスカウトドローンである。アエロはその小さな体を利用しての情報収集と、こうした映像などによる情報の開示を行うことが可能なドローンだ。

 そのアエロによって映し出された立体映像は……


「なんとも凄まじいな」

「数字だけだと実感なかったけど」

「いや、実際の動きを見ても実感持てねえって」

「……コワ」


 先ほどまでの風の機師団対ゴーラ武天領軍の戦場の映像であった。

 映し出された映像を見て、クルーたちが次々と驚きの声を口にしているが、彼らの見ているものは実際に撮影されたものではなく、残存魔力から戦場の状況を計測したシミュレーション映像だ。

 ヴィーニュは情報収集を目的とした特殊なオリジンダイバーであり、得た情報からこうした映像を作り出すことさえも可能なのだ。

 そしてこの場の面々が驚きの顔で見ているのは、ブルーバレットが恐ろしい速度で敵アーマーダイバーを落としている様子であった。


「いやー、凄いよねールッタくん。マジヤバ。一番ヤバいのはー、やっぱり乗っている機体……イロンデルタイプの量産機なんだけどー。それが量産機相応の出力しか出してないのにー、同じ性能かそれ以上の機体の集団をー、圧倒してるところかなー」

「確かに」

「どうやってんだ、これ」

「牽制、フェイント、先読み諸々……多分やれることを全部やった結果だねぇ。天才? いや、才はあるだろうが……これは経験則からの予測が近い気がする」


 ヴィーニュの元乗り手としての経験から、ミーアがそう口にする。ブルーバレットの動きは彼女の目からして子供のソレではなく『熟達者』を思わせるものだった。


「子供ですよ?」

「分かってる。でもそう言うしかない」

「私も同意見だねー。で、うちの乗り手たちにもちょこっと見せたんだけどー。おんなじ意見だったー。んでんで、問題はこれー」


 マリアが映像を早送りして、ブルーバレットがゴーラ武天領軍のオリジンダイバー部隊との戦闘に入った場面を映し出した。


「うわ、えげつねえ」

「マジで瞬殺じゃねーか」

「四機のオリジンダイバーが……嘘だろ」


 周囲からそんな声が漏れる。

 ヘヴラト聖天領はオリジネーター中心の天領であり、オリジンダイバーに対しての理解も八天領の中でもっとも深い。それはある種の信仰に近いものがあり、だからこそルッタが五機のオリジンダイバーを落としたことへの驚きは大きかった。

 元オリジンダイバー乗りであったミーアも眉を顰めながら口を開く。


「なるほど。オリジンダイバーの能力を使われる前に潰したのか。それが可能なだけでも凄まじい技量ではあるんけど」

「っぽいねぇ。まあオリジンダイバーは性能もダンチだけど、持っている兵装がアーマーダイバーよりも強力で、初見殺しも多いからねー。ルッタくんは多分それを嫌って、やられる前にやったって感じかなー。ま、最後の一機とはまともにやり合ったけど、こっちも完勝。ただ、こっちの方は多分相手を知ってた。そういう動き方をしてるねー」


 そのマリアの分析は的確で、実際ルッタはラガスとは二戦目であり、ジェットを相手に仮想ラガス戦を幾度も繰り返していた経験もある。


「これは、ヴィーニュでも勝てない……どころか相手にもならないか?」

「ヴィーニュは偵察型だからねー。うん、だから」


 マリアが不敵に笑って、指を一本立てた。


「勝てるチャンスは最初の一回だけだねぇ」


 その言葉に誰も異論を挟まない。

 オリジンダイバーや防御特化のアーマーダイバーならともかく、紙装甲のブルーバレットならば、初見であれば、固有兵装を使えば勝ちの目がある……という認識で彼らは一致していた。

 ヘイト回避のネタバレ。

 マリアさんはルッタくんを倒そうとしてるんじゃなく、私がいれば止められるから自由に行動させても問題ありませんよーっていう抑止力的な意味のヤツですね。

 勝てるチャンス……と言っている通り、勝率はそんなに高いとはマリアさんも考えていません。ただ想定よりも勝率が低いことも察してはいません。勝率50%くらいかなーと思ってるけど実際は5%ぐらいなだけです。

 まあヴィーニュの攻撃は初見でも、ルッタくんは似たような攻撃パターンを知っています。対処は容易ではありませんが、ルッタくんやイシカワには慣れたものなので、ある意味では相性の良い相手だったりします。

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― 新着の感想 ―
むしろ勝率5%もあるんだってびっくりした
>勝率50%くらいかなーと思ってるけど実際は5%ぐらい 「あっ、これ進研ゼミでやったところだ!」で9割5分負けるのかわいそう。 自分は機体壊されるからの発言だったので、初見殺ししか勝ち目ねぇって白旗…
元の世界で命のやり取りなくありとあらゆるアセンの敵と戦ってきたでしょうしねえ 余っ程の初見殺しでもなきゃ数手で対処法思いついちゃうやろなー
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